その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

イギリス音楽をイギリスの楽団、日本人の指揮で聴く:山田和樹 指揮、バーミンガム市響、エルガー交響曲第1番ほか

2023-07-02 07:30:25 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私にとっては年1度あるかないかの、外オケの来日公演体験。今回のバーミンガム市響には、私がロンドン駐在時にブログを通じて知り合ったお友達の息子さんがヴィオラのメンバーとして参加しています。これは行かねばなりません。

また、私にとっても、このバーミンガム市響はサイモン・ラトル指揮でバッハ「マタイ受難曲」を聴きに行き(2010年3月)、一生の宝となる演奏会体験があった思い出の楽団です(帰りのロンドン行終電を逃した上に市街で宿が見つからず、満員だったホテルのフロントのお兄さんの協力で郊外のホテルを見つけタクシーで辿り着くというおまけつき)。現在、山田和樹さんが首席指揮者としてリーダーシップをとっていることも加わって、色んな意味で大きな楽しみの「凱旋」公演でした。

前半はショパンのピアノ協奏曲 第2番。私には実演で聴くのも、ソリストのチョ・ソンジンさんも初体験です。チョさんの演奏は、これぞショッパンと言わんばかり。その端正かつ優美なピアノの音色に痺れました。ピュアでとっても優しいのです。

この日は1階最後方に近い席だったのですが、ピアノの音が体に染み込むように飛んできます。普段、N響B定期でステージ奥P席からピアノを聴くことが多く、音を追いかけるような鑑賞に慣れきれない私には、前方から飛んで来る音はとっても心地良いものでした。

遠目なのですが、チョさんの落ち着いたステージマナーも好感持てます。韓国の方と思われる女性ファンも多数集い、終演後は熱烈な拍手が寄せられます。アンコールのラヴェルはショパンとは打って変わった切れ味鋭い音楽で、技巧をこらします。ショッパンとは違った、チョさんのピアノ演奏が楽しめました。

後半はエルガーの交響曲第1番。イギリス人作曲家の作品をイギリスの楽団に向かって、日本人指揮者が振るって、相当、勇気がいることではと想像します。が、ヤマカズさんには全くそんなことないようで、演奏前のプレトークでは、「今回のツアーでは何が何でもエルガーをやりたいと企画サイドにねじ込んだ」との紹介がありました。まさに、その心意気通りの、ヤマカズとオケの気持ちが入った素晴らしい演奏でした。

私自身はこの曲も初めてで、事前にYoutubeで1度聴いてはみたものの、どこかつかみどころがない印象でした。今回の演奏で分かったとはとても言えないものの、ロマンティックで変化に富んだ音楽を堪能することができました。

全曲を通じて現れる雄大なモットー主題や、ヤマカズ曰く「スターウォーズ」というスケルツオなど、変化に富み聴きごたえあります。更に、第3楽章アダージョの優しい美しさは格別で涙が出てきました。イギリス音楽という先入観なのか、聴いていて不思議にイギリスを感じました。

バーミンガム市響は外オケらしい迫力ある重厚なサウンド。アンサンブルの緻密さなどは普段聴いているN響の方が一枚上手なような気もしなくもありませんが、プレイヤー一人一人の個のぶつかり合いをリアルに感じる興奮は、N響とは違った楽しさでした。

終演後の大きな拍手を受けてのアンコールはウォルトンの映画「スピットファイア」より前奏曲。ノリノリの大爆音でのお祭り演奏で、演奏も良かったし、会場も大盛り上がりだったのですが、私はエルガーの余韻に浸っていたかったので、ちょっと蛇足的に感じてしまいました。

バーミンガム市響は、団員のみなさんから気取りが無くリラックスした雰囲気が感じられ、好感持てます。ヤマカズさんもオケと良い関係を築いている様子が伺われ、嬉しいです。私にとっては、プレミアリーグの中位にいるチーム(失礼しました)の監督を日本人がやっているということと同じです。海外でリーダーシップを発揮する日本人であるヤマカズさんを大いに応援しましょう。

とっても満足度高く、幸せな気持ちで会場を後にしました。

 

日時:2023年6月29日(木) 19:00
会場:サントリーホール Suntory Hall
出演
山田和樹 Kazuki Yamada (首席指揮者兼アーティスティックアドバイザー, Chief Conductor & Artistic Advisor
チョ・ソンジン Seong-Jin Cho (ピアノ, Piano)
バーミンガム市交響楽団 City of Birmingham Symphony Orchestra

ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op. 21 [ピアノ] チョ・ソンジン
エルガー:交響曲 第1番 変イ長調 Op. 55

(アンコール)
ラヴェル:道化師の朝の歌 ※チョ・ソンジン ソリスト・アンコール
ウォルトン:映画「スピットファイア」より前奏曲 ※オーケストラ

Kazuki Yamada, City of Birmingham Symphony Orchestra
Seong-Jin Cho, Piano

Date: 2023/6/29(Thu) 19:00
Venue: Suntory Hall

Artists
Kazuki Yamada, Chief Conductor & Artistic Advisor
Seong-Jin Cho, Piano
City of Birmingham Symphony Orchestra

Chopin: Piano Concerto No.2 in F minor, Op. 21 [Piano] Seong-Jin Cho
Elgar: Symphony No.1 in A-flat major, Op. 55

コメント
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