その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ブルックナー誕生日に交響曲7番を聴く: 都響A定期、指揮 大野和士 @東京文化会館

2024-09-06 10:08:05 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

1ヶ月ぶりの音楽会でワクワク感一杯で上野へ向かう。この日は、なんとブルックナーの生誕200年記念日とのことである。そんな日にブルックナー交響曲7番をメインに据えたプラグラム。ブルックナーのお誕生会にお呼ばれされたような気分だ。しかも前半はポール・ルイスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。B&Bの鉄板の横綱プログラムと言える。

ポール・ルイスは聴いたことあると思い込んでいたのだが、個人記録を辿ってみても見つからないので初めてのようだ。実に洗練された演奏だった。強奏するわけでもないし、加飾があるわけでもない。端正で、この楽曲そのものの素晴らしさを自然に伝えてくれる。ピアノの音は柔らかいというよりはやや硬質に聴こえたが、これはホールのせいだろうか。いずれにしても、音が体に素直に溶けて行く、そんな快感を味わった。

アンコールはシューベルトのピアノ・ソナタ 第21番から第3楽章。こちらは軽快で、優しい。清涼剤のようなピースであった。

休憩後のブルックナー交響曲第7番。私自身はブルックナー・ファンとは言わないが、7番はおそらく最も実演に接している。冒頭から、チェロの厚い響きに震えた。全般的に、過去に聴いた演奏の印象と比較すると、角の取れた柔らかめで、ロマンティックとまでは行かないが、構造美を打ち出したものとは異なる演奏に聴こえた。

矢部コンマスのもと、弦陣の前のめりで重厚なアンサンブルは聴き応え十分で、ホールで聴くブルックナーならでは。フルートら木管の調べも美しい。ちょっと残念だったのは金管。揃っての強奏の迫力は素晴らしいものだったが、弱音部分など、不安定というか緩いというか、がっかりさせられること何度か。

熱演であったことは間違いないし、演奏も一部を除きとっても良かったのだが、何故かブルックナーを聴いた時の没入感や体を貫かれるような衝撃までは、今回感じられなかった。大野さんが訴えようとしたことが、私には理解できていなかったのだろう。なので、終演後も手が痛くなるほどの拍手までは至らなかった。

そんな感想を持ちはしたものの、久しぶりの演奏会を堪能し、終演後の充実感を味わった。やっぱり、生音は最高だ。9月に入って、演奏会シーズンが再開。ルーティンにならず、新鮮な気持ちを維持して、一期一会を楽しみたい。

第1007回定期演奏会Aシリーズ
日時:2024年9月4日(水) 19:00開演(18:00開場)
場所:東京文化会館 

【ブルックナー生誕200年記念】
指揮/大野和士
ピアノ/ポール・ルイス

曲 目
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37           
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 WAB107(ノヴァーク版)      

【ソリスト・アンコール】
シューベルト :ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D.960より 第3楽章
 (ピアノ/ポール・ルイス)

Subscription Concert No.1007 A Series
This concert is over. Date: Wed. 4. September 2024 19:00 (18:00)
Venue: Tokyo Bunka Kaikan 

[Bruckner 200]
Kazushi ONO, Conductor
Paul LEWIS, Piano

Program
Beethoven: Piano Concerto No.3 in C minor, op.37             
Bruckner: Symphony No.7 in E major, WAB107(Nowak edition)


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