珍書である。バブル時代の象徴とも言えるイトマン事件の内幕を描く暴露本であるが、日本経済を揺るがした経済事件の関係者のメモをもとにした本書のリアリティは何物にも代えがたい。
イトマン事件そのものを知らないと本書では事件の構造は全くわからないだろうし、筆者の傲慢とも言える自信・自負心は吐き気を催すほどだが、銀行という組織で展開される政治力学のすさまじさや、筆者の貪欲な情報収集は迫力満点で、半沢直樹も高杉良の経済小説も全く敵わない。
本書はあくまでも事件を特定の視点から見た生記録であるが、これが事件の中核にいたイトマン河村社長や住友銀行磯田会長を初め関係者には、日々この事件はどう見えていたのか?組織の腐敗、企業犯罪のケーススタディとして、これほど興味深い題材はないかもしれない。
《目次》
第1章 問題のスタート
第2章 なすすべもなく
第3章 行内の暗闘
第4章 共犯あるいは運命共同体
第5章 焦燥
第6章 攻勢
第7章 惨憺
第8章 兆し
第9章 9合目
第10章 停滞
第11章 磯田退任
第12章 追及か救済か
第13章 苛立ち
第14章 Zデー
第15章 解任!
第16章 虚脱
第17章 幕切れ