朝日に映えるブライスキャニオンに後ろ髪を引かれながら、ツアーバスはアンテロープへと向かいました。かつて、この付近にはプロングホーン(別名アンテロープ)という鹿の仲間が多く生息しており、その角の流曲線が、キャニオンの流れるような縞模様に似ていることから、アンテロープキャニオンと名付けられたのだそうです。
アンテロープキャニオンが近づいてきた頃、左の車窓からちらりと見えたレイクパウエル。ダム付近のごく一部しか見えませんが、グレンキャニオンと呼ばれた峡谷を堰き止めて作った全米第2の人造湖です。グランドサークルとは、この湖を中心として半径230kmのエリアと、その範囲に含まれる壮大な景観全体を表しています。(写真は、グレンキャニオンダム Glen Canyon Dam)
反対側の車窓にはコロラド川。この8km下流に、コロラド川が赤い大地を馬蹄形にえぐったホースシューベンドがあります。
左にレイクパウエルとグレンキャニオンダム、右にコロラド川が見えるのは、写真上から南下するHWY89が東にカーブしたところ。もう少し進んで、ペイジという町(写真右)を過ぎてHWY89を左折すると、目指すアンテロープはもうすぐです。ちなみに、コロラド川が大きく東西に蛇行している部分がホースシューベンド(写真下部左寄り)。
キャニオンツアーの出発地点に到着しました。アンテロープキャニオンにはアッパーとロアーがありますが、私たちが訪れたのはアッパーのほう。地面からナバホ砂岩の岩山が立ち上がるアッパーに対して、ロアーは、地面の割れ目から谷間に降りていく形になります。
ツアーの順番を待っている間に、ナバホ族の若者が部族に伝わる踊り(7・8本の輪を操って、蝶や鳥など自然界の生き物を表現するもの)を披露してくれました。
車に揺られておよそ15分。ここがアッパーアンテロープの入口です。アンテロープキャニオンは、1931年ナバホ族の羊飼いの少女が、戻ってこない羊を探しているときに、偶然、大地の割れ目の奥に広がる美しい縞模様の峡谷を発見したのだそうです。(これはロアーアンテロープで、その後間もなくアッパーも発見されました)
ナバホ族のガイドさんの指示に従って内部に入ります。
ここは、アッパーキャニオンで最も広い場所です。私たちのグループに同行してくれたのは、3人のナバホのガイドさん。
内部は光が届きにくいので、しっかりとカメラを構えないとブレてしまいます。
谷の深さとあいまって、複雑な曲面が微妙な陰影を創り出していました。
アンテロープの周辺に雨が降ると、鉄砲水となってこの峡谷に押し寄せます。狭い峡谷で鉄砲水は更に加速され、水と砂が岩壁を削りとることによって、このような自然の造形ができあがったのだそうです。今の姿をそのままとどめることはなく、鉄砲水が起きるたび、アンテロープキャニオンはその形を変えていきます。
複雑に入り組んだ狭い間隙を通って谷底まで届く強烈な一条の光は「ザ・ビーム」と呼ばれ、この上なく幻想的な光景です。実は私も、「運が良ければ……」と少しだけ期待していたのですが、この現象が見られるのは、太陽が真上に上る夏の時期(しかも正午ごろ)だけなんだそうです。
ザ・ビームは見ることができませんでしたが、谷間に射しこむ光と影が織りなす光景に大感動。
案内してくれるナバホのガイドさんは、キャニオンの写真撮影の名人です。お願いすると「どうしてこんな写真が撮れるの?」と驚くような写真を撮ってくれます。
モノクロームのようなこの写真も彼らが撮ってくれたものですが、削りとられた砂岩表面の表情をよく伝えていますね。
谷間を歩いていると、神秘的な光景の連続で、ついついその場にとどまりたくなりますが……、
ツアーは5分間隔くらいで次々に入ってくるので、あまり悠長にはしていられません (^-^)ゞ
ちなみに、キャニオン内部には水とカメラ以外のものを持ち込むことは固く禁じられています。女性の小さなポーチなども含めて、一切例外は認められないようですので、注意が必要です。
以前、観光客のバッグで峡谷の岩肌を傷つけてしまったからだと聞きました。
