その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新国立劇場オペラ『ジークフリート』 (飯守泰次郎/東響) 

2017-07-12 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 公演から一月以上も経ってしまったけど、とりあえず記録として感想を。

 レベルの高い出演者とオケの熱演がミックスされた素晴らしい舞台でした。
 
 中でも3幕4時間出ずっぱりのジークフリート役のステファン・グールドが文句なしのMVP。大拍手です。1幕は意外と声が通らない印象があって、私もいま一つ乗り切れなかったのだけど、2幕、3幕と尻上がりに盛り上がり、3幕のブリュンヒルデとのやり取りは緊張感一杯で、舞台に釘付けでした。このオペラが、ジークフリートの成長物語であることがよくわかった。

 グールド以外にもミーメ役アンドレアス・コンラッドのテノールは滑らかで表現力豊かで、ブリュンヒルデ役リカルダ・メルベートのソプラノも気高い。主要歌手陣を非日本人で固めた陣容はさながらメジャーリーグ的な重要感と安定感に溢れるものでした。

 歌手陣だけでなく、飯守さん指揮の東響も熱演で、奥深いリング・ワールドを展開し文句なしです。

 演出もバランスが取れた違和感なく素直に舞台に入っていけるものでした。怪物がビニールの空気人形のようでチープだったり、4羽の鳥の衣装が場末のストリップ劇場のダンサーが身に着けるような、見ているだけで恥ずかしくなるような品のないものだったことを除いては、自然でしっくりくるものでした。毎年春に、東京春音楽祭のヤノフスキ/N響の演奏会方式による素晴らしいパフォーマンスを見ていると、余計な演出など無用ではと思ってしまうのですが、初めて「ジークフリート」を舞台付きで見て、やっぱりプロダクションが付いた方が作品の理解には役立ちことを実感。

 長さを感じさせたのはお尻だけで、4時間の上演時間も全く気にならない集中した公演でした。



2017年6月4日

指揮 Conductor
飯守泰次郎 IIMORI Taijiro
演出 Production
ゲッツ・フリードリヒ Götz FRIEDRICH

美術・衣裳 Set and Costume Design
ゴットフリート・ピルツ Gottfried PILZ
照明 Lighting Design
キンモ・ルスケラ Kimmo RUSKELA
演出監修 Supervisor of Stage Direction
アンナ・ケロ Anna KELO
演出補 Revival Director
キム・アンベルラ Kim AMBERLA
舞台監督 Stage Manager
村田健輔 MURATA Kensuke

ジークフリート Siegfried:ステファン・グールド Stephen GOULD
ミーメ Mime: アンドレアス・コンラッド Andreas CONRAD
さすらい人 Der Wanderer:グリア・グリムスレイ Greer GRIMSLEY
アルベリヒ Alberich:トーマス・ガゼリ Thomas GAZHELI
ファフナー Fafner:クリスティアン・ヒュープナー Christian HÜBNER
エルダ Erda:クリスタ・マイヤー Christa MAYER
ブリュンヒルデ Brünnhilde:リカルダ・メルベート Ricarda MERBETH
森の小鳥 Waldvögel:鵜木絵里 UNOKI Eri
九嶋香奈枝 KUSHIMA Kanae:安井陽子 YASUI Yoko
吉原圭子 YOSHIHARA Keiko:
森の小鳥(ダンサー)Waldvögel(Dancer):
6/1. 6/7. 6/14 五月女 遥(新国立劇場バレエ団)SOUTOME Haruka (The National Ballet of Japan)
6/4. 6/10. 6/17 奥田花純(新国立劇場バレエ団)OKUDA Kasumi (The National Ballet of Japan)

管弦楽 Orchestra:東京交響楽団 Tokyo Symphony Orchestra
協力 Cooperation:日本ワーグナー協会 Richard-Wagner-Gesellschaft Japan

芸術監督 Artistic Director:飯守泰次郎 IIMORI Taijiro
コメント
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