南京大虐殺の登録に「政治利用」と抗議しながら…安倍首相が「特攻隊」を世界
遺産に推していた! 協力者はあの人の娘?
2015.10.12 Litera
http://lite-ra.com/i/2015/10/post-1580-entry.html
ユネスコの世界記憶遺産に中国が申請していた「南京大虐殺」が登録されたこと
に対し、安倍政権が“発狂”しているが、いよいよその動きが具体化し てきた。
本サイトで既報のとおり、登録前から自民党の原田義昭・国際情報検討委員会委
員長が「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しよう として
いる時にもかかわらず、(中国が)申請しようとするのは承服できない」などと
発言したりと、安倍政権の根幹にある歴史修正主義が露呈してい たが、さらに
11日には、二階俊博・自民党総務会長が徳島県での講演でこんなことを言い出した。
「ユネスコが『(南京事件で)日本は悪い』というなら、ユネスコの資金はもう
日本は協力しないと言えないとしょうがない」
何度でも繰り替えすが、南京事件は、多数の元日本兵による捕虜や民間人虐殺の
証言・証拠が存在し、また日中間の公式歴史研究でも事実と認定されて いる。
そんな歴史的事実をネグり、「虐殺はなかった」「日本は悪くない」なる妄言を
日本は世界に向けて発信しているのだ。これは、ドイツ政府が 「ナチスによる
ホロコーストはなかった」と言っているに等しい歴史修正である。国際的に許さ
れるわけもなく、国家としての信用を落としていること に彼らは少しも気付か
ない。
しかも、ちゃんちゃらおかしいのは、安倍政権が「中国はユネスコを政治利用し
ている!」などと批判していることだ。
いったい、どの口でそんなことが言えるのか。今回、申請し登録された「シベリ
ア抑留」はいわずもがな、実は日本政府はこの間、もうひとつ、“政治 利用”と
しか思えないものを世界記憶遺産に推している。それは「特攻隊」資料だ。
日本ユネスコ国内委員会は、世界遺産候補を公募し選定しているが、今回の公募
の一つに鹿児島県南九州市が申請した特攻隊の遺書などの関連記録が あった。
この特攻隊資料は知覧特攻平和会館が保存しているもので、昨年2014年にも申請
されたものの、「日本からの視点のみが説明されている」 と指摘され、落選し
ていた(朝日新聞15年06月05付)。
しかも、この申請に関わっていたのが、総理である安倍首相本人だった。月刊総
合誌「FACTA」14年5月号の記事によると、昨年、安倍首相は、 特攻隊資料を記
憶遺産申請の手続きに入るようにと自ら指示。〈「集団的自衛権問題が佳境の折
に雑音を増やすだけ」と自民党内からも懸念が上がって いる〉と伝えている。
たしかに、軍の命令に抗えず、無謀な作戦の捨て駒として扱われ、命を落とした
特攻隊の存在は決して忘れてはいけないものだ。しかし、百田尚樹の 『永遠の
0』が象徴的なように、ときとして特攻は「命がけで国を守ろうとした勇敢な兵
士」として賞揚され、戦争および戦時体制の肯定の材料にもさ れてきた。
それを世界記憶遺産に推すという行為は、当然、特攻礼賛と受け取られかねな
い。実際、昨年に開かれた霜出勘平・南九州市市長の会見では、知覧特攻 平和
会館を訪れたことがあるというイギリス・タイム紙の記者が「特攻隊員の犠牲が
まるで崇高な死であったような印象を見学者に与える」と言い、ド イツの記者
からも「悲劇を繰り返させないためであるなら、戦争が起きた原因をはっきりさ
せるべきではないか」と鋭い指摘を受けている。
こうした諸外国からの反発はふつうに予想できるものだが、しかし、安倍首相は
それでもなお特攻隊資料に執着する。それはまるで、今年、世界文化遺 産に登
録された「明治日本の産業革命遺産」のときと同じように。
既報の通り、安倍首相は「明治日本の産業革命遺産」についても自身の人脈をフ
ル活用して全面的にバックアップ。世界遺産登録の「陰の立役者」と呼 ばれ、
安倍首相の幼なじみでもある加藤康子氏には「君がやろうとしていることは『坂
の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」と語り、自民党 総裁の座に返
り咲いた3日後には彼女に「産業遺産やるから」と明言したという。
これほどまでに安倍首相が「明治日本の産業革命遺産」にこだわったのは、戦前
の大日本帝国の体制や「富国強兵」「脱亜入欧」という思想を肯定・美 化した
かったからだというのは簡単に想像がつく。国民に愛国心を強制することに熱心
な安倍首相の次の目標……それが「特攻隊資料を世界記憶遺産登 録」なのだろう。
ほとほと嫌気がさすが、「FACTA」の記事ではもうひとつ、気になる話が記載さ
れている。それは、この世界記憶遺産の文部科学省の担当者が、籾 井勝人・NHK
会長の娘である籾井圭子氏であるということだ。
言うまでもなく、籾井氏は安倍首相の完全な子飼いで、籾井体制以降、NHKは“安
倍チャンネル”と化していることはご存じの通り。今度は娘が安倍 首相の希望を
忖度して、特攻隊資料の世界記憶遺産登録に動いたということか──。
それにしても、安倍首相はユネスコの世界記憶遺産を国威発揚の場か何かと勘違
いしているのではないか。
今回の「南京大虐殺」に限らず、これまでも世界記憶遺産は帝国主義や戦争によ
る“負の歴史”をいくつも認定してきた。それは、そうした歴史を踏ま えること
なくして平和への前進はなしえないからだ。しかし、この日本という国は、安倍
首相の主導によって特攻隊の賛美という“逆コース”を進もう としている。いっ
たいこの姿勢のどこが“積極的平和主義”なのか。国家の身勝手なエゴを全世界に
発信し続けているだけではないか。
まあ、国連の会見で難民問題を問われて、「難民問題より前に女性、高齢者の活
躍」とトンチンカンな答えをするようなドメスティックなオツムの持ち 主には
何を言っても無駄だろう。
やはり、諸外国から「話にならない歴史修正国家」と見放され、国際社会から孤
立する前に、この政権を倒すしかない。
(宮島みつや)