平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

バットマン ビギンズ

2007年10月06日 | 洋画
 正義と悪についての考察が面白い。

★まずは正義と復讐
 復讐に燃える青年ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)に女性検事は言う。
 「正義と復讐は違うのよ。正義は秩序のために。復讐は自己満足のために」
 なるほど!
 この物語はブルースが「バットマン」にたどり着くまでの物語だから、こういった迷いも起こるのだ。

★悪
 街を支配しているマルコーニ。
 判事ら街の要人を配下に組み入れ、例えばレストランでブルースをマルコーニが殺したとしても処罰されない絶対の権力者。
 しかも街の要人を配下に置けているのは、賄賂を送っているからではない。恐怖で言うことを聞かせている。
 おおっ、見事な悪の設定だ。
 これでマルコーニの絶対的な悪が伝わる。
 まさにゴッサムシティは「悪が栄え善人が脅える世界」。
 マルコーニはさらにブルースに言う。
 「君には理解できない世界だよ。理解できないものを人は怖れる」
 これも含蓄のある言葉。
 例えば賄賂で言うことを聞かせているのなら、理解できるし対処も考えられる。
 しかしそうでなければ。
 人を襲うホラー映画のモンスターも理由がわかっていれば、そんなに怖くないが、理由なき殺人者であったら。
 不可解こそ人間の恐怖の根源なのだ。

★善悪の迷い
 ブルースは世界を放浪して迷う。
 悪を行って成功した時の快感。
 貧しくて盗みをしてしまうことは悪なのか。
 善とは?悪とは?
 これもバッドマンに至るために考えなくてはならない思考。
 正義のヒーローは安易に正義にたどり着いてはいけないのだ。

 この様にこの作品では「正義と悪」とは何かついて深く考察されている。
 あと面白かったのは以下の2点。

★恐怖の象徴
 悪と戦うためには生身の人間ではなく象徴的な存在にならなくてはならないと考えるブルース。
 悪人に恐怖を与える様な存在。
 地下洞窟に落ちて自分が恐怖を味わったこうもりの群れ。
 バットマンの誕生。

★悪を越えるもの
 ヒマラヤの奥地の“影の同盟”。
 彼らは「大きくなりすぎた森は山火事を起こして小さくなるように、腐敗した街を滅ぼさなくてはならない」と考える存在だ。
 街を滅ぼすことで、それが宣伝にもなり他の街における悪の抑止にもなると考えている。
 彼らは神とも言える意思の実践者。
 その発想は「ユダヤ人の虐殺」、「地球を破滅に導く腐敗した人間を滅ぼす」といった発想に通じるものがある。
 悪の設定としては、マルコーニよりも大きいし怖い。

 この作品、単なるヒーローものではない。


コメント
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