かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

小説「プリンセス・トヨトミ」、なかなか面白い本でした。

2011-05-05 22:12:19 | Weblog
 ゴールデンウイークも今日で終わりですね。実際には、明日を挟んで土日の休みがあるので、もう少しあるといえばあるわけですが、端午の節句を迎えると、何となく春の連休も終わり、という印象があります。
 今年の連休は、本読んだりサボテンの世話をしたり、朝少しだけ寝坊したりと、時間をゆったりと使いつつ、それほど無駄にもしなかったような、何となくの充実感のある休日を過ごした気がします。これが明日や来週からの日常生活に、いい風に糧となってくれればそれに越したことはありません。
 それでは、読んだ本の感想を、1冊書き留めておきましょう。
 本は、「プリンセス・トヨトミ」万城目学著 文春文庫 です。
 そもそもこのお話は、先週観に行った映画の予告で、5月末上映と紹介されていたお話で、ちょっと面白そうだ、と気にかけていたものです。その直後、本屋さんで新刊としてベタ積みされていたのが目に止まり、映画を観る前に、面白いかどうかひとつ確かめてみようと思い購入したのですが、思いの外面白くて、奇想天外な物語を堪能いたしました。
 舞台は大阪市中央区、大阪城の南南西にある空堀商店街という町を中心に展開します。空堀商店街の周辺は戦争中の空襲でも焼けずに残った古い町で、昔ながらの長屋が立ち並び、その間を入り組んだ細い路地が結ぶ、どこか懐かしい雰囲気を色濃く残すところです。私はまだ行ったことがないのですが、元々私は城東区という大阪の下町で生まれ育ったため、この街の雰囲気はその幼少時の記憶と符合するところが多く、最初から、物語への親和性が高い状態で読み進めることができました。まあこういう自分史背景を持っている事で物語世界にすんなり入ることが出来る人間が感じる感想ですから、大阪以外の土地に生まれ育ったヒトの感じ方とはまるで違う評価になるんじゃないか、とも思いますが、個人的には、娯楽作品として素晴らしいものがあった、と非常に満足な読後感に浸ることができました。
 これから映画も始まるところですからネタバレは避けますが、かなり無茶な、というか、初めはどう考えたって無理有り過ぎだろうと思った奇想天外な設定を、大阪の歴史に上手く摺り寄せながら、最終的には、まあ夢物語としてはありかな、と納得してしまうところに落としこむ物語の流れが実に見事でした。登場人物も活き活きとしていますし、誇張のない、自然な大阪弁が読んでいて実に心地よいですし、文庫で530頁になんなんとする長編を、だれること無く一気に読み進める事ができました。小説の映画化、というと基本的に観ていてあまり良い記憶が無いのですが、果たしてこの作品はどうか、小説の内容が内容だけに、ちょっと気になります。5月末には公開だそうですから、時間が許せば観に行ってみたいですね。

コメント
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