大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆日々の出来事
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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月16日 千円札(1)

2016-07-16 20:11:06 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月16日 千円札(1)




 深夜のコンビニでの仕事の一つに、売上金の計算と送金作業がある。
レジおよび回収箱の中に入った金が幾らか計上して、銀行や郵便局に送る作業である。
 そんな中で紙幣や硬貨を数えている時に、

“ よくこんなモノをレジに出す気になるよなあ・・・。”

と思ってしまうブツを良く見るのである。
 錆び付いて数字が読めない十円玉であるとか、所々破けてテープだらけの千円札。
もちろんどんなお金も基本的に受け取りを拒否する事は出来ない訳で、一日に必ず一つ二つは、見るも無残な日本銀行券の成れの果てを手にすることになる。
 そんな中で一番印象に残っているのが、キスマーク付きの千円札だった。
言葉だけではどうと言うことも無いと思うのだが、想像して欲しい。
 千円札の表には野口英世の肖像画があり、古札である。
その紙幣を裏返すと、逆さ富士があって、中央にはべっとりと赤い口紅のキスマークが付いている。
 そんなブツがある日、売上金の中に一枚紛れ込んでいた。
見た瞬間に思わず、

「 うあ・・・・。」

と呻いて、

“ 何とも気持ち悪い事をするなぁ・・・。”

と思った。
 日本銀行が発行して以来、恐らくは何百人もの手を渡り歩いてきた紙幣だ。
使用状況から考えても、どれだけの手垢、細かいゴミが付着しているか知れたモノでは無い。
そんな紙幣に、口付けをしてしまう事情がまず想像出来ないし、それを人前に出す神経もちょっと解らない。
 そんなことをあれこれ思いながら、改めてその紙幣を見てみる。
地味な色の紙幣の山の中、不気味に鮮やかな色合いの紙幣は、どこか毒性の動物を想像させる。

“ 嫌だなあ、さっさと郵便局に引き取ってもらおうか・・・。”

そう思って、その紙幣は送金袋の中に突っ込んだ。
これだけなら、

“ 世の中には気持ちの悪いことをする人がいるなあ・・・。”

で済んだ話だ。
 しばらく経った、やはり深夜の同じ作業中だった。

「 うあ・・・・・。」

再び、同じ紙幣が出てきた。

“ え?なんで・・・・??”

軽い混乱に襲われた。













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日々の恐怖 7月15日 公的保証

2016-07-15 18:48:10 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月15日 公的保証




 週末、夜景を見るため横に彼女を乗せて、〇〇山へドライブに行った。
彼女がいるからよく知っているコースを選んだ。
この前は半年ぐらい前に一人で来たこの道、道を間違えて恥をかく事はないようにと、慣れたコースを選んだ。
 順調に車を走らせ、いよいよ最高のビューポイントに来た。
ここは稜線にそって駐車場があり、車を降りなくても中から景色が見られる。
 しかし、週末とあって、駐車場の空き待ちでズラリと車が並ぶ。
仕方なくしばらくの間だけ待つことにした。
 ところが、駐車スペースが一か所だけポツンと空いている。
見る限り、特にその場所に不具合があるようには見えない。
地面はアスファルトでしっかりしているし、穴が開いているような部分もないようだ。
でもなぜだか端から4台目だけが開いている。
 時間が経っても一向に動きを見せない車の流れ。
業を煮やし、車を降りて待機中の先頭車に、なぜあそこの空きスペースに車を入れないのか聞きに行った。
 すると、車に乗っている人が言うには、

「 あそこは駐車しちゃいけないんだよ。」
「 なぜ?」

と理由を聞くと、

「 あそこに車を止めて自殺したカップルがあったらしいんだ。
それからあそこに車を止めると必ず、エンストしたり急に発進して事故を起こしたり・・・・。」

と不思議な現象を話し始めた。
 その人は、まだ駐車禁止場所になる前にそこに車を止めて、車を出ようとしても車のドアが開かなかったらしい。
無論、エンジンは切っていたし、ドアロックも解除していたと言う。
 興味半分で歩いてそのスペースまで行くと、アスファルトに×印が書かれていて、

“ ここに車を止めないで下さい。〇〇市”

と書かれたプレートを張った小さな柵が置いてあった。
 少し離れた車からは見えなかったけれど、近くに行って、市が書いたプレートや柵を近くで見ると、

“ これは危ないな。”

と思った。
車に帰ると彼女はスヤスヤ寝ていた。












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しづめばこ 7月14日 P441

2016-07-14 18:00:36 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月14日 P441  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 7月13日 迂回

2016-07-13 18:18:44 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月13日 迂回




 5年程前のこと、仕事がなくて葬儀社の霊柩車の運転手を1年ぐらいやっていた。
もちろんソノ手の仕事なので不思議な体験はあったが、火葬場の話だと、いわゆる無縁仏の火葬では当然お骨の引き取り手がいない。
 斎場にもよるだろうが多くの場合、そうしたお骨は裏手の慰霊塔のようなところに一括に捨てられる。
こまめに坊さんを呼んで弔ってるトコはいいんだけど、四国のI市のように全くやってない所もある。
 その供養してないI市斎場での出来事。
梅雨時で2~3日雨が続いていた。
朝一番の式が終わって、霊柩車に家族を乗せ斎場に向かっていた。
 斎場近くのT字路にガードマンが立っていて、

「 この先がけ崩れしてるから、迂回してくれ。」

と言われた。
葬儀社から報告受けてないし、

“ おかしいな・・・・。”

と思いつつ、指示にしたがった。
 迂回路にも2人ほどガードマンがいたが、斎場から離れていってる気がして、喪主の人と、

「 変ですねぇ・・。」

なんて話しながら、とにかく急いだ。
 20分ぐらい走って、やっぱ絶対おかしいと思い、喪主と相談して引き返すことに決めた。
斎場までの道のり、3人いたはずのガードマンは1人もいなくなっていた。
もちろん、がけ崩れもなかった。
 なぜ彼らは火葬を邪魔したかったのだろう。
喪主や家族がいるホトケさんが羨ましかったのだろうか?











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しづめばこ 7月12日 P440

2016-07-12 18:00:45 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月12日 P440  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 7月11日 兎(4)

2016-07-11 18:58:49 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月11日 兎(4)




 大海嘯とは大津波のことだ。
道内の古い漁師達は伝承を信じ、ウサギやアイヌ語の意である“イセポ”を海上で口にすることを禁じていたと言う。
 アイヌ達が海上にいる時は“イセポ”の代わりに“カイクマ”という言葉を用いた。

「 アイツは南、内地へ向けて走って行ったな。
今回は、こっちに被害はないかれもしれない。」

 おっさんは言った。
アイヌの昔話がある。
昔、ある男がトンケシと言う場所を通りかかったとき、丘の上にウサギが立っていて海の方へ手を突き出し、しきりに何かを招き寄せるような仕草をしているのを目撃する。
 彼は丘の下にある集落で周辺六ヶ所の首領が集まり酒宴を開いているので、津波が来るから早く逃げろと警告したが、首領達は酔っていて、津波など怖くないと刀を振り回し相手にしなかった。
男は呆れ、内陸へ向けて去っていった。
 その直後、トンケシの集落は津波に飲まれ、全滅してしまった。
トンケシの丘にいたの津波を呼ぶ神で、海にいる無数の仲間を呼び寄せる儀式を行っていたのだと。
 ウサギが立つ(イセポ・テレケ)を、白波が立つことだなどと今では言われている。
しかし、俺達が見たアレは一体なんだったんだろう。
 実際、おっさんが必死になる理由は