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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

14才の母 第4話

2007年11月20日 | ホームドラマ
 第4話 「旅立ち 私はもう泣かないよ」

★覚悟
 子供を産むことにした未希(志田未来)。
 まわりの反対。
 学校での大騒動。
 それでも産みたいと思う未希の行き着いた結論とは……。

「生まれて来た時はひとりだけ。
 だから寂しいのは当たり前。
 寂しくても大事なものがあればがんばれる」

 一人で生きていく覚悟。
 この覚悟を持った人間はきっと強い。
 未希がこの言葉につけ加えて「でもお母さんだけは見捨てないでね」と言う所がせつないが、自分の弱さに振りまわされそうな時は思い出したい言葉だ。
 また14才の女の子がこの結論に行き着いたのもすごい。
 おそらく真剣に自分自身と向き合ったためだろう。
 日常生活ではその平和に埋もれて、自分自身やまわりと真剣に向き合うことをしないでいる。どう生きるかを考えずにいる。
 さて自分の人生にとって何が大切なものであろうか。

★魂の叫び
 未希の決心に母・加奈子(田中美佐子)は本気になる。
 このシーンの田中さんの演技はすごい。
「絶対ダメよ。恨まれようと賛成できない。本気で反対するわ。子供に対して無責任。人生も180度変わるわ。未希が出産で死ぬかもしれない。命と引き換えに生むことに納得できる理由を言いなさい!」
「どうしてこんなことで泣くの?産めばこれからもっとつらいことがあるんだよ」
 未希のことを考えての魂の叫び。
 こんな叫びに心動かされない人間がいるだろうか?
 
 このドラマは魂のぶつかり合いを見せてくれる。

★人の繋がり
 真由那(谷村美月)は人間の繋がりなどもろいことを知っている人間だ。
 未希の妊娠を知って揺れるクラス。
 学校の名に傷がつく。自分たちも変な目で見られる。
 久保田恵(北乃きい)がその先頭に立って非難する。
 それに対して真由那。
「やっぱり友達っていないんだなって思った」

 恐らく真由那の言っていることは正しい。
 人の繋がりなど何かがあれば簡単に吹き飛んでしまう。
 それが現実だから、未希と母、未希と父の堅い繋がりが感動的になる。
 後に絆をつよくする恵、先生(山口紗弥加)弟らとのエピソードが感動的になる。
 この作品は人と人の繋がりの物語でもある。

★真由那
 それにしても真由那、かっこいい。
 クラスに来て産むことを告げた未希を非難するクラスメイトたち。
 真由那は言う。
「話を聞いてやろうよ。このバカ、産みたいって言い出したりして、何でだか知りたくない?」
 以前産婦人科医(高畑淳子)を例に出して、他の人間と違うスタンスの人間はかっこいいと書いたが、真由那もいい例。
 未希とは距離をおいているが、理解して認めている。
 そんなキャラは魅力的だ。


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風林火山 第46回 「関東出兵」

2007年11月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 第46回 「関東出兵」

 今回は長尾景虎(Gackt)の狂気。
 自らを神仏の使いと考える『天の人』が陥りやすい傲慢。
 それは晩年の信長にも通じるもの。
 自分のすることはすべて天の意思。
 それに逆らう者は外道、成敗されるべき者。

 景虎は行動の動機が違う。
 長野業正との会見。
 旧主・上杉憲政(市川左團次)との再会を喜ぶ業正に景虎。
「これからはわが家臣である」
 景虎は憲政の子となったのだから理屈では正しいが、人の情としては喜ぶ業正の気持ちを考えてあげてもよさそうなもの。
 景虎は理屈から入る。
 天皇、将軍の秩序は天の意思。
 それら天の意思によって憲政の子となったのだから、業正を家臣であるという理屈は正しい。
 こんなやりとりもある。
 憲政の長男の仇討ちが出来るという業正に景虎。
「これは仇討ちではない。天の命ずる所」

