平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

医龍2 カルテ3

2007年10月26日 | 職業ドラマ
★手術シーンはサスペンス
 この作品での手術シーンはハラハラドキドキのサスペンスシーンでもある。
 まずは不安。
 荒瀬(阿部サダヲ)なら60分の所、90分かかる麻酔医師。(マイナス要素)
 野口(岸部一徳)の謎の言葉「その手術は失敗するよ」
 これらで不安を煽っておいてトラブル発生。
 ガーゼオーマ(手術時の止血ガーゼの取り忘れ)。
 これの摘出を行うが、懸念されていた麻酔医の技量が露呈。
 麻酔深度が浅くて出血。
 パニックになる外科医の外山誠二(高橋一生)。
 「この麻酔医では持たない」と判断した朝田龍太郎(坂口憲二)の指示で、もうひとりの麻酔医・小高七海(大塚寧々)が呼ばれるが、なかなか来ない。
 「これ以上圧迫すると血圧を維持できません」といったまわりの人間の言葉がさらにサスペンスを作る。
 『不安要素』『トラブル』『パニックになるキャラ』『動かないキャラ』がハラハラドキドキを煽る。
 まさにサスペンスドラマだ。
 この中で冷静に判断し対処できる人間がキャラとして光を放つ。
 朝田、そして遅れてやって来た小高がそうだ。
 小高はまごつく若い麻酔医に的確な指示を出した。

★医療ドラマのテーマ
 朝田龍太郎と鬼頭笙子(夏木マリ)の会話は医療ドラマの究極のテーマでもある。
 すなわち「目の前の苦しんでいる人を救うか、10年後に1万人の人を救うか」
 才能についても。
 「人間には与えられた才能がある。与えられた才能を使わないのは罪」
 朝田を「自分の腕を磨くことにしか興味のないエゴイスト」であってほしいと願う鬼頭。
 この対立の中で朝田と鬼頭のキャラの描き分けがなされる。
 すなわち鬼頭はリアリスト(理論)で朝田はロマンチスト(感情)。

★「金で人の心は買えるか?」
 第3話のテーマはこれ。
 ガーゼオーマの医療ミス、執刀医は野口だが、それを若い医師に押しつけて隠蔽。
 告発しようとする朝田らに片岡一美(内田有紀)が対応。
 被害者西沢への謝罪と見舞金200万円。
 医療裁判には時間がかかる。お金もかかる。
 明真は優秀な弁護士を用意してくるから、勝てる要素は少ない。
 老齢なのに何度も裁判所に足を運ばなくてはならない。
 西沢の奥さんの容態も悪い。いっしょにいてやらなくていいのか?
 裁判などに貴重な時間を使っていいのか?
 
 こう言われて告発をしないことにする西沢。
 「人は結局は目先の利益、理念では動かない」とほくそ笑む野口。
 「ビジネスはお互いが得すること」と持論を展開する片岡。

 しかし、このふたりとは違う理由で西沢は告発をしなかった。
 しなかったのは、妻と過ごす時間が欲しかったから。
 西沢は見舞金の200万を返す。
 藤吉圭介(佐々木蔵之介)を通して片岡に言う。
 「こんなものは受け取れません。あなたに心配していただかなくても妻は元気です」
 金で動かない人間の尊厳。
 これで視聴者は溜飲を下げる。
 敵に取り込まれたと思わせておいて逆転する。
 見事な作劇だ。

※追記
 「手術は掛け算。ゼロを掛ければ、ゼロになる」
 こう語る鬼頭に荒瀬は言う。
 「ゼロどころかマイナスじゃないか。だが、マイナスとマイナスを掛ければプラスになる」
 これはどういうことか?
 次回への引き。
 「戻ってきたな、小高七海」と荒瀬が言って、スローモーションで歩いてくる七海がかっこいい。

※追記
 ダメダメと思われていた外科医・外山が優秀。
 視聴者の予想を裏切るキャラ作り。
 うまい!


コメント
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