Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2025年02月15日 | 音楽
 藤岡幸夫が東京シティ・フィルを振って仏陀をテーマとする大作2曲を演奏する企画を立てた。昨夜はその第1弾。東京シティ・フィルの定期演奏会で伊福部昭(1914‐2006)の交響頌偈「釈迦」(1989)を演奏した。第2弾は2月20日に都民芸術フェスティバルの一環として貴志康一(1909‐1937)の交響曲「仏陀」(1934)を演奏する。貴志康一の「仏陀」は1934年に貴志康一がベルリン・フィルを振って初演したことで知られる。

 伊福部昭の交響頌偈「釈迦」は浄土宗東京教区青年会、東宝ミュージック、ユーメックスの委嘱で書かれた(柴田克彦氏のプログラム・ノートによる)。頌偈は「じゅげ」と読む。「佛の徳を讃える歌」を意味する。

 曲は3楽章からなる。緩―急―緩の構成だ。演奏時間は約40分。第2楽章と第3楽章に混声合唱が加わる。全体的に壮大なスケールをもつ大曲だ。第1楽章は東洋的な音調が悠然と流れる音楽。第2楽章はいかにも伊福部昭らしいダイナミックな音楽。第3楽章は釈迦(仏陀)をたたえる賛歌。

 演奏は入念に準備された見事な演奏だった。初演以来何度か演奏された曲のようだが、一般的にはあまり知られず、当夜の演奏は蘇演といってもいいくらいだ。そのような曲を取り上げて、曲の真価を問う目的意識をもつ演奏だった。

 オーケストレーションがおもしろい。柴田克彦氏がプログラム・ノートで触れている2台のチューブラ・ベルの活躍をはじめとして(1台ではなく2台であることがミソだ)、それ以外にも、フルート・パートにはアルトフルートが、オーボエ・パートにはイングリッシュホルンが、クラリネット・パートにはバスクラリネットが、そしてファゴット・パートにはコントラファゴットが加わる。それらの低音木管楽器が重要な働きをして、東洋的な情緒を醸成する。

 備忘的に書いておきたいが、藤岡幸夫はプレトークで、修業中の釈迦の煩悩とのたたかいを描く第2楽章では、釈迦を誘惑する女声の部分は、伊福部昭の速度指定だと聖女のように聴こえるので、速度を速めると言っていた。合唱は東京シティ・フィル・コーアが担当した。第2楽章はともかく、第3楽章はもう一段の精度がほしかった。

 順序が逆になったが、当夜は1曲目にブラームスの交響曲第3番が演奏された。実演では意外に聴く機会が少ない曲なので、楽しみにしていた。第1楽章の冒頭で弦楽器が分厚い音で鳴った。思わず引き込まれた。だが、楽章を追うにつれて、音が希薄になった。藤岡幸夫のキャラクターからいって、今後はエネルギーが渦巻くブラームスを期待したい。
(2025.2.14.東京オペラシティ)

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