藤岡幸夫指揮日本フィルの横浜定期。1曲目は武満徹の組曲「波の盆」。1983年に日本テレビで放映されたドラマ「波の盆」のために武満徹が作曲した音楽を、後に武満徹自身が演奏会用組曲に編曲した。ノスタルジックなテーマが何度か回帰する。ハープとチェレスタとシンセサイザーがアクセントを添える。
演奏はしみじみとした情感を漂わせた。以前、尾高忠明指揮N響が演奏したときは、あまりにも沈んだ情感に、わたしまで沈んだ気分になった記憶がある。今回の演奏ではその点はうまく回避していた。
テレビドラマは倉本聡の脚本、実相寺昭雄の監督によるもの。その年の文化庁芸術大賞を受賞した。ストーリーはハワイの日系移民の第二次世界大戦中の苦難を回想するもの。わたしは未見だが、武満徹の音楽から何となく作品が想像される。
2曲目はモーツァルトのフルート協奏曲第2番。フルート独奏はCocomi。Cocomiはもちろん芸名だ。若い日本人女性。ステージに登場したときから、スリムなスタイルに目を奪われた(容姿のことをいうのは、本来は憚られるが)。演奏は素直だ。アンコールにフォーレの「コンクール用小品」を演奏した(わたしはだれの何という曲か知らなかったが)。アンコールのほうが音色に艶があった。
帰宅後、インターネットでCocomiを検索した。木村拓哉と工藤静香の娘さんだ。2001年生まれ。桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コースを修了。現在はフルート奏者として活動するとともにモデルとしても活動する――と。なるほどと納得する。
3曲目はルグランの交響組曲「シェルブールの雨傘」。演奏時間約30分の大曲だ。例の甘く切ないテーマが何度も現れる。大オーケストラ以外に、エレクトリックギターとウッドベースとドラムスのコンボが加わる。トランペット、トロンボーン(ともにうまい!)、ピアノ、ヴァイオリンなどのソロが頻出する。ゴージャスなサウンドを楽しんだ。ルグランはポピュラー音楽で大成功したが、パリ音楽院出身だ。オーケストラを色彩豊かに鳴らす術を心得ている。最晩年にはチェロ協奏曲(山田和樹が日本フィルを振って、横坂源のチェロ独奏で演奏したことがある)とピアノ協奏曲を作曲した。
「シェルブールの雨傘」は高校時代か大学時代に観たことがある。若い二人の甘い純愛物語だが、人生の苦みが加わる点がフランス映画の伝統を感じさせる。物語の背景には当時のアルジェリア戦争がある。アルジェリアがフランスと戦い、独立を勝ち取った。「シェルブールの雨傘」はその直後に制作された。
(2025.1.25.横浜みなとみらいホール)
演奏はしみじみとした情感を漂わせた。以前、尾高忠明指揮N響が演奏したときは、あまりにも沈んだ情感に、わたしまで沈んだ気分になった記憶がある。今回の演奏ではその点はうまく回避していた。
テレビドラマは倉本聡の脚本、実相寺昭雄の監督によるもの。その年の文化庁芸術大賞を受賞した。ストーリーはハワイの日系移民の第二次世界大戦中の苦難を回想するもの。わたしは未見だが、武満徹の音楽から何となく作品が想像される。
2曲目はモーツァルトのフルート協奏曲第2番。フルート独奏はCocomi。Cocomiはもちろん芸名だ。若い日本人女性。ステージに登場したときから、スリムなスタイルに目を奪われた(容姿のことをいうのは、本来は憚られるが)。演奏は素直だ。アンコールにフォーレの「コンクール用小品」を演奏した(わたしはだれの何という曲か知らなかったが)。アンコールのほうが音色に艶があった。
帰宅後、インターネットでCocomiを検索した。木村拓哉と工藤静香の娘さんだ。2001年生まれ。桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コースを修了。現在はフルート奏者として活動するとともにモデルとしても活動する――と。なるほどと納得する。
3曲目はルグランの交響組曲「シェルブールの雨傘」。演奏時間約30分の大曲だ。例の甘く切ないテーマが何度も現れる。大オーケストラ以外に、エレクトリックギターとウッドベースとドラムスのコンボが加わる。トランペット、トロンボーン(ともにうまい!)、ピアノ、ヴァイオリンなどのソロが頻出する。ゴージャスなサウンドを楽しんだ。ルグランはポピュラー音楽で大成功したが、パリ音楽院出身だ。オーケストラを色彩豊かに鳴らす術を心得ている。最晩年にはチェロ協奏曲(山田和樹が日本フィルを振って、横坂源のチェロ独奏で演奏したことがある)とピアノ協奏曲を作曲した。
「シェルブールの雨傘」は高校時代か大学時代に観たことがある。若い二人の甘い純愛物語だが、人生の苦みが加わる点がフランス映画の伝統を感じさせる。物語の背景には当時のアルジェリア戦争がある。アルジェリアがフランスと戦い、独立を勝ち取った。「シェルブールの雨傘」はその直後に制作された。
(2025.1.25.横浜みなとみらいホール)