Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2022年11月11日 | 音楽
 藤岡幸夫指揮東京シティ・フィルの定期演奏会。プログラムは今年生誕150年のヴォーン・ウィリアムズの2曲にドビュッシーの2曲を組み合わせたもの。ヴォーン・ウィリアムズは藤岡幸夫の得意のレパートリーだ。

 1曲目はそのヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」。美しい曲だが、当夜の演奏は(わたしのイメージにくらべると)音が分厚く感じられた。2群の弦楽合奏による曲だが、主体となる弦楽合奏は12型の編成、エコーとなる弦楽合奏は2‐2‐2‐2‐1の編成(これは譜面で指定されているのかもしれない)。合わせると14型になる。もう少し絞ったほうがいいのではないかと思ったが。個別の奏者ではヴィオラの首席奏者の音が美しかった。

 2曲目は同じくヴォーン・ウィリアムズの「2台のピアノのための協奏曲」。そんな曲があったのかというのが正直なところだ。柴田克彦氏のプログラムノーツによれば、まず普通のピアノ協奏曲として書かれ(1933年に初演)、次いで2台のピアノ用に改作された由(1946年に初演)。「トマス・タリスの主題による幻想曲」のしっとりした抒情とは対照的に、明るくエネルギッシュな曲だ。全3楽章からなり、ロマンツァと名付けられた第2楽章では、ノスタルジックな音楽が展開する。わたしはラヴェルのピアノ協奏曲(両手のほう)の第2楽章を連想した。

 ピアノ独奏は寺田悦子と渡邉規久雄。懐かしいお二人だ。第1楽章はピアノの音がオーケストラに埋もれ気味だったが(第1楽章のみならず、全3楽章にわたって、オーケストラがひじょうに雄弁だった)、第1楽章の終わりにピアノのカデンツァがあり、そこからピアノの音が聴こえ始めた。アナログ的な温かみのある音だった。

 プログラム後半のドビュッシーはまず「牧神の午後への前奏曲」から。首席フルート奏者の竹山愛の音が楽しみだったが、意外なことに、出だしはかなり音を抑えていた。ソロ活動も活発な竹山愛は(良い意味で)自己主張の強い演奏をするタイプだから、この出だしは藤岡幸夫の指示ではないだろうか。

 最後はドビュッシーの「海」。これには疑問を感じた。全体的に感興が乗っていない演奏なのだ。細かい点でいえば、たとえばティンパニが強打するときがあったが、それがいかにも強引な運びだ。ドビュッシーの音楽スタイルからも、またフラン近代の音楽スタイルからも外れた独自スタイルを感じた。オーケストラはそれに引きずり回され、自発的な演奏をするにはいたらなかったのではないか。藤岡幸夫はイギリス音楽や日本人作品には説得力のある解釈をするのだが。
(2022.11.10.オペラシティ)
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