息子と一緒に「語り部と歩く熊野古道」に参加。
日曜日にもかかわらず、参加者は語り部(爺様)と我々親子のみ。
3人とは気まずい・・・
が、いまさら後戻りもできない。 こうなったら共に歩くしかない。
歩き始めてすぐひっかかったのが、爺様の歩く速度。
あまりの遅さに愕然としたが、ご高齢なので致し方なし。
爺様を追い越さぬよう その背を足を見守りながら 立ち止まり立ち止まり歩く。
はやる気持ちを抑えながらようやくたどり着いた目的地・丸山千枚田。
美しき棚田を前にベンチに腰掛け、爺様から草餅がふるまれる。(サプライズ)
我々のためにご用意してくださったそのお気持ちに感謝しつつ、ぎょっとする。
コップを3つ用意し、お茶を入れてくださっているのであるが、
その水筒は先ほど爺様がお口をつけて飲んでいた水筒ではないか。(サプライズを通り越し、もう驚愕)
爺様のお気持ちはありがたい。ありがたいが、
本日初めてお会いした方と同じ水筒のお茶を酌み交わすほどではない仲。
「結構です」と冷たく言い放てない私。
入れてくださったお茶を捨てることもできない私。
爺様のあたたかさは、現代向きでない。
だからといってむげに断ることもできず、爺様の気持ちを・・・
いただくことにする。 究極の選択だった。
息子のために形のよいシダの葉を見つけて飛行機にしてくれた爺様。
先を急ぎたい私たちに立ち止まっては一生懸命語ってくれた爺様。
ついに爺様とお別れの時。
爺様が震える手でリュックサックから何か取り出す。
「妻が趣味で作っているやつなんですが・・・どうぞ」
爺様の手には、手作りの小さな小さなちりめん草履。
草履の下にある黄色い紙には手書きで「ありがとう」の文字。
婆様・・・
爺様と婆様のお気持ちがこの先も傷つかぬことを祈りながら
大切にしようといただく。