日々の恐怖 4月16日 虎跳峡
旅先で会ったMさん(女性)の体験した話です。
十数年以上昔のことです。
Mさんは中国の雲南省にある虎跳峡(とらとびきょう)という処へ、数日かけてのトレッキングに出掛けました。
一日目
美しい景色を楽しみつつ、難なく過ごしました。
二日目
Mさんは早朝からトレッキング。
道は分かりやすかった様で、迷うことなく歩いていたそうです。
Mさんは相変わらずの美しい眺めに見とれつつ、歩を進めていくと、
「 Hello! Where are you going ?」
と、声が降ってきました。
上を見上げると、男性が手を振っています。
Mさんはいつの間にかトレッキングコースから外れ、自分が非常に不安定な場所を歩いていることに気付きました。
“ おかしいな???
確かにトレッキングコースを歩いていたはずなのに・・・。”
慌ててMさんはコースに戻り、その後声を掛けてくれた男性と共に一緒に歩くことにしました。
男性(Sさん)はシンガポールの人で、
『 明日、虎跳峡に行く。』
という手紙を最後に行方不明になった妹さんを探しに来ている人でした。
赤いジャケットがよく似合う妹さんの写真を見せてもらいましたが、見覚えはありません。
結局、妹さんは見つからないまま虎跳峡のトレイルは終わりました。
Mさんはお世話になったSさんに、妹さんが見つかりますように、と別れを告げました。
それから数週間後、一通の手紙がMさんに届きました。
差出人は虎跳峡でお世話になったSさんです。
手紙の内容は以下の通りでした。
Mさんと虎跳挟で別れたSさんは、その後もう一度同じ道をトレッキングしました。
そしてMさんが道を外した辺が気になったらしく、Mさんが行こうとしていた先に恐る恐る行ってみたそうです。
その先は急に崖になっていました。
そして、もしやと思いSさんは崖の下を覗き込みました。
すると、崖の途中に見慣れた赤いジャケットが引っ掛かっていました。
“ あっ!”
と思った瞬間、谷底からブワッと風が吹き上がりました。
そして、その風で引っ掛かっていた赤いジャケットがフワリと宙に舞い、ゆっくりと谷底へと落ちて行ったと言うことです。
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