 また景虎は北条氏康(松井誠)のことを「外道」と呼ぶ。
 氏康にも子があり家臣がある人間なのだが、そこに思い至らない。
 それは常に人間から発想する『地の人』、勘助(内野聖陽)、信玄(市川亀治郎)らと大きく違う。
 勘助らなら、業正と憲政の再会を喜び、仇討ちを奨励しただろう。
 それは由布の忘れ形見・四郎(池松壮亮)が元服した時の喜びの描写でもうかがえる。

 昨年の「功名が辻」で「迷うが人」という言葉があったが、人は迷う。
 勘助も信玄も復讐や恐怖にとらわれ迷った時期があった。
 そして今でも迷っている。
 それが人間の立場。
 しかし景虎は迷わない。
「神仏のご加護は我にある」
 おのれの力を信じ、歯向かう者は悪、容赦なく殲滅する。
 景虎の立場は純粋で高潔だが、信念が過ぎると狂気になる。
 小田原城の城門前に単身やってくる景虎。
 酒を盃に戴く。
 打ちかけられる矢も鉄砲も彼には当たらない。
 彼には信念があり、人間が持つ恐怖や不安がない。
 これが人間である氏康に化け物と映るのは当たり前であろう。
 氏康は言う。
「何者じゃ? 我々はあの様な敵と戦っているというのか?」

 人と人は時に裏切り憎み合いもするが、愛と信頼で関係を結ぶ。
 しかし天を絶対と考える景虎は人と人との繋がりなどどうでもいいこと。
 その辺で成田長泰(利重剛)と争いが起きそうだ。


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冬のソナタ 第15話

2007年11月18日 | テレビドラマ(海外)
 第15話「過去への旅路」

★記憶
 記憶をめぐる対照的なふたつの想い。
 記憶を取り戻そうとするミニョン(ペ・ヨンジュン)。
 記憶を消そうとするサンヒョク(パク・ヨンハ)。

 ミニョンはユジン(チェ・ジウ)との記憶を取り戻したい。
 ふたりの空白の時間を埋められるから。
 チュンサンとの思い出を大事にしているユジンと想いを共感できるから。
 ミニョンは言う。
 「君のためにチュンサンに戻りたい」
 記憶を求めてチュンチョンへ行くふたり。

 一方サンヒョク。
 ユジンが失われた今、彼女との思い出はもはやつらいものでしかない。
 ユジンとの思い出はつらいものが多かったけれど、輝いていた瞬間もあった。
 レストランで婚約指輪をはめた時。
 病院で看病をしてくれた時。
 車の中でふざけ合った時。

 記憶、思い出というのは人と人をつなぐ絆。
 それが失われれば絆はなくなってしまうし、愛し愛された記憶、思い出が積み重なれば強くなる。
 今回は絆をなくすために思い出をなくしてしまおうとするサンヒョクが哀しい。
 「僕は君との記憶を消そうとしている。もう行って。二度とチュンサンを失わせたりしないから。もう(僕と会って)優しく話しかけたり泣いたりしないで」

 作品中では記憶を呼び起こすいくつかの小道具が提示される。
 手袋。ユジンが寒いだろうと言って貸してくれたもの。
 ユジンの授業中に書いた手紙。昔の自分に再会する。
 その時の光景が脳裏に甦る。
 これらの道具はタイムマシーンの様なもの。
 これらを手にした瞬間、過去にタイムスリップできる。
 
 そして記憶に関する結論。
 すべてを思い出せないチュンサンにユジンは言う。
 「思い出を探すのはやめましょう。愛しているのは記憶の中のチュンサンではなく、目の前のあなただから」
 過去は絆を考える上で大切なものだが、何より大切なのは『今を生きること』『未来に生きること』。
 これが記憶に関する結論。

 しかし物語のオチも用意している。
 大晦日、会うはずだったチュンサンがユジンに伝えたかったこと。
 これを現在のチュンサンは思い出す。
 「愛してる……」
 ベタだけどこれでドラマが締まる。 

