Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2024年02月03日 | 音楽
 藤岡幸夫指揮東京シティ・フィルの定期演奏会。1曲目はロッシーニの「チェネレントラ」序曲。「チェネレントラ」は好きなオペラだが、序曲を演奏会で聴いたことがあったろうかと。そもそもロッシーニの序曲を演奏会の冒頭に組むことが(最近では)珍しくなった。昭和の時代を思い出すといったら、語弊があるか。

 演奏は堂々としたシンフォニックなもの。それも昔懐かしい。序奏でのファゴットが軽妙な味を出した。藤岡幸夫の指示なのか。首席奏者・皆神陽太の創意なのか。舞台でのコミカルな演技を彷彿とさせた。

 2曲目は菅野祐悟の新作「ヴァイオリン協奏曲」。ヴァイオリン独奏は神尾真由子。菅野祐悟の作品を聴くのは3度目だ。サクソフォン協奏曲を2度(東京シティ・フィルと日本フィルで)と交響曲第2番を1度(東京交響楽団で)聴いた。どれも透明な美しい音響が記憶に鮮明だ。

 菅野祐悟の作品は良い意味で予想を裏切るところがあると、わたしは思うのだが、今度の「ヴァイオリン協奏曲」にもそういうところがある。全3楽章で演奏時間約30分の立派な曲だが、第1楽章はゆっくりした緩徐楽章だ。実感としては、いきなり第2楽章から始まった感がする(なお菅野祐悟は「楽章」という言葉を使わずに「Symbolic」という言葉を使っている。第1楽章は「Symbolic Ⅰ」だ)。

 全3楽章なので、「Symbolic Ⅱは速い楽章か」と思いきや、これもゆっくりした楽章だ。「そうか、緩―緩―急の楽章構成か」と思いきや、Symbolic Ⅲが始まると、これも緩徐楽章。意外だ。「すべての楽章が緩徐楽章か」と思いきや、Symbolic Ⅲの後半で速い音楽になり、リズムが躍動する中で曲を終えた。

 ゆっくりした部分では甘いメロディーが歌われる。神尾真由子の濃い演奏が音楽を支える。神尾真由子の独壇場だ。神尾真由子を想定して書かれた曲。たしかに生半可な演奏では音楽がもたないかもしれない。他方、Symbolic ⅠとSymbolic Ⅱには気持ちが昂るような速い動きになる部分があり、それらの部分と前述のSymbolic Ⅲの後半の速い音楽は、わたしにはピアソラの音楽のようなテイストが感じられた。

 3曲目はサン=サーンスの交響曲第3番。藤岡幸夫の演奏スタイルの一面だと思うが、フォルテになると、いつもの東京シティ・フィルの2割増しくらいの音量になる。それは豪快で大向こう受けするかもしれないが、絶叫調に聴こえる部分がある。東京シティ・フィルを振るときの藤岡幸夫には影を潜めていた面だが、今回はそれが現れた。
(2024.2.2.東京オペラシティ)
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