それとは逆行するようですが、私たちのような一般的なツアーのほかに、写真撮影を目的とした”Photo Tour “もあります。
その場合に限り、撮影に必要な三脚などの機材を持ち込むことが許されているようです。
私たちの前後にも、このようなフォトツアーの少数グループがありました。
たしかに、満足のいく写真を撮るためには、三脚は必須かなと思います。
谷間はかなり深いので基本的に内部は暗く、美しく光が射す部分は逆に眩しいほどなので、被写体としては難しいんですよね。
私もたくさん写真を撮りましたが、8割がたはブレブレで使いものになりませんでした (^-^)ゞ
アッパーの出口(影の部分。また、ここから同じ道を引き返すので、正しくは出口ではありません)です。
赤い砂に覆われたこの地域で、アンテロープキャニオンのような峡谷がどのように出来上がったのかを、周囲の砂(土ではないんです)を使って説明してくれました。
ツアーを終了してでこぼこ道を車で引き返します。この道(道というより低地)は干上がった川底のようなもので、一旦雨が降ると周囲の雨がここに集中し、アンテロープキャニオンに押し寄せ鉄砲水となるんです。とても危険なので、上流部に雨が降るとキャニオンツアーは中止となります。
今回のグランドサークルツアーでめぐった場所のうち、このアンテロープキャニオンとモニュメントバレーは、ナバホ族の準自治領であるNavajo Nationの中にあり、ナバホの人々が管理運営しています。観光にあたっては許可証を要するエリアで、必ずナバホ族のガイドの同行が必要となります。
このナバホネイションは、全米各地(主として中西部)に存在するネイティブアメリカン居留地のなかでも、ユタ州南東部からネバダ州北東部、ニューメキシコ州北西部にまたがる最も大きなもの。ネイションには一つの「国」に匹敵するほどの強い自治権が認められており、ナバホ独自の立法・行政・司法の三権が独立して存在するのだそうです(ナバホネイションのHP)。ナバホネイション大統領・副大統領も、ナバホ族の選挙で選ばれるのだとか。ネットを検索していると、警察や陸軍に準ずる組織があるとも紹介されていました。
次は、21年ぶりに訪ねた懐かしいモニュメントバレーの記事をアップします。
アンテロープキャニオンが近づいてきた頃、左の車窓からちらりと見えたレイクパウエル。ダム付近のごく一部しか見えませんが、グレンキャニオンと呼ばれた峡谷を堰き止めて作った全米第2の人造湖です。グランドサークルとは、この湖を中心として半径230kmのエリアと、その範囲に含まれる壮大な景観全体を表しています。(写真は、グレンキャニオンダム Glen Canyon Dam)
反対側の車窓にはコロラド川。この8km下流に、コロラド川が赤い大地を馬蹄形にえぐったホースシューベンドがあります。
左にレイクパウエルとグレンキャニオンダム、右にコロラド川が見えるのは、写真上から南下するHWY89が東にカーブしたところ。もう少し進んで、ペイジという町(写真右)を過ぎてHWY89を左折すると、目指すアンテロープはもうすぐです。ちなみに、コロラド川が大きく東西に蛇行している部分がホースシューベンド(写真下部左寄り)。
キャニオンツアーの出発地点に到着しました。アンテロープキャニオンにはアッパーとロアーがありますが、私たちが訪れたのはアッパーのほう。地面からナバホ砂岩の岩山が立ち上がるアッパーに対して、ロアーは、地面の割れ目から谷間に降りていく形になります。
ツアーの順番を待っている間に、ナバホ族の若者が部族に伝わる踊り(7・8本の輪を操って、蝶や鳥など自然界の生き物を表現するもの)を披露してくれました。
車に揺られておよそ15分。ここがアッパーアンテロープの入口です。アンテロープキャニオンは、1931年ナバホ族の羊飼いの少女が、戻ってこない羊を探しているときに、偶然、大地の割れ目の奥に広がる美しい縞模様の峡谷を発見したのだそうです。(これはロアーアンテロープで、その後間もなくアッパーも発見されました)
ナバホ族のガイドさんの指示に従って内部に入ります。