※追記
 記憶を取り戻すために塀越えのシーンを再現するふたり。
 ユジンがチュンサンの上に乗っかって、チュンサンいわく。
 「昔もこんなに重かった?」(笑)

 雪のない昔ふたりがキスをした場所。
 「ここは何をした場所?」と聞くユジンは結構ダイタン。
 チュンサンが思い出せないでいると、キスをした場所と教える。
 こうなるとチュンサンは男。顔を近づけて
 「どんなふうに? こんなふうに?」
 と言ってキス。
 
 それにしてもユジンはよくバスで寝る女性だ。
 チュンチョンに向かうバスの中でも居眠りをした。
 ここまで再現したのか?


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14才の母 第3話

2007年11月17日 | ホームドラマ
 第3話 「さよなら…私の赤ちゃん」

★父の愛、母の愛

 危機の中で見えてくるものがある。
 平和な日常生活で「愛している」「大事に思っている」と言ってもなかなか伝わらないが、危機の中で出る言葉は真実だ。
 
 子供をおろすために病院に向かう未希(志田未来)たち親子。
 雨。
 父親の忠彦(生瀬勝久)は信号待ちの時言う。
「お前が生まれた時は晴れていた。こんな嬉しい時に晴れているなんて俺の人生もまんざらじゃないなと思った」
 未希が生まれた時の喜びを素直に話す忠彦。
 そして続ける。
「お前が生まれた時からずっと味方だから。いろいろ言ったけど心配することなんてない」
 どんなことがあっても自分は未希を愛し続けるという表明。

 母・加奈子(田中美佐子)も未希といっしょのベッドに入って言う。
「いっしょに寝てあげる。世界で未希のことが一番大事」
「こうやって生まれてきたのは奇跡。この子に出会うために私は生まれてきたんだと思った」
 多くの哲学者、宗教家、文学者が『人生の意味』を小難しく語っているが、加奈子は自分の人生の意味をこんなふうにやすやすと語ってみせる。
 子を愛し育てる。
 受け継ぐ生命を残して死んでいく。
 生命の連なり。
 人生の真理とは実はシンプル。

★「この子に出会うために生まれてきた」

 未希もこの母の言葉に深く共鳴したらしい。
 純粋にこの真理のために生きようと思う。
 お金や名誉、社会的な成功……、そんなものは幻。枝葉末節。
 一番大事なものは愛する子供。
 そのことに気づく未希。
 彼女にはDJになる夢があったが、DJになることと生まれてくる子供、子供の方が大事だと思う。
 子供をおろして忘れることなど出来ない。忘れて幸せなんかになれない。

「この子に出会うために生まれてきた」
 このせりふは深い。
 この一言で14才の未希は『母親』に変わる。
 『母親』の強さも持つ。
 周囲の目に曝される。
 友達も引く、学校もやめなくてはならない。
 子供に出会うことは今までの自分を捨てること。
 それでも会いたい。
 風に立ち向かう覚悟。 

 僕などの俗物は周囲の大人の意見、「子供を育てるのは大変なこと」「経済的な負担はどうするんだ」と言ったものに傾いてしまうが、一方で未希の純粋な想いと覚悟が気にかかる。
 突きつめて考えてみなければと思ってしまう。

※追記
 未希が「嫌いじゃない」と言った智志(三浦春馬)に気持ちを確認する時のせりふ。
 「嫌いじゃないけど好きでもない? 嫌いじゃないのイコール(=好き)?」
 智志は答える。
 「イコールの方」
 かわいいやりとりだ。

※追記
 週刊トップの波多野(北村一輝)のせりふ。
 「スキャンダルをほじくりだして埋めるのが三流週刊誌のプライド」。
 三流週刊誌なりにプライドはあるのだ。
 波多野の生き様でもある。

