自治体は「競争」から離れること、「競争」では共倒れになるんじゃないかと、ここまで書いてきました。
そこで、フェイスブックに「自治体間競争から自治体共生へフェイズが移ったのでは」と書いたことに立ち戻ります。いま一度、“ 共生 ”についてweblio辞書を参照します。
「共生」******
1 共に同じ所で生活すること。
2 異種の生物が、相互に作用し合う状態で生活すること。相利共生と片利共生があり、寄生も含めることがある。
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自治体は、多少離れていても「1」の状況のはずです。市で考えると次に制度的な枠組みとしての「都道府県」の中で、ともに同じ所で生活しているともいえるでしょう。まして隣接しているのであれば、なおさら「共生」の意識が必要なはずです。
「2」については、住民・市民の方々は、通勤や通学といった形や買い物、そのほかの多くの活動を通じて、自治体の線引きにとらわれずに移動していることで、相互に作用しあう状況があると考えるのが自然ではないでしょうか。
これらのことからだけでも、「競争」から「共生」に移行していくことが自然な流れと考えられます。この中で「片利共生」と「寄生」については、自分のイメージの中に入っていません。
人口について考えることも重要です。人口減少は日本全体で起こっている動きで、その大きな流れを止めきることは難しいでしょうし、むしろ、人が担っていた仕事が機械に置き換わったりすることで、消費者としての存在以上に、どれだけ存在できるのかを考えることも必要かもしれません。また、多様な生き方を許容する社会であるということは、一定割合で結婚することや子どもを持つことに積極的判断を行わない人がいる可能性も考慮に入れる必要があると思います。
それに自然増として出生数が増えても、その子たちが働いたりできる15歳を過ぎるまでは、増えることによる影響は見込めないはずです。つまり劇的に出生数が増加するとしても、20年近くは今のような状況が続くと考えられると思います。また並行して、自然減少で大きな割合を占めることになる死亡者における高齢者の考え方も整理する必要が出てくると思います。
出生数の減少による少子化は、日本の多くの地域で同時進行で起こっている変化と考えれば、支援策の提示など表面的な取り組みで競争するのではなく、根本的な要因の部分を考え、全体として柔軟に社会を変化するようにしていくべきなのだと思います。
社会増減について、国内の他地域から自分のまちへの移住を誘導するということは、その先の地域での人口減少になり、マイナスの影響とセットである可能性が高いということを忘れるべきではないでしょう。そして各種優遇策を講じることは、同様のサービス実施競争につながり、ゼロサムゲームの中でお互いに住民を取り合うことになり、結果として政策の選択肢をどんどん減らしながら、均質化していくことになるのではと危惧します。そして体力が落ちた自治体から疲弊が加速していき、格差が拡大していくことになる可能性が大きいでしょう。
同じく社会増減について、国外との間での人の移動を考えると、多文化共生という言葉や取り組みもありますが、国外からの人の流入が多くなることは、人手不足の解消という側面からはプラスが見えるかもしれませんが、多様な文化や考え方を持つ人たちとの共存・共生は容易ではなく、そのための政策負担は自治体が負うことがほとんどになる可能性が考えられます。また「同一労働、同一賃金」ということがありますが、同じ仕事をしているのに日本人より賃金や待遇が低い状況であったり、逆に、賃金や待遇を低く抑えることが根拠の一部になって日本人の賃金や待遇も抑えられる状況があるとすれば、誰にとっても幸せな状況にはならないでしょうし、そのような社会状況の中では不安定要素が多くなり、社会が鬱屈とした空気に包まれるでしょう。
経済の恩恵を受ける人たちは地域社会などから遠いところで生活を行っていて、不利益になる部分を受けることは小さいことが考えられます。その一方で、地域社会に根付いて暮らすことになる人たちは、日本人だけでなく海外から来る人達も、生活の困難をそれぞれにうけ、地域で解決に取り組まざるを得なくなるということではないでしょうか。それは一地域の課題ではなく全体の課題だと考えます。
人口について考えていることをいろいろと書きましたが、人口問題について自治体で検討に政策を考えていく際には、やはり「競争」ではなく「共生」で考えていく局面であると考えます。そこでのキーワードが「関係人口」なのだと考えます。
この「関係人口」となる方々への取り組みを考えるにあたっても、「競争」という考え方では囲い込む方向性になりがちと考えます。いまの「移住」政策は、そのような傾向が強いものが多いように思います。逆に、囲い込むのではなく、ゆるやかに居心地の良い状況、活動のしやすい状況を考えなければ、このような方々は選択肢からその自治体は外すかもしれないでしょう。
自治体を線引きで考えて「競争」するのではなく、多様な自治体間で緩やかに“ 場 ”を意識すること、別の細胞ではなく一つの個体を形成する多様な細胞として連携するように「共生」を考えれば、細胞間を行き来したりしてそれぞれをつなぎ合わせる存在としての「関係人口」となる方々をどう考えるかもわかりやすくなるように思います。
人口という視点から考えて、「自治体共生」という考えで政策を考え整理、そして展開していくことが必要と考えます。
⇒ 「自治体は競争から共生へ④」につづく
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