今年の夏休みは、お盆明けに未踏の地の高知を3泊4日の旅程で訪れた。鰹の最盛期だし、何と言っても坂本龍馬の出身地、そして以前コロナで準備万端だった高知訪問をキャンセルしたリベンジ旅行でもある。南海トラフ注意報が解除にはなったものの気がかりではあったが、勇気を出して決行。
羽田からはたったの1時間20分。機体が着陸態勢に入るころ、窓から外を覗くと、青い海と険しい山々、そしてその間に挟まれて肩をすぼめるように田畑や家々が並んでいる風景が目に入る。
東京に劣らず高知も暑く、日差しがさらに強い印象。市街には空港バスで30分ほどで到着し、夕刻16時過ぎにチェックイン。部屋で暫しリラックスした後、夕刻、陽が傾いた時間に中心部の散策に出る。
未知の土地を訪れた時は、地元スーパーと図書館を訪れるのが相方のポリシーなので、お付き合い。確かに、地元スーパーは、品ぞろえが違うし、ローカルブランドを知るのも面白い。図書館は県立図書館と市立図書館が合同されてできたという新しい図書館で愛称はオーテピア。館内も蔵書、閲覧机、グループルームそれぞれ充実し、米国の大学図書館を思い起こさせる。
(旅行者用の棚。ミレーってこんなに種類があるんだ)
(高知の図書館。建物も素敵)
そして、いよいよ高知での初・夕食へ。「高知はどこで何食べても旨いですよ~」と以前、職場の同僚が言っていたのだが、夕食難民になるのは避けたかったので初日、2日目は予約しておいた。(食べログの百名店に名を連ねるようなお店は数週間前でも予約で一杯だった)。ガイドブックやネット等を参考に、最後は直感でホテルからも近い「竜馬屋」さんへ。結果、これが後々の語り草になるような楽しい経験となった。
お店の引き戸を開けた瞬間、想像以上に狭く、壁には古めの写真や資料が雑多に張り付けてある。カウンターが3~4席ほど、その背後に2~4名掛けの小さなテーブル席が3つ程。まだ客は誰も入ってない。高知新参者には難易度高そうな、変化球一杯の店内にやや怯んだ。が、笑顔のお姉さんに引っ張られるように、奥のテーブル席に案内された。
〔店内)
メニューは紙一枚。季節柄、殆どが鰹のメニュー。感じの良いお姉さんが料理を丁寧に説明してくれるが、どれをどの程度頼んで良いか分からない。結局、大将の「おまかせ、量は軽目で」という注文に落ち着いた(お腹一杯になったらストップかけてね、という仕組み)。高知と言えば、日本酒なのだが、酔鯨ぐらいしか知らないから、こちらもお姉さんおまかせ。私らの来店で、おもむろに厨房に現れる大将。ただ者でない雰囲気を漂わせている。
スタートの儀式は、いきなり鰹の刺身が鉄(?)皿に載って大将がバナーで炙るところから始まった。「30秒以内に食べてね」と言われたが、これが口の中でとろける上手さ。この後、(順番が逆だが)付け出しの鰹の切り身と酢漬け、地鶏(土佐ジロー)の手羽先、鰹と新子(メジカの新子ではないとのことだったが、何だかは忘れてしまった)の刺身と青さの天ぷら。月並みな表現だが、どれも頬が落ちるような旨さである。とりわけ、新子の刺し身は絶妙の甘みがあって印象的。
(いきなり大将が目の前で炙ってくれる)
(付き出しもとっても旨い)
(土佐ジローという地鶏)
(鰹と新子の刺身)
お酒もお姉さんが、次々と風味、辛さが違うものを出してくれる。どれも個性豊かで、違いが明確。料理との相性も抜群だ。
このお店が美味しいだけでなく、楽しいのは大将やお姉さんとの会話。店は200年続いていて、今の大将は7代目だという(7代目継承の口上も壁に貼ってある)。話題は、お店や料理、そしてマスターの一身上のいろんなお話、壁に掲示してある謎の特許証明(登録?)書などなどについて。私も観劇した内野聖陽さん主演の「ハムレット」のポスターがサインや落書き入りで掲示。内野さんからのお手紙とかも壁に貼ってあって、エピソードを伺った。お姉さんも上手く会話を引き出す。ホスピタリティ抜群だ。帰り間際まで、私らの他には出張者のソロ飲みの方1名だったので、ほぼ会話を独占して、まるでお友達の家に来たようだった。
(高知公演のポスター。皆さんで来店されたとのこと)
1時間半経過したぐらいで、相方がお腹一杯でストップ。次回、高知にいつ来られるのかも分からないが、来たら必ず寄りたいと思わせてくれるお店だった。心から「ごちそうさまでした」。高知初日は楽しく、美味しい最高のスタートを切る。
(初日)