その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

爆演! N響11月定期Aプロ/指揮:井上道義/ショスタコーヴィチ 交響曲第10番ほか

2022-11-14 08:51:16 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

鬼気迫る凄まじい演奏会だった。

前半の伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は、アイヌの立ち踊りに因んだ曲名とのこと(プログラム)。「春の祭典」を思い起こさせる土地と人の血・エネルギーを感じる音楽、リズム。体が動き 血が沸く躍動感が、聴くものをワクワクさせ、一緒に飛び跳ねたくなるような気になる。ミッキーも殆ど踊っているといったような指揮ぶりで、N響管弦打楽器陣の一糸乱れぬ合奏が音楽の迫力を倍増させる。最後はミッキーのかけ声のもと、楽員が跳び立ってフィニッシュ。会場は1曲目とは思えない歓喜と興奮に包まれた。

後半のショスタコーヴィチの交響曲第10番。静と動、強と弱が入れ代わり立ち代わり、表情が多彩に変化する音楽だ。実演に接すのが、殆ど初めてに近いので、事前にYoutubeで2回ほど聴いたが、全く別の曲のように聞こえた。ミッキーの指揮のもと、緊張感あふれる演奏で、メディアを通じてでは感じることが難しい、音楽が生命体のように生きていることが感じられた。指揮者、演奏家の意思が3階席までも伝わってくる。ファゴットやクラリネットを初め、管のソロも素晴らしいのだが、前半同様管弦打楽器が一体となった迫力がすべてに勝る。ミッキーは狭い指揮台の上で舞うように棒を振り、楽員を鼓舞する。次はどう変化するのか、ドキドキしながら見守っているうちにクライマックスに近づき、最高潮に達して終演となった。この日の入りは満員とはいかなかったが優に8割は埋まった会場から熱狂の拍手が寄せられた。

カーテンコールに応えるミッキーのパフォーマンスも会場を盛り上げる。舞台でバレエの振りのように1回転するなど、76歳とは思えない軽快な身のこなし。隣席の年輩の男性が隣の奥様に「俺と同い年なんだよなあ~」と羨まし気につぶやいていた。

先月のブロム翁祭りに勝るとも劣らない、実に貴重な音楽体験だった。

定期公演 2022-2023シリーズAプログラム
第1968回 定期公演 Aプログラム

2022年11月13日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]
NHKホール

指揮:井上道義

伊福部 昭/シンフォニア・タプカーラ
ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番 ホ短調 作品93

Subscription Concerts 2022-2023Program A
No. 1968 Subscription (Program A)
Sunday, November 13, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]

NHK Hall
Conductor: Michiyoshi Inoue

Ifukube / Sinfonia Tapkaara
Shostakovich / Symphony No. 10 E Minor Op. 93


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