その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

本と映画のセット経験がおすすめ:映画〈蜜蜂と遠雷〉(監督:石川慶)

2021-05-26 07:30:00 | 映画


直木賞を受賞した恩田睦の同名小説の映画化。国際ピアノコンクールを舞台にコンテスタント達の音楽への情熱、人間的成長が描かれます。原作が素晴らしかったので、どう映像化されるのか期待半分、不安半分でしたが、原作の良さを損なわない佳作に仕上がっていました。
ストーリーは、本選の指揮者小野寺の人物設定やリハーサル場面など細かいところで原作と異なるところがありますが、大筋は原作に準じています。良いのは、コンテスタントのキャスティング。原作のイメージとぴったりで、原作を読んだ人にも、違和感なく入っていくことが出来ます。松岡茉優は相変わらず可愛いし、自然体の演技が良い。松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士の男優陣も登場人物のキャラを的確に演じていて好感度高いです。
ただ、難しいところですが、1頁2段組みで500頁ある単行本と2時間の映画では必然的に情報量が圧倒的に違ってきます。原作ではコンテスタントそれぞれの視点で、音楽やコンテストに向き合う心情が描かれますが、俳優の演技、ストーリー展開、演出だけで描き切るのは限界があるのはしょうがないですね。コンテスタントの深堀という点においては、物足りなさは残ります。
一方で、原作では言葉で描写される音楽が、映画の中でリアルに聴くことができるのは嬉しいです。河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央という当代きっての日本人ピアニストが起用されているので聴きごたえもたっぷり。これは映画ならではですね。
観てから読むか、読んでから見るか、どちらも楽しめると思いますが、是非、両方を体験されることをお勧めします。


スタッフ・キャスト
監督:石川慶
原作:恩田陸
脚本:石川慶
製作:市川南
ピアノ演奏
河村尚子 福間洸太朗 金子三勇士 藤田真央
オーケストラ演奏
東京フィルハーモニー交響楽団

松岡茉優:栄伝亜夜
松坂桃李:高島明石
森崎ウィン:マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
鈴鹿央士:風間塵
コメント
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