ここは、アッパーキャニオンで最も広い場所です。私たちのグループに同行してくれたのは、3人のナバホのガイドさん。
内部は光が届きにくいので、しっかりとカメラを構えないとブレてしまいます。
谷の深さとあいまって、複雑な曲面が微妙な陰影を創り出していました。
アンテロープの周辺に雨が降ると、鉄砲水となってこの峡谷に押し寄せます。狭い峡谷で鉄砲水は更に加速され、水と砂が岩壁を削りとることによって、このような自然の造形ができあがったのだそうです。今の姿をそのままとどめることはなく、鉄砲水が起きるたび、アンテロープキャニオンはその形を変えていきます。
複雑に入り組んだ狭い間隙を通って谷底まで届く強烈な一条の光は「ザ・ビーム」と呼ばれ、この上なく幻想的な光景です。実は私も、「運が良ければ……」と少しだけ期待していたのですが、この現象が見られるのは、太陽が真上に上る夏の時期(しかも正午ごろ)だけなんだそうです。
ザ・ビームは見ることができませんでしたが、谷間に射しこむ光と影が織りなす光景に大感動。
案内してくれるナバホのガイドさんは、キャニオンの写真撮影の名人です。お願いすると「どうしてこんな写真が撮れるの?」と驚くような写真を撮ってくれます。
モノクロームのようなこの写真も彼らが撮ってくれたものですが、削りとられた砂岩表面の表情をよく伝えていますね。
谷間を歩いていると、神秘的な光景の連続で、ついついその場にとどまりたくなりますが……、
ツアーは5分間隔くらいで次々に入ってくるので、あまり悠長にはしていられません (^-^)ゞ
ちなみに、キャニオン内部には水とカメラ以外のものを持ち込むことは固く禁じられています。女性の小さなポーチなども含めて、一切例外は認められないようですので、注意が必要です。
以前、観光客のバッグで峡谷の岩肌を傷つけてしまったからだと聞きました。
それとは逆行するようですが、私たちのような一般的なツアーのほかに、写真撮影を目的とした”Photo Tour “もあります。
その場合に限り、撮影に必要な三脚などの機材を持ち込むことが許されているようです。
私たちの前後にも、このようなフォトツアーの少数グループがありました。
たしかに、満足のいく写真を撮るためには、三脚は必須かなと思います。
谷間はかなり深いので基本的に内部は暗く、美しく光が射す部分は逆に眩しいほどなので、被写体としては難しいんですよね。
私もたくさん写真を撮りましたが、8割がたはブレブレで使いものになりませんでした (^-^)ゞ
アッパーの出口(影の部分。また、ここから同じ道を引き返すので、正しくは出口ではありません)です。
赤い砂に覆われたこの地域で、アンテロープキャニオンのような峡谷がどのように出来上がったのかを、周囲の砂(土ではないんです)を使って説明してくれました。
ツアーを終了してでこぼこ道を車で引き返します。この道(道というより低地)は干上がった川底のようなもので、一旦雨が降ると周囲の雨がここに集中し、アンテロープキャニオンに押し寄せ鉄砲水となるんです。とても危険なので、上流部に雨が降るとキャニオンツアーは中止となります。
今回のグランドサークルツアーでめぐった場所のうち、このアンテロープキャニオンとモニュメントバレーは、ナバホ族の準自治領であるNavajo Nationの中にあり、ナバホの人々が管理運営しています。観光にあたっては許可証を要するエリアで、必ずナバホ族のガイドの同行が必要となります。
このナバホネイションは、全米各地(主として中西部)に存在するネイティブアメリカン居留地のなかでも、ユタ州南東部からネバダ州北東部、ニューメキシコ州北西部にまたがる最も大きなもの。ネイションには一つの「国」に匹敵するほどの強い自治権が認められており、ナバホ独自の立法・行政・司法の三権が独立して存在するのだそうです(ナバホネイションのHP)。ナバホネイション大統領・副大統領も、ナバホ族の選挙で選ばれるのだとか。ネットを検索していると、警察や陸軍に準ずる組織があるとも紹介されていました。
次は、21年ぶりに訪ねた懐かしいモニュメントバレーの記事をアップします。