※追記
 相変わらず産婦人科医・春子(高畑淳子)はかっこいい。
 おろしにきた未希に
「ずいぶん苦しんだね。でも間違った結論じゃない」
「出産は命がけ。勉強や世間の目はどうにでもあるけど、あなたが死んだらどうにもならないでしょう」
 こう言われて苦しんだ未希はどんなに救われたことか。
 他人の気持ちを理解して適切なコメントを述べられるキャラは魅力的だ。


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医龍2 カルテ6

2007年11月16日 | 職業ドラマ
 カルテ6は外科医の外山誠二(高橋一生)の物語。
 外山はこんな人物。

★コンプレックス
 名門医師家族の末っ子である彼は常に父親や兄たちと比べられてきた。
 まわりが優秀過ぎるがゆえ、試験で90点をとっても認めてもらえない。
 父親は臨床よりも論文に評価の基準を置いている様だ。だからどんな見事な手術をしてもほめてもらえない。
 気にくわない先輩を殴って北洋に左遷されたこともコンプレックスの要因になっている様だ。
 そんなコンプレックスは満たされようとして、常に他人の上を行こうとする。
 当面のライバルは朝田(坂口憲二)。
 外山は朝田より速い手術をして優位に立とうとする。
 また外山のプライドの高さはコンプレックスの裏返しだ。
 コンプレックスが大きいから他人を寄せつけず自分を大きく見せようとする。
 そんな虚勢は弱く折れやすいのだが。
 
★居場所
 そんな外山の居場所はおばあちゃん。
 彼のおばあちゃんは「飯を食っても。泥だらけになってもほめてくれた」。
 家では居場所のなかった外山の唯一心休まる場所。
 そんな過去は自分が手術したおばあちゃん、五代明代(草村礼子)に向けられる。
 かつて祖母がそうであった様に「今は立派」とほめる明代に祖母の面影をみる。

★そんな外山に試練。
 明代の容態急変。
 手術で雑な処置をしたことが原因。
 折しも台風。病院は停電。
 朝田は手を負傷。
 折れそうになる外山。
 そこへ朝田の言葉。
「お前の患者なんだ。お前に責任がある。最後まで逃げるな」

 懐中電灯を使っての手術。
 ここで外山の転機が訪れる。
 自分の手術のために力を貸してくれる仲間たち。
 手動で電力を起こし、手術では的確なフォロー。
 明代の言葉が甦る。
「人間はひとりで生きられない。誰かに支えられて生きている」
 その言葉を実感する外山。
 チームの力。

 さらに外山は明代の別の疾患にも気づく。
 触診。
 これは患者を自分の手術の凄さを見せるための道具としてみていたのでは出来ない行為。
 患者に愛情があるから気づくことが出来る。
 外山はもうひとつ大事なことを教えられた。
「右心室の動きが悪いようだ。朝田、どう思う?」
「伊集院、頼む」
 いずれも感動的なせりふだ。
 患者を救うために他人を求めている。
 プライドを捨てた瞬間、コンプレックスがなくなった瞬間。

 手術が終わって外山は朝田に言う。
「チームに入れろ。第二助手でも第三助手でもいい。俺の術式を見れば執刀医を譲りたくなる」
 後半の『執刀医を譲りたくなる』はプライドの高い外山らしいせりふ。
 そして仲間についても言及。
「あいつらとオペがしたい」
 外山はチームの温かさを知ったのだろう。
 チームに力を与えられたのだろう。
 もはや彼は孤独ではない。
 どんな困難な状況でも仲間がいる。
 彼のひとりの戦いは終わった。

※追記
「すべて私の責任です。すみませんでした」
 自分の雑な手術を土下座して謝る外山。
 これを今の厚生労働省のお役人と製薬会社の人に見てほしい。見習ってほしい。
 C型肝炎、フェブリノゲン。
 現実の人間は誰も責任をとろうとしない。

