虹色仮面 通信

神出鬼没なオッサンが毎日感じたことを取り留めなく書き連ねます

5年の短命、悲運の名機

2020-11-08 06:35:44 | 乗り物
かつて、スバルのエンジンといえば、ショートストロークのエンジンがほとんどでした。
加えて、ターボチャージャーで過給し、バキューンと走り抜けるのが特徴的でしたね。

しかしながら、個人的にはスバルの自然吸気(NA)エンジンが好みです。
実家のクルマも、レガシィB4(BE5、EJ20のNAモデル+5MT)です。
ただ、ショートストロークの特性で、低速(回転)域でのトルクが細く、ちょっとエンジンを煽り気味にしないとうまく加速しない、ちょっとやくざなフィールでした。

そんなスバルが、2006年にインプレッサ用として投入したのがEL15型エンジンです。
このエンジン、今までのスバルの方程式と異なり、77.7mm×79.0mmというロングストロークを実現したのです。
低速トルクの確保、そして燃費性能や環境性能(時代の要請に応じた)を狙ったものと思われます。

このEL15が初めて搭載されたのは、2代目インプレッサ(GD/GG型)の最終型であるG型でした。

EL15はその名の通り、排気量は1500ccの自然吸気です。
最高出力110PS/6400rpm、最大トルク14.7kg・m/3200rpmという、スバルらしからぬ地味なスペックでした。
しかし、スバルの水平対向エンジンに革命を起こしたとも言われる隠れた名機なのです。

スペック上は、前型(1500㏄NAエンジン)のEJ15から、最高出力で5ps、最大トルクで0.2kg・mの向上です。
数値上ほとんど変わりませんが、SOHCだったEJ15に対し、EL15はDOHCになり、吸気側に可変バルブタイミング機構(AVCS)を装備、排気に関しても等長エキゾーストを採用しました。

新世代のEL15はロングストローク化したのですが、燃費の改善はほぼ無く、目玉(トピック)の要素はほとんどありませんでした。
低燃費を目指した割にはレッドゾーンは7000rpmと意外に高回転型で、MTで走ると結構気持ちいいエンジンでした。

知人が所有していたため、数回乗せてもらいました(3代目インプレッサ、5MT車)が、あまりの出来の良さにびっくりしました。
決して速くはないモデルでしたが、滑らかでスムーズなフィーリング、そして水平対向エンジンゆえのバランスの良さは引き継がれていました。

ただ、いかんせん地味な存在だったことと、当時のスバルはEJ20ターボエンジンがメインの展開だったため、日の目を浴びることはほぼなかった悲運のクルマ(モデル)といえるでしょう。

インプレッサは、その後4代目にモデルチェンジしたときにEL15から、1.6LのFB16へ進化しました。
EL15エンジンは2代目のG型(最終型)で市場に投入されてから、たった5年しか生産されなかった不遇のエンジンなのです。

その後登場する新世代のエンジンであるFB型やFA型エンジンの基盤を作ったエンジンとも言われ、マニアたちには評価が高いエンジンです。
スバル車の中では極めて地味だったインプレッサの1.5Lモデルですが、実績作り(販売台数)やNAエンジンの進化において、不可欠な存在だったといえるでしょう。

3代目のインプレッサ、EL15搭載モデルは、中古車で50万円前後で流通しています。
今はマイカーは所有してませんが、もし買うことがあれば(その場合はもちろん5MT!)有力候補の1台になりそうだなぁ。
まぁそれはいつになることやら…。