ブロムシュテッドさん(以下、敬意を持って翁)が、郷古コンマスに支えられながら、団員と一緒にステージに現れる。指揮台に据え置かれた椅子に座るまで、どこかで滑りはしないか、固唾を飲んで見守られながら、椅子に座る。もう十分に名声を馳せた97歳になった翁が、10時間以上のフライトを経て、この極東の地を踏み、1月近くも滞在して6回もの演奏会を指揮する。このモチベーションはどこから湧いてくるのか。使命感なのか。そんな思いはどうでも良くて、ただただ、翁への感謝の気持ちあるのみ。そんな聴衆の思いは、歓迎の大拍手に明確に現れていた。
それからは、夢のような1時間40分だったのだが、とりわけ印象的だったのは後半のベルワルドの交響曲第4番。皆が見守る中、椅子に就いた翁が創り出す音楽は、瑞々しく、清明で、若々しい。P席から見る翁の表情は実に活き活きと、エネルギーに満ち溢れている。全く初めて聴く楽曲だが、ベートーヴェンの交響曲4番や8番のような小気味よい明るさを感じ、初めてとは思えないぐらい体にすんなりと浸み込んできた。
N響も力みなく、自発性を感じる演奏で、ポジティブな「気」がステージ上に舞い上がっていた。弦管打楽器の各プレイヤーが前のめりで、この瞬間をとっても大切なものとして感じているのも伝わってくる。濁りなく推進力を感じる演奏は、青天を衝くという表現が相応しい気がした。
前半も良かった。シベリウスの「ツゥオネラの白鳥」での池田さんのイングリッシュ・ホルンの独奏を聴くのは何年ぶりだろう(確か前回、N響が「四つの伝説」を演奏した際は、独奏は池田さんでは無かった覚えがある)。この日も、柔らかく、ふくよかで、抒情的な音色が耳に残る。
ニルセンのクラリネット協奏曲は伊藤圭さんの技巧が光った。正直、初めて聴く楽曲で、ついて行ったとはとても言えなかったのだが、目まぐるしく変化する音楽を伊藤さんはN響メンバーと息を合わせながら、吹き切った。
アンコールはN響のホルン今井さんとファゴット水谷さんも加わって、ニルセンの木管五重奏曲第2楽章から抜粋(フルート、オーボエ無し)。アットホームな雰囲気がなんとも魅力的であった。
来週はA定期でブラームス、再来週はC定期でシューベルト。まだまだ10月ブロムシュテッド祭りは続く。何卒、健康管理留意頂き、元気に残り四公演を完投頂きたいと、切に願う。
定期公演 2024-2025シーズンBプログラム
第2019回 定期公演 Bプログラム
2024年10月11日(金) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール
シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22─「トゥオネラの白鳥」
ニルセン/クラリネット協奏曲 作品57
ベルワルド/交響曲 第4番 変ホ長調「ナイーヴ」
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
クラリネット:伊藤 圭(N響首席クラリネット奏者)
Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2019 Subscription (Program B)
Friday, October 11, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall
Program
Sibelius / 4 Legends, sym. poem―The Swan of Tuonela
Nielsen / Clarinet Concerto Op. 57
Berwald / Symphony No. 4 E-flat Major, Sinfonie naïve
Artists
Conductor: Herbert Blomstedt
Clarinet: Kei Ito (Principal Clarinet, NHKSO)
私もプロムシュテっトまではいきませんが、かなりの年齢になりました。それでコンサートホールへは行けなくなりました。
CDで鑑賞ですが、最近処分しました。事情あってのことです。残念です。
私の大好きなプロムシュテット、高齢でも指揮していらっしゃること素晴らしいですね。
今はテレビで拝見するだけでですが、毎週のNHKの放送を楽しみにしています。
しかしいつも思うのですがやはり生で聞くのとは感動が違います。しかし生で聞いた経験から少しは違った印象を持つことができると思います。
それでこのブログ楽しみにしています。
どうぞよろしく。
ロンドン時代からのファンより
Sony
コメントありがとうございます。大変、ご無沙汰しています。コメント頂き、嬉しいです。
演奏会行かれるのが難しくなったということで、さぞ残念なことと思います。ナマの感覚とは違うところはあるかと思いますが、テレビ等で少しでも楽しんでいただければと思います。すこしでも現場の雰囲気が伝えられたらと思います。お元気にお過ごしください。