 現実とは違う対応をするところにドラマの力がある。


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冬のソナタ 第14話

2007年11月15日 | テレビドラマ(海外)
 第14話「二度目の事故」

★恋愛ドラマは走る。
 まずミニョン(ペ・ヨンジュン)がチュンサンであることがわかる。
 「初めて」のCDの中の手紙。
 「チュンサンみたいにテープには録音できなかったけど」
 ユジンとチュンサンしか知らない事実。
 空港へ走るユジン(チェ・ジウ)。
 しかしなかなかめぐり会えない。

 恋人を求めて走ることとすれ違いは恋愛ドラマの王道。
 ベタだけど感情移入してしまう。
 ふたりがめぐり会うきっかけも面白い。
 どうふたりを出会わせるかは作者の腕の見せ所。
 脱げた女の子の靴を履かせるミニョン。
 ここで立ち止まったことでユジンが追いつく。
 それにしてもこの作者は靴を履かせるのが好きだなぁ。
 高校時代、靴を履かせた行為をここまで引っ張るとは!

★チェリンが哀しい。
 ミニョンがチュンサンであることを知ってしまったユジン。
 しかしチュンサンは交通事故に遭い意識不明。
 懸命に看病するユジンにチェリン(パク・ソルミ)は入り込めない。
 ミニョン(チュンサン)が意識を取り戻せば、ユジンたちはふたたび……。
 そう考えるチュリンはサンヒョク(パク・ヨンハ)に振り絞る様に言う。
「なぜみんなユジンばかりが好きなの? なぜ私のことが嫌いなの?」
「なぜ私の好きな人は私を好きにならないの? なぜ私を必要としないの?」
 なかなかせつない。
 それを黙って聞いているサンヒョクも同じ想いであったろう。

 人と人が出会うのって大変だ。
 まして心通じ合わせるのは……。
 ユジンとチュンサンの様な『運命の人』どうしであってもこんなにすれ違い、困難が訪れる。
 運命はふたりが真に結ばれるべきかどうか試練を与え、試しているかの様だ。
 そしてチェリンとサンヒョク。
 空いているジグソーパズルの穴に無理やり自分をはめ込もうとしてもダメ。
 きつくてつらい。
 チェリンやサンヒョクがつらいのは無理にはめ込もうとしているから。

 これが『冬のソナタ』の根底に流れる恋愛観。
 ポラリス(北極星)、ジグソーパズルも全部これらの暗喩。

 以前にも書いたが、この作品の人物たちは数ある星の中で自分のポラリス探しをしている。

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14才の母 第2話

2007年11月14日 | ホームドラマ
 第2話 「お前なんかもう娘じゃない」

★妊娠発覚! 平和な日常が崩れる時。
 未希(志田未来)の妊娠発覚のシーンは大きな見せ場。
 特に娘を持つお父さん、お母さんには自分の問題として感情移入できる場面だろう。
 きっかけは未希の部屋を掃除する加奈子(田中美佐子)。
 妊娠検査薬。
 加奈子が「買ったの?」と問いつめると未希。
 「買ってない」
 これで加奈子は友達にでも興味半分でもらったのだろうと安心するが、さらにショッキングなことを聞かされる。
 「万引きした」
 さらに。
 「妊娠しているかどうか知りたかったから」
 平和な日常が崩れる瞬間。
 うまいせりふのやりとりだ。会話だけでもショッキングなシーンが作れるというお手本。
 加奈子はまだ現実を受け入れられない。
 誰かに強姦された?と聞く。
 14才の娘がセックスするわけがないという想い。
 しかし未希は「好きな人がいるの。だから」
 それでも母親は強い。
 現実を受けとめ、翌日病院に連れて行く。
 一方、父親、忠彦(生瀬勝久)。
 ひたすらうろたえる。
 「冗談だよな」
 見せられる診断書。
 「手の込んだ冗談だよな」
 やっと現実を受けとめると
 「どういうことだ!?」「誰だ!?」
 智志(三浦春馬)の名をくん付けで言うと「桐野くんじゃないだろう!」
 「私たち好きだから」と言うと「そんなものは勘違いだ!錯覚だ!」
 ひたすら叫ぶ。
 こういう時、男親は弱い。
 母親、父親のリアクションの描き分けが見事。

