大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 4月9日 事故

2013-04-09 19:05:57 | B,日々の恐怖






    日々の恐怖 4月9日 事故







 10年ほど前、Kさんの弟が起こしたバイク事故にまつわる話です。
当時弟は、静岡県内のZという地域密着型の地図制作会社でアルバイトをしていた。
バイトの内容は、地図の更新のための情報を収集することだった。
 具体的には、一軒一軒家々を回り、今年度の地図に記載されている家主名と実際の表札とを照合する。
不一致だと、家主に確認をとる。
また、道に終点がある場合の確認も義務付けられていた。
 弟は新入りだったため、調査範囲の広い僻地が割り当てられた。
それが、富士宮近郊の土地だった。
弟はミニバイクを使用し、調査を行うことになった。
 調査は市街地から行い、終盤に残されたのは富士山麓に広がる国道沿いの家々と、国道から山にせり上がるように伸びている林道の終点の確認となった。
 その頃には、陽が陰りはじめていたという。
弟は、深い森を薄気味悪く思い、早く調査を終了させたいと焦っていた。
しかし、何故か地図に記載されてあるはずの林道が見つからない。
しばらくして、やっと見つけた林道の入口は、なかば木々が覆いかぶさり隠されていた。
 弟が、木々の隙間から中に進んでみると道は舗装されておらず、地面がむき出しになっていた。
作業用の林道ではないか、と思った。
 そのまま、林道を登って行く。
森の中は、さらに暗かった。
辺りの雰囲気に怖くなり、バイクのスピードを上げ一気に駆け上がる。
それで、4、5キロは登っただろうか。
まだ、道の終点にたどり着く気配すらない。
 そうこうしているとき、弟は自分の右手に何かが並走しているような気配を感じたという。
咄嗟に、右手に広がる森を見やった。
距離にして2、30メートル。
 最初は、白い布が自分と同じスピードで木々の間を飛んでいるかのように見えたという。
もうそれ以上見ない方がいいのではないかと思ったが、弟の好奇心の方が優ってしまった。
よくよく目を凝らす。
すると、それは白い着物のようなものを着た女であることが分かった。

 弟の話によると、女と確認した瞬間ものすごく厭な感じがしたそうである。
あまりの恐ろしさに弟はすぐさま、来た道を逆走した。
アクセルは全開、視線は女を捉えないように斜めに固定せざるをえなかった。
しかし、どうしても自分の視界の隅に、女が自分にへばり付くように飛んでいるのが、チラチラ映る。
 弟は半狂乱の状態で走り続け、なんとか国道へ逃れた。
林道からでても、しばらく猛スピードでバイクを走らせた。
どれくらい走っただろうか。
気づくと、女の気配も消えていた。

 念のため、さらに国道を走らせる。
そして、そろそろ大丈夫だろうと思った矢先だった。
突如ハンドルが取られて、弟は車道に投げ出された。
バイクは大破。
しかしながら幸いにも、弟は軽傷ですんだ。

事故後、弟がKさんに語ったのは、このような話だった。

















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