大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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しづめばこ 4月10日 P254

2013-04-10 22:13:30 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月10日 P254 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 4月10日 悪戯

2013-04-10 19:05:16 | B,日々の恐怖






      日々の恐怖 4月10日 悪戯






 Wさんは就職を機に、それまで住んでいた栃木の実家から都内に引っ越した。
しかし就職した会社は半年で潰れ、当時付き合っていた彼女には手痛い振られ方をしたそうだ。
おまけに一年で大きい病気を二度し、計三週間の入院生活まで送るはめになった。
その一年で、小さい病気も含めると医療費はサラリーマン二ヶ月分の給料にものぼったという。
 バイトをしながら就職活動をしていたが、いよいよ先も見えなくなり実家に帰ることにしたそうだ。

「 ろくなことがなかったんすよ。」

日当たりの悪いアパートは黴が生えやすく、そのせいで体調も崩しやすいのではないかとWさんは考えたそうだ。

「 家賃は安くないくせに、環境も良くないとはどういうことだ、って思っちゃって。
だいたい水漏れの対応も遅いし、騒音のクレームつけても反応ないし。」

管理会社の怠慢は目に余った。
 憤ったWさんは悪戯をしてやろうと企んだそうだ。

「 神社で御札を用意してきました。
次の住人が見つけたら絶対ビビるだろう、って思って。
けど目立つ場所に貼ったら、退去時のクリーニングで剥がされちゃうだろうし。」

 引越しの準備をしながら、Wさんは部屋を点検した。
ピンと来たそうだ。

「 ユニットバスの天井蓋があるじゃないですか。
あれを開けて、裏に貼ればバレないな、って思って。」

今まで一度も開けたことはないので、埃まみれだろうと予測した。
 マスクをして手をかけた。
天井裏には、びっしり赤茶けた御札が貼られてあったそうだ。
Wさんは言葉を無くして見回した。
 一部、爪で引っ掻きながら剥がした跡が残っていた。
そしてとぐろを巻いた蛇のように、濡れた長い髪が盛られてあったという。
Wさんは残りを引越し屋に頼み、二度とそのアパートに戻らなかった。

















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