 日常が崩れて親子が本音でぶつかり合う。
 ここにドラマが生まれる。
 平和な日常が偽りで、何かが起きれば簡単に崩れてしまうものであることがわかる。
 
 智志の母親、静香(室井滋)に会いに行った時も男親、女親は対照的だった。
 怒りにまかせてやって来たのは忠彦。うまく言えない。
 しかし冷静に話をしたのは加奈子。
 「娘と智志さんのことで来ました」
 母親は強し。

★産婦人科医・春子
 脇キャラとして産婦人科医・春子(高畑淳子)は圧倒的存在感。
 やって来た未希たち母子に、こんな事例を他にも見てきたのだろう、冷静に対処。
 機械に映った胎児を見て「確かにいるね。9週目」
 「好きで結ばれたってことね?」
 「相手には言った? 自分だけが背負うのは間違いよ」
 「中絶手術は12週目までが安全。父親の同意書が必要」
 誰もがパニックする中で冷静なキャラがいると存在感が出る。
 客観的な立ち位置で船の進むべき道を示すキャラは頼もしい。
 キャラの立て方のお手本。
 
★頬を打つ母親
 病院から出て来た未希と加奈子のやりとりも感動的だ。
 「怒るなら怒っていいから何か言ってよ」
 不安な未希はどんなことでもいい、言葉を待っている。
 頬を叩く加奈子。
 そして抱きしめる。
 加奈子の気持ちがよく伝わる。
 頬を叩くことと抱きしめることは相反する行為だが、いずれも未希への愛情から出た行為。 

★再び本音について
 こうして本音でぶつかり合う様になった未希たち親子。
 その前に柳沢真由那(谷村美月)のこんなせりふがある。
 真由那(谷村美月)はクラスメイト達にこう言う。
 「大人の顔色うかがって要領よく生きているやつ。本気で人を好きになったことなんてないでしょう?」
 クラスメイト達はぼんやりした日常の中に住んでいる。
 一方、日常の取り払われた未希達親子は?
 本音でぶつかり合って、お互いの愛を確かめ合うことが出来た。
 未希は本気で赤ん坊のことを考えて愛とは何かを考えることが出来た。
 ここにこの作品のテーマがある。


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14才の母 第1話

2007年11月13日 | ホームドラマ
 第1話 「中学生の妊娠…ごめんね、お母さん」の再放送を見る。

★キャラクター描写
 まずは主人公一ノ瀬未希(志田未来)。
 家族、友達に恵まれすべてに調和した生活。
 ちょっとはみ出したい年頃。
 放送部。空がきれいで初めて午後の授業をふける。

 一方、桐野智志(三浦春馬)。
 母親の期待で抑圧されている。
 息苦しい。自由になれないでいる。
 空が青いことを考えるのは、空を見上げるのは解放されたいから。
 しかしあくまで枠の中にいる。
 未希は智志の心の陰が気になり、智志は未希の存在に解放される。
 犬を助けて川の中に飛び込むことなど、今までの彼の生活では考えられなかったことだろう。
 この辺のキャラクター描写、実に巧みだ。

 こんな描写もある。
 いいお金の使い方を教えるために5万円を渡す智志の母親。
 智志は未希に尋ねる。
 5万円あったら何をする?
 「どこか遠くへ行く。行ける所まで」
 彼らは大人になろうとしている。家から出たいと思っている。

 月のシーンは少しファンタジック。
 不良に負われて「全力疾走して暴れるのも結構楽しかった」と笑う智志に未希。
 「キリちゃんが笑うと楽しくなる」
 心を開いたふたりは横になって月を見る。
 「月の空は空気がないから真っ黒。暗い」と未希が言うと智志。
 「ずっと暗かったたらそれがあたりまえだから寂しくない」
 「よしよし」をする未希。

