その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

西田宗千佳『生成AIの核心 「新しい知」といかに向き合うか』(NHK出版新書、2023)

2024-12-11 12:02:26 | 

生成AI使っていますか?

この夏から業務で使える生成AIが社内展開されて、仕事でも使えるようになった。使いこなしているとは言い難いし、未だ嘘(ハルシネーション)も多々あるので恐る恐るの活用だが、その能力は恐ろしいほどだ。自ら使いつつ、客観的に捉えて考えたいと思い、手軽に読めそうな新書をいくつか読み始めた。

本書は23年9月発刊なので、1年と3カ月しか経ってないが、その情報の多くが既知のものになっていることがこの分野の凄まじい発展を物語っている。筆者自身も「生成Aiについて書くのは大変だ。・・・最新事情をかいたつもりがすぐに古びてしまう」と「おわりに」で書いてあるが、まさにその通り。

ただ、そうとは言え、その仕組み、影響度、利用上の注意、そして未来について、基本的な理解を得るのに良くまとまった入門書。筆者はテック分野で多くの著述もあり、知見も広い。

個人的に面白かったのは、同じ質問を違う生成AIのアプリ(Chat-GPT/Bing/Bard)に質問を投げた際の回答の違い(p.122)。本書のこの部分は、生成AIを使った「壁打ち」による思考訓練の例として紹介してくれているが、私は少々違って捉えた。アプリの学習のさせ方やロジックの組み方で、検索エンジン同様、回答は異なってくるわけで、そうした裏側を知ったうえで、使う側は回答を客観的に捉えないと、容易にソフト作成側に操られる怖れがあるということだ。

また、生成AIが普及すると、結局、人間の価値、得意とする仕事は「肉体」であり「肉体を使う仕事」という指摘も、目から鱗が落ちた。「柔軟かつ低コストな運動性能」(ロボットは柔軟ではない)が人間の差別化要因という(p.206)。人の仕事の未来はどうなっていくのだろうか。

著作権の問題、政府の規制、学習(タグ付け)のための人手、大量の電力消費などの諸課題も提示されていて、考えるきっかけになる。生成AIを使う方の入門書としてお勧めできる。


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