その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「蜘蛛巣城」(演出 赤堀雅秋)

2023-03-08 07:30:49 | ミュージカル、演劇

元ネタの「マクベス」や黒澤「蜘蛛巣城」をイメージして出かけたら、印象は大きく違うものでした。

マクベスが変を起こしたのは何歳の時だったのだろうか?三船敏郎が演じた鷲津武時は何歳の設定だったのだろうか?早乙女太一さん、倉科カナさんが演じたのは、若くてナイーブな、私には新しい義時(マクベス)、浅茅(マクベス夫人)でした。二人の主人公がより身近に、戦国時代が現代に感じられます。最初は違和感を拭えなかったのですが、違和感は旧来のイメージに囚われているからということに気づきました。新しい見方を教わった感覚です。

芸能界に疎い私は、倉科カナさんはNHKのドラマ「正直不動産」で初めて知ったのですが、熱演でした。

雑兵たちや農民を被支配者層、武士を支配者層として対比し、社会の階層構造や人間の欲・幸せをあぶりだすのも、従来作品にはなかった視点です。戦争が身近なものとなっている昨今の世界情勢で、彼らの台詞は現実味を持って刺さります。

有名なマクベスのTomorrow Speech(第5幕5場で、有名な名言「人生は歩く影法師。哀れな役者だ」に繋がっていく"Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow,"で始まる台詞)が妖婆(魔女)によって前半に語られたのも意外。台詞が始まったときは、「ここでお前がこれを言うか!」とかなりの驚き通り越した感じだった(黒澤「蜘蛛巣城」がどうだったかは忘れてます)のですが、これも如何に自分が勝手に「マクベス」像を創っていたかの例となりました。そもそも、これ『マクベス』じゃないし。

シカクイ頭をマルクしなくてはです。


<初めて訪れた神奈川芸術劇場>

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『蜘蛛巣城』

日時2023/2/25(土)~2023/3/12(日)

【作・演出】
原脚本:黒澤明 小國英雄 橋本忍 菊島隆三
脚本:齋藤雅文 
上演台本:齋藤雅文 赤堀雅秋
演出:赤堀雅秋

【出演】
早乙女太一 倉科カナ
長塚圭史 中島歩 佐藤直子 山本浩司 水澤紳吾
西本竜樹 永岡佑 新名基浩 清水優 川畑和雄 新井郁 井上向日葵 小林諒音
相田真滉 松川大祐 村中龍人 荒井天吾・田中誠人(W キャスト)
久保酎吉 赤堀雅秋 銀粉蝶

コメント
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