 さすが井上由美子脚本。
 
★展開
 未希が妊娠してからは彼女の不安を丹念に描く。
 テロップ「二ヶ月後」
 部屋のカレンダー。
 未希に変化。
 母・加奈子(田中美佐子)が大声で「いってらっしゃい」と言うのを嫌がる。
 体育を休む。
 取り出して読む保健体育の教科書。
 柳沢真由那(谷村美月)の「あんたたちだってやれば子供できるしね」という言葉。
 行為のあった日、手帳に貼り付けたプリクラ→小道具。
 妊娠してお腹の大きい女性。
 ネットの妊娠チェック。
 父親の昇進を喜んでやれない未希。
 智志にも遠回し。
 「あれからよく謝るね」「子供好き?」「結婚はいつ頃したい?」
 妊娠検査薬。
 財布には千円しかなくて万引き→未希の切羽詰まった感情がよく伝わる。
 検査薬の結果。
 トイレから出て来ない未希。

 この間、妊娠という言葉は未希から一言も出て来ない。
 未希が「赤ちゃんが出来ちゃったのかしら」とでも言ってしまったらさぞ興ざめだろう。
 ここは何も言わないから未希の気持ちが伝わってくる。
 見事な感情描写だ。

★大人になるということ
 「初めて自分がひとりだって感じた」という未希のモノローグが印象的だ。
 大人になるとはひとりであることを認識することだからだ。
 すべてに調和していた子供の世界から孤独な大人の世界へ。
 それを1話、60分の間に描ききった。


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風林火山 第45回 「謀略!桶狭間」

2007年11月12日 | 大河ドラマ・時代劇
★桶狭間に勘助(内野聖陽)が一枚噛んでいたとは!
 歴史のifの遊び。
 生きている証言者はいないのだし資料にも残っていないのだから、どう解釈してもいい。
 そう言えば「半蔵の門」という劇画では、服部半蔵が武田信玄を殺したことになっていたっけ。襲いかかる信玄を食い止めるため家康が半蔵に信玄暗殺を命じたのだ。

★さて勘助。
 寅王丸の一件で今川と長尾が手を結ぶことを怖れている。
 寅王丸を惑わせ死に至らしめた怒りもある。
 進軍する今川に織田がどう対処するか考える勘助。
 勘助なら桶狭間で迎撃する。
 織田の武将が桶狭間を探索していることを聞き、織田の意図も同じであることを知る。
 ではどうやって義元(谷原章介)を桶狭間におびき寄せるか?
 勘助は進言する。
 信長は籠城でなく討って出る。清洲城へ向かえ。
 正しい進言だが、義元は自分の言ったこととは反対のことをするだろうと読んでいる。
 この駆け引きと謀略。
 このドラマにはその楽しさがある。昨年の正直者の一豊様とは違う楽しさ。

★桶狭間の描写は間接描写。
 まず信長を敦盛を舞わせるイメージシーンだけで登場させない。
 地図の上だけのいくさ。
 勘助と寿桂尼(藤村志保)の会話を挿み、銃口が向けられる義元のアップ。
 やって来る使者。何かを寿桂尼に告げている。
 寿桂尼は「大義であった」と使者を帰し、「桶狭間……」とだけつぶやく。
 切れて転がる数珠の珠。
 こららのシーンの積み重ねで義元の死を表現する。
 これはこれでおしゃれな作り。
 武田が主人公のドラマであるからこれくらいの間接描写の方が妥当。

★それにしても母は哀しい。
 戻ってきた義元の首。
 岡部元信が叫ぶ。
 「お館さまのご帰陣でございまする!」
 寿桂尼は気丈に振る舞い、「武田、北条の動きに備えよ」と告げるが、ひとりになると義元の首級に涙。

 義元の傲慢と驕り。その結果もたらされた悲劇も的確に描かれている。


 
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冬のソナタ 第13話

2007年11月11日 | テレビドラマ(海外)
 第13話「追憶」

★恋愛ドラマの王道

 今回はユジン(チェ・ジウ)とミニョン(ペ・ヨンジュン)をさらに引き離す。

・ユジンはミニョンがチュンサンであることを知らない。
 だから誤解がどんどん生じていく。
 ユジンは「自分がチュンサンだ」と言って思い出に入ってきたミニョンのことが許せない。

・サンヒョク(パク・ヨンハ)とチェリン(パク・ソルミ)は、高校に調べに行ったユジンの邪魔をするなど、ミニョン=チュンサンであることを隠そうとする。
 サンヒャクなどは「愛しているのならなぜ彼女を苦しめるのですか?彼女はチュンサンのことで10年間苦しんできた。ずっとイ・ミニョンでいて下さい」とミニョンに諦めることを説く。

・おまけにこの作品の作者はさらに意地が悪い。
 ユジンとミニョンはチュンチョンの同じ学校にいるが、すれ違って出会うことはない。
 ミニョンと話をしに出掛けようとするとお母さんが倒れてしまう。
 花嫁衣装の試着。靴を履かせるミニョンにユジンは昔のことを思い出してドキッとするが、ミニョン=チュンサンだとは思わない。
 サンヒョクの父の言葉もユジンに疑問を抱かせるが確信には至らない。
 放送部の詩の朗読、「初恋の人がまた私を呼んだら、私はどうしたらいいのでしょう?」
 この朗読にユジンは心揺さぶられる。

 これらのことで視聴者はやきもきするわけだ。
 本来結ばれるべき運命のふたりが誤解や障害で結ばれない。
 恋愛ドラマの王道。
 最近では「花より男子」、古くは「君の名は」(←本当に古い!)。
 自分たち視聴者は真実を知っているのにテレビの中の主人公達は気がつかない。
 そんな状況もやきもきを増幅させる。

★ミニョンの決断

 それにしても過去の自分の記憶がないというのはどんな感じなのだろう。
 ミニョンは過去の自分、チュンサンを追い求める。
 ユジンとの電話でミニョンはチュンサンに暗い影があったことを知る。
 今の自分とは正反対の非社交的で人間関係に無器用なチュンサン。
 ユジンから見ると危なっかしくて、心から笑うことのなかったチュンサン。
 母親のミヒとの会話では、チュンサンは父親を求め、ミヒを憎んでいたことを知る。
 そしてユジンとの思い出。
 ユジンからの手紙。
 「放送部さぼったらひどい目に合うからね。塀を越える時助けてくれてありがとう。私、こんなふうに授業中に手紙送るの初めてなの。光栄でしょ?」
 ユジンに吹き込んだテープ。
 何度も何度も失敗して。
 しかし、これらは記憶の断片でしかなく想像するしかない。
 
 結局、彼はミニョンとして生きることを選ぶ。
 彼はサンヒョクに言う。
 「僕はミニョンで十分です。チュンサンの人生は諦めました」
 そしてアメリカへ帰る決意。

 今回はミニョンの葛藤する心を真っ正面から描いた。
 ミニョンという人物をひとつ深く描いた。
 これで視聴者はよりミニョンに感情移入できる。
 ドラマは片一方からだけで描いたのでは片手落ちだ。
 これでクライマックスに向かって一気に突っ走れる。


※追記
 今回の小道具はユジンの手紙とユジンに吹きこんだテープ。
 ユジンとチュンサンしか知らない物。
 これらが新たなドラマの展開を作る。
 「僕はチュンサンです」と口で言っても信じないが、こうした物を使えば説得力がある。
 これぞ小道具の使い方。
 これと同様のものとしては『靴を履かせる行為』ピアノ曲『初めて』。


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