平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

昼下がりの情事

2007年10月09日 | 洋画
★主人公アリアンヌ(オードリー・ヘプバーン)の父親の職業が『探偵』であることが物語をおしゃれにしている。

 例えば父親の扱う不倫などの事件について、父親は『醜いスキャンダル』と考えるが、アリアンヌは違う。
 『素晴らしいロマンス』!!

 アリアンヌはプレイボーイのフランク・フラナガン(ゲーリー・クーパー)と対等につき合うため、19人の男と遊んだパリの女を演じるが、男性経験を語る彼女のベースになっているのは、父親の捜査資料。

 こんなエピソードもある。
 父親が事件で預かった白テンのコート。
 アリアンヌはこのコートを着て、フラナガンに会いにいく。
 これでアリアンヌは金持ちのお嬢さんを演じられるわけだ。

 物語の展開がすべて父親の職業(探偵)からなされている。
 これはアリアンヌの正体がバレる時も同じ。
 アリアンヌに夢中になったフラナガンは彼女のことを調べてもらうために探偵(父親)の所に相談に行く。
 父親はフラナガンが探しているイニシャルAの女の情報を聞いているうちに、女がアリアンヌであることに気づく。
 実に見事なシナリオだ。

 これは登場人物の職業を安易に設定してはいけないという好例。
 アリアンヌは音楽学校の学生でチェロを演奏しているが、これもうまく使われている。
 チェロのケースの中に白テンのコートなど、様々なものが入れられる。
 チェロの練習をしながら、楽譜の後ろにフラナガンの新聞記事を隠して読んでいるアリアンヌ。
 フラナガンが原因で自殺騒ぎが起こったなどという記事を読むと動揺してチェロの音が狂う。
 実にうまい。

★楽しいシーンはここ。
 アリアンヌが19人の男性とのことを吹き込んだテープを聞いているフラナガン。
 気になって何度も何度も聞く。
 それで風呂の水が溢れ、酒を載せたキャスター付きの台をワルツ演奏家と行き来させているうちに、演奏家たちは酔っぱらって寝てしまう。
 悩むフラナガンを実におしゃれに描いている。
 ビリー・ワイルダーの作品はみんなおしゃれだ。

★会話も気がきいている。
 先程の探偵絡みではこんなせりふ。
 ボーイフレンドの家のことを調べた父親にアリアンヌは「過保護だ」と文句。
 すると父親は言う。
「私がインドの王侯ならダイヤで飾ってやる。靴屋なら靴を作ってやるだろう。私は探偵だから調査するしかない」

 フラナガンとの会話にもこんなものがある。
「パリの女は泣かないの。一度、泣いたけど。14号と別れた時。車のドアに指をはさまれたの」

 決めせりふは列車でフラナガンと別れるシーン。(以下、ラストネタバレ)





 「あたし、全然平気だから」
 本音とは180度違う見事な心情の吐露。
 結局フラナガンはアリアンヌを列車に乗せてNYで結婚するのだが、その時の父親のコメントも気がきいている。
 「フラナガン氏はNYの教会で、終身刑の判決を下された」


コメント
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