その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新国立オペラ、素晴らしいシーズンスタート! ベッリーニ「夢遊病の女」

2024-10-15 07:24:37 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

新国立オペラのシーズン開幕公演の最終日に鑑賞。Xのポストは絶賛ポストが溢れてたし、私自身、舞台付きオペラは今年の5月以来でうきうき気分。

評判通りの素晴らしい公演だった。歌手陣、合唱、オケ、演出がハイレベルに統合され、ベルカントオペラの醍醐味を味わった。

アリーナ役のクラウディア・ムスキオは透明感あって、繊細な歌声。容姿の美しさもあって、まさにはまり役であった。舞台映えする歌手で、これからが楽しみだ。エルヴィーノのアントニーノ・シラグーザは伸びやかで聴き惚れるテノール。この人、1964年生まれというから今年還暦なのだが、とてもそうは見えない外見と若々しい歌声。この二人がしっかりとした軸になっていたので、舞台の安定感が抜群だった。

脇を固める日本人歌手陣もすばらしい。外国人歌手陣に引けを取らず、ロドルフォ伯爵役の妻屋秀和、リーザ役の伊藤晴、テレーザ役の谷口睦美らが、夫々の演技と歌の両面で舞台を盛り上げた。

いつもながらであるが、新国合唱団にる村人たちの合唱も美しい。これは演出の意図だと思うが、村人たちは終始無表情である。その無表情さを保ちながら美しい合唱が繰り出されるのは、却って不気味で、「個」の無い群衆を印象付けた。

ベニーニ指揮の東フィルの音楽も優しく抒情的で胸を打つ。オケが前面に出る機会はあまり無いが、歌唱と一体化した演奏はしっかりと全体を支え、さすが東フィルと唸らせる。現場の名匠のベニーニの手腕あっての今回のハイレベル公演と思う。

演出は所々、私には解釈不能なところもあったが、過度に主張しすぎることなく、出演者を支え、舞台効果を高めていた。ダンサーたちが、アミ―ナに絡んでいくのは、その意図は良く分からなかった(アミ―ナの深層意識を表現していたのだろうか?)が、ステージにダイナミックな活力を与えていたし、(4階席からなので奥は見切れているのだが)照明効果も美しかった。謎だったのは、第1幕で舞台中央に立つ高いもみの木のてっぺんに二体の男女の人形(血が出ているように見えた)がつるしてあったのだが、あれは何だったのだろう。リンチに遭った人体のようで気になった。

最終公演とあってか、カーテンコールでは舞台、観客席ともに熱い興奮で一杯だった。ムスキオ、シラグーザの二人も全公演を歌い切った充実感が溢れていた。観客も熱狂的なブラボー、ブラビー、拍手で、ここまでの熱い反応は、新国オペラではあまり記憶無いぐらい。私も手が痛くなるほど拍手を送った。シーズン開幕公演として大成功と言えよう。来月は長尺のウイリアムテルである。こちらも楽しみだ。

 

ヴィンチェンツォ・ベッリーニ
夢遊病の女<新制作>
La Sonnambula / Vincenzo Bellini

全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
公演期間:2024年10月3日[木]~10月14日[月・祝]
予定上演時間:約3時間(第1幕85分 休憩30分 第2幕65分)

スタッフ
【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演 出】バルバラ・リュック
【美 術】クリストフ・ヘッツァー
【衣 裳】クララ・ペルッフォ
【照 明】ウルス・シェーネバウム
【振 付】イラッツェ・アンサ、イガール・バコヴィッチ
【演出補】アンナ・ポンセ
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【ロドルフォ伯爵】妻屋秀和
【テレーザ】谷口睦美
【アミーナ】クラウディア・ムスキオ
【エルヴィーノ】アントニーノ・シラグーザ
【リーザ】伊藤 晴
【アレッシオ】近藤 圭
【公証人】渡辺正親

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

共同制作:テアトロ・レアル、リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場

Co-production with Teatro Real of Madrid, Gran Teatre del Liceu, Teatro Massimo di Palermo

OPERA La Sonnambula
2024/2025 SEASONNew Production

Presented by New National Theatre Foundation, Japan Arts Council, Agency for Cultural Affairs, Government of Japan

Music by Vincenzo Bellini
Opera in 2 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE

3 Oct - 14 Oct, 2024

CREATIVE TEAM
Conductor: Maurizio BENINI
Production: Bárbara LLUCH
Set Design: Christof HETZER
Costume Design: Clara PELUFFO
Lighting Design: Urs SCHÖNEBAUM
Choreographer: Iratxe ANSA, Igor BACOVICH
Associate Director: Anna PONCES

CAST
Il conte Rodolfo: TSUMAYA Hidekazu
Teresa: TANIGUCHI Mutsumi
Amina: Claudia MUSCHIO
Elvino: Antonino SIRAGUSA
Lisa: ITO Hare
Alessio: KONDO Kei
Un notaro: WATANABE Masachika

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra


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