ノットの「復活」聴きたさに川崎まで遠征。期待をはるかに上回る感動的な演奏会でした。
前半の細川の「嘆き」。「復活」前の体慣らし程度で臨んだところ、全くの私の見当違いで、作品、独唱、演奏どれも素晴らしい公演。東北大震災の被害者を追悼した作品ですので、テーマそのものが重いのですが、音楽も緊張感あふれるもので、加えて藤村さんの独唱がまるで霊感を得たような神がかった神々しい歌唱。ノーガード状態でいきなり超弩級のストレートパンチを貰い、胸が苦しくなるほどでした。
そして、後半のマーラー交響曲2番は圧巻。冒頭の低弦の主題演奏から楽員たちの気合が3階席の私もビンビンに伝わってきます。「気持ち入っているなあ~」が最初の感想。ただ、その後の演奏は、強い気持ちが全体の演奏としてのパワーに結実せず、やや空回りしているような印象がありました。個人的にこの曲、結構生で凄い演奏を聴いてきたので、注文が多いのかもしれません。多重的、重層的な響きに欠けるように感じたり、金管にはもっとリスク取って、ドバーッと行ってもらいたかったところもありました。
が、それは第4楽章で藤村さんの独唱からガラッと変わりました。藤村さんの清らかな歌声にまずほろっと。そして、第5楽章は最初から最後まで圧倒されっぱなし。ノットさんの激しい棒とオケががっぷりよつ。途中から不覚にも涙が溢れてきました。
藤村さんのメゾはここでも神々しい。そして、出番こそ多くないものの、天羽さんのソプラノも美しく存在感が際立っていました。
更に、東響コーラスの合唱も、美しくかつ安定的で素晴らしかったです。オケや独唱とのバランスも抜群で、オケに埋もれることも、逆にオケを覆いつくすこともなく、まさに楽器群の一つとして、極上の合唱でした。
演奏後の拍手はもう少し待って欲しかったですが、気持ちはわかります。会場全体からの感動が拍手になってホール一杯に響きました。私も涙を抑えて、拍手拍手。
演奏以外に2つほどのサプライズ。一つは、まずこのプログラミング。「復活」とは重すぎるぐらいの組み合わせですが、「復活」単独プログラムの場合が多い近年の演奏会事情で、こんな凄い「復活」とのカップリングは経験ありません、2曲、しかもその対に「嘆き」を持ってくるこの心憎いまでの心遣い。降参するしかないです。
もう一つは、ミューザ川崎の雰囲気。東響の川崎定期は初めての経験でしたが、その温かさが感動的。演奏会が素晴らしかったのは勿論だけど、あの心こもった賞賛と感動の拍手も際立っています。ノットさんもあの聴衆の暖かい雰囲気では否が応でもモチベーション上がるだろうなあ。よそ者の私でさえ、感動をこれ以上なく共有できて、とっても良い気分です。
記憶に残る一日となりました。
《楽員がいなくなってもノットさんへの拍手は続く》
川崎定期演奏会 第61回
Kawasaki Subscription Concert Series No.61
ミューザ川崎シンフォニーホール
2017年07月16日(日)14:00 開演
出演
指揮:ジョナサン・ノット
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
ソプラノ:天羽明惠
合唱:東響コーラス(合唱指揮:冨平恭平)
曲目
細川俊夫:「嘆き」~メゾ・ソプラノとオーケストラのための
マーラー:交響曲 第2番 ハ短調 「復活」
Title
Kawasaki Subscription Concert Series No.61
Date
Sun. 16th July, 2017, 2:00p.m.
Hall
Muza Kawasaki Symphony Hall
Artist
Conductor = Jonathan Nott
Mezzo-soprano = Mihoko Fujimura
Soprano = Akie Amou
Chorus = Tokyo Symphony Chorus
Chorusmaster = Kyohei Tomihira
Program
T.Hosokawa : “Klage” for Mezzo-soprano and orchestra
G.Mahler : Symphony No.2 in C minor, “Auferstehung”