中華料理が好きだ。
ひと口に中華料理といっても、その店舗形態は、中国人シェフを擁した高級店から、王将やに代表されるチェーン店、こだわりの創作中華を出すヌーベルシノワ、街中の個人経営の店舗など様々だ。
コスパ重視で味覚音痴の還暦オヤジは、高級中華やヌーベルシノワには当然行かない。
よく利用するのは餃子の王将だ。
一品料理の味は、不味くはないレベルだが、餃子は高級店でも敵わない旨さだ。
たまに旨い炒飯を食べたい時には、市井の個人店を目指す。それも場末に近い小汚い中華屋だ。
そんな店にこそ、旨い炒飯は存在する、というのが私の経験則から導き出された結論だ。
そんな店は炒飯だけでなく、ランチも安くて旨い。
私の行きつけの店など、昭和30年代の面影を色濃く残した、地震が来たら真っ先に潰れそうな佇まいだ。
小汚いというより、物凄く汚いという表現がピッタリだ。
汚れて曇ったショーケースには、色褪せた食品サンプルが申し訳け程度に並び、狭い店内は天井から壁、床に至るまで、油焼けで真っ黒だ。壁際のラックには、何年も前の週刊誌や漫画本が雑然と積まれている。
新規客は絶対に入らない類いのシチュエーションだ。
にもかかわらず、炒飯と日替わりランチは絶品だ。私のボキャブラリーでは食レポ不可能の至極の味だ。
そんな店は絶対に人には教えない。まあ、教えたとしても、店舗の前で怖気づいて、入店には至らないと思われる。