N響の池袋Aプロは指揮者とソリストが変わった。それに伴い協奏曲の曲目も変わった。結果的にガエタノ・デスピノーサという、名前はよく見かけるが、わたしには未知の指揮者を聴く機会になった。またバルトークのピアノ協奏曲第3番という、わたしの大好きな曲だが、なかなか聴く機会のない曲を聴く機会になった。
デスピノーサは1978年、イタリアのパレルモ生まれ。ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターをしていたときに、当時の音楽監督のファビオ・ルイージのすすめで指揮者に転向した。来年9月からN響の首席指揮者に就任するルイージとつながりのある指揮者だ。今後もN響への登場機会があるかもしれない。
1曲目はブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。冒頭のテーマの提示のとき、低弦がはっきり聴こえるので、ドレスデン国立歌劇場のオーケストラの音を思い出した。全体的には滑らかで、角のとれた演奏だった。細かな起伏がつけられ、変奏ごとのニュアンスが工夫された演奏だ。通り一遍の演奏ではなかった。
2曲目はバルトークのピアノ協奏曲第3番。ピアノ独奏は1995年生まれの小林海都(こばやし・かいと)。今年9月のイギリスのリーズ国際ピアノ・コンクールで2位を受賞した。バルトークの同曲はコンクールのファイナルで演奏した曲だ。
演奏は終始ピアノの音がクリアーに聴こえたが、その先に求めたいピアニストの個性とか、豊かな将来性とかは、まだ発現の途上だった。わたしは本プロよりもアンコールに惹かれた。独特の情緒をたたえた曲だった。だれの曲だろう。N響のツイッターをチェックしたら、ヤナーチェクの「草陰の小径にて」第1集から第7曲「おやすみ」だった。その演奏のほうが印象に残った。
オーケストラの演奏は、第3楽章に入ると、熱い演奏が繰り広げられたので、思わず目をみはった。第1~第2楽章からは、また前曲のブラームスからも、あまり想像しなかった演奏だ。デスピノーサの別の面を見る思いがした。
3曲目はシェーンベルクの「浄められた夜」。これは名演だった。音楽にドラマがあり、彫りの深さと語り口の雄弁さで、約30分の長丁場を一気に聴かせた。デスピノーサの歌劇場でのキャリアの反映と思いたくなるが、それ以上に本人の資質だろう。デスピノーサの本領がどこにあるのか、今後見極める楽しみができた。オペラはもちろんだが、それ以外にも豊かな可能性を秘めていそうだ。なおN響の編成はヴァイオリン12+12、ヴィオラ8、チェロ8、コントラバス6の合計46人。N響の弦の底力に圧倒された。
(2021.12.5.東京芸術劇場)
デスピノーサは1978年、イタリアのパレルモ生まれ。ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターをしていたときに、当時の音楽監督のファビオ・ルイージのすすめで指揮者に転向した。来年9月からN響の首席指揮者に就任するルイージとつながりのある指揮者だ。今後もN響への登場機会があるかもしれない。
1曲目はブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。冒頭のテーマの提示のとき、低弦がはっきり聴こえるので、ドレスデン国立歌劇場のオーケストラの音を思い出した。全体的には滑らかで、角のとれた演奏だった。細かな起伏がつけられ、変奏ごとのニュアンスが工夫された演奏だ。通り一遍の演奏ではなかった。
2曲目はバルトークのピアノ協奏曲第3番。ピアノ独奏は1995年生まれの小林海都(こばやし・かいと)。今年9月のイギリスのリーズ国際ピアノ・コンクールで2位を受賞した。バルトークの同曲はコンクールのファイナルで演奏した曲だ。
演奏は終始ピアノの音がクリアーに聴こえたが、その先に求めたいピアニストの個性とか、豊かな将来性とかは、まだ発現の途上だった。わたしは本プロよりもアンコールに惹かれた。独特の情緒をたたえた曲だった。だれの曲だろう。N響のツイッターをチェックしたら、ヤナーチェクの「草陰の小径にて」第1集から第7曲「おやすみ」だった。その演奏のほうが印象に残った。
オーケストラの演奏は、第3楽章に入ると、熱い演奏が繰り広げられたので、思わず目をみはった。第1~第2楽章からは、また前曲のブラームスからも、あまり想像しなかった演奏だ。デスピノーサの別の面を見る思いがした。
3曲目はシェーンベルクの「浄められた夜」。これは名演だった。音楽にドラマがあり、彫りの深さと語り口の雄弁さで、約30分の長丁場を一気に聴かせた。デスピノーサの歌劇場でのキャリアの反映と思いたくなるが、それ以上に本人の資質だろう。デスピノーサの本領がどこにあるのか、今後見極める楽しみができた。オペラはもちろんだが、それ以外にも豊かな可能性を秘めていそうだ。なおN響の編成はヴァイオリン12+12、ヴィオラ8、チェロ8、コントラバス6の合計46人。N響の弦の底力に圧倒された。
(2021.12.5.東京芸術劇場)