その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

伊藤穣一『テクノロジーが 予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる』 (SB新書、2022)

2023-05-18 07:19:10 | 

元MITメディアラボ所長で現在は日本に帰国しデジタル庁「デジタル社会構想会議」のメンバーなどを務めている伊藤穣一氏が、Web3、メタバース、NFTなどの最新のテクノロジーの社会に与える影響を解説した一冊。働き方、文化、アイデンティティ、教育、民主主義へのインパクトが考察される。

例えば、個人の働き方はDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)によるプロジェクトベースになっていく。作業はブロックチェーン上で行われ報酬はDAOが発行するトークン、暗号資産で支払われる。仕事の内容・場所・時間も、自分主導で決めていくことになる。

また、教育分野においては、学び方は「プロジェクト・ベース・ラーニング」から「パーパス・ベース・ラーニング」になり、より目的が重要視される。クリエイティブ・コンフィデンス(自分の創造性に対する自信)を育て、DAOに代表される分散型社会で自分から手を挙げられる人になっていくことが大切である。

最終章で筆者は日本における法整備の遅れ、国内市場向きの日本企業に対する危惧が示される。が、昨今、安い日本をはじめ「いけてない日本キャンペーン」が絶賛推進中だが、確かにこうした新技術への姿勢にも「いけてなさ」は否定できない。

その「いけてなさ」は私自身にも大いに当てはまる。本書を含め、Web3らの次世代技術については数冊の入門本を読んで、いわゆる概念やその革新性は少しづつ理解が進んだ。ただ、正直、まだ私自身の肌感覚的にはピンとこない。暗号資産やNFTとかもまずは一回自分で使ってみないといけないのだろうなあとは思うのだが、どうも怪しさがぬぐいきれない。いけてない日本のいけてない自分を見るようでちょっと情けないところでもある。

内容的には同類書でも触れられているようなものが中心で、取り立てで伊藤氏だからという箇所は少なかった印象だが、まあ後は如何に自分の経験知としていくかなのだろう。DAOへの参加など、突破口を見つけてみよう。

 

【目次】

序章 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる
・Web1.0 、Web2.0、そしてweb3は、どんな革命を起こしたか
・web3のキーワードは「分散」
・世界はディストピア化する?
など

第1章 働き方――仕事は、「組織型」から「プロジェクト型」に変わる
・ビジネスは「映画制作」のようになる
・プロジェクトは「パズルのピース」を組み合わせるものへ
・より手軽に、より強く結びつき、成し遂げる
など

第2章 文化――人々の「情熱」が資産になる
・ブロックチェーンで実現した真贋・所有照明
・「NFTバブル」の次に来るもの
・「かたちのない価値」が表現できるようになる
など

第3章 アイデンティティ――僕たちは、複数の「自己」を使いこなし、生きていく
・人類は、「身体性」から解放される
・ニューロダイバーシティ――「脳神経の多様性」が描く未来
・バーチャル空間の「自分の部屋」でできること
など

第4章 教育――社会は、学歴至上主義から脱却する
・学歴以上に個人の才能を物語るもの
・学びと仕事が一本化する
・学ぶ動機が情熱を生む――web3がもたらす「参加型教育」
など

第5章 民主主義――新たな直接民主制が実現する
・ガバナンスが民主化する
・衆愚政治に陥らないために
・既存の世界は、新しい経済圏を敵視するか
など

第6章 すべてが激変する未来に、日本はどう備えるべきか
・最先端テクノロジーが、日本再生の突破口を開く
・「参入障壁」という巨大ファイヤーウォールを取り払う
・デジタル人材の海外流出を防げ
など

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