ゴールデンウイーク中に普段とは違ったジャンルの本を読んでみようと思い、地元図書館の企画コーナーにあった本を手に取った。第155回芥川賞受賞作である(2016年上期)。
コンビニでのバイト歴18年となるアスペルガー症候群(と思われる)36歳の独身女性を巡る物語。さらりとした文章で日常生活が描かれるので、すいすい読める。ただそれだけでなく、多くの人が持つ「普通」に対する意識があぶりだされる展開になっていて、考えさせられることが多い。アスペルガー症候群については、ここ10年で随分世の中の理解も広まったと思うが、主人公のモノローグを追うことで、読者はこうした障がいを持った人の社会や人への見え方を追体験できる。肩ひじ張らず、難しい問題を上手く捌いていると感じた。
芥川賞という「権威」に身構えながら読み始めたのだが、気軽に真面目に楽しめる一冊だった。