もう一ヶ月ほど前になるが、小諸市立小山敬三美術館を訪れた。といっても、じつは懐古園を訪れた際に、その隣に同美術館があったので、ついでに立ち寄った次第だ。小山敬三という名前にはピンとこなかったが、館内に入って作品を見たときに、ああ、この画家かと思った。じっと作品を見ているうちに、良さがわかってきた。流行の先端を行くような野心がなく、穏やかな作風だが、それがわたしの感性に合った。
簡単に経歴に触れると、小山敬三は1897年に小諸で生まれた。藤島武二に就いて洋画を学んだ。詩人・作家の島崎藤村のすすめで1920年にフランスに渡り、シャルル・ゲランの画学校に入った。1928年に帰国。1929年に神奈川県の茅ケ崎にアトリエを構えた。1960年に日本芸術院会員。1970年に文化功労者。1975年に文化勲章受章。1987年に死去した。享年89歳。
同美術館に収蔵されている主な作品の画像がHP(リンク↓)に掲載されている。最初に載っているのが「浅間山黎明」(1959)だ。夜明けの曙光で紅色に染まった浅間山を描いている。藍色の空には満月が残っている。雲がたなびく。空気が澄んでいる。わたしが展示作品の中でもっとも感銘を受けた作品だ。分類すれば具象画になるだろうが、形態は単純化され、太い描線に独特のリズムがある。色彩的には浅間山の紅色と空の藍色とが対をなし、また樹木の緑色と田畑の黄色とが対をなす。それらの色彩を縫い合わすように残月と雲の白色が配されている。
本作品は、そこに何が描かれているか、どんな特徴のある作品かが一目でわかるが、その段階にとどまらずに、見れば見るほど、それを描いた画家の淡々とした心境が伝わってくる。わたしはそれが好ましかった。
HPに載っている画像の中に「初夏の白鷺城」(1974)がある。館内でその作品を見たときに、どこかで見たことがある作品だと思った。帰宅後、小山敬三のことを調べるうちに、東京国立近代美術館所蔵の「雨季の白鷺城」(1976)に行きついた。ともに白鷺城(姫路城)の屋根瓦を描いた作品だ。構図も大きさもほとんど同じだ。両作品は同一テーマの別バージョンといえるだろう。
同美術館は千曲川を見下ろす高台に立地している。「薄暮千曲の流れ」(1979)はその高台から千曲川を見下ろした作品だ(画像は残念ながらHPには載っていないが)。わたしはその作品を見たときに、あっと思った。まさにその場にいるからだ。作品は黄色のトーンで統一されている。題名に薄暮とあるが、それはすべてのものが灰色に包まれる夕暮れではなく、夕日が最後の輝きを放つ夕暮れのようだ。
(2022.10.13.小山敬三美術館)
(※)小山敬三美術館のHP
簡単に経歴に触れると、小山敬三は1897年に小諸で生まれた。藤島武二に就いて洋画を学んだ。詩人・作家の島崎藤村のすすめで1920年にフランスに渡り、シャルル・ゲランの画学校に入った。1928年に帰国。1929年に神奈川県の茅ケ崎にアトリエを構えた。1960年に日本芸術院会員。1970年に文化功労者。1975年に文化勲章受章。1987年に死去した。享年89歳。
同美術館に収蔵されている主な作品の画像がHP(リンク↓)に掲載されている。最初に載っているのが「浅間山黎明」(1959)だ。夜明けの曙光で紅色に染まった浅間山を描いている。藍色の空には満月が残っている。雲がたなびく。空気が澄んでいる。わたしが展示作品の中でもっとも感銘を受けた作品だ。分類すれば具象画になるだろうが、形態は単純化され、太い描線に独特のリズムがある。色彩的には浅間山の紅色と空の藍色とが対をなし、また樹木の緑色と田畑の黄色とが対をなす。それらの色彩を縫い合わすように残月と雲の白色が配されている。
本作品は、そこに何が描かれているか、どんな特徴のある作品かが一目でわかるが、その段階にとどまらずに、見れば見るほど、それを描いた画家の淡々とした心境が伝わってくる。わたしはそれが好ましかった。
HPに載っている画像の中に「初夏の白鷺城」(1974)がある。館内でその作品を見たときに、どこかで見たことがある作品だと思った。帰宅後、小山敬三のことを調べるうちに、東京国立近代美術館所蔵の「雨季の白鷺城」(1976)に行きついた。ともに白鷺城(姫路城)の屋根瓦を描いた作品だ。構図も大きさもほとんど同じだ。両作品は同一テーマの別バージョンといえるだろう。
同美術館は千曲川を見下ろす高台に立地している。「薄暮千曲の流れ」(1979)はその高台から千曲川を見下ろした作品だ(画像は残念ながらHPには載っていないが)。わたしはその作品を見たときに、あっと思った。まさにその場にいるからだ。作品は黄色のトーンで統一されている。題名に薄暮とあるが、それはすべてのものが灰色に包まれる夕暮れではなく、夕日が最後の輝きを放つ夕暮れのようだ。
(2022.10.13.小山敬三美術館)
(※)小山敬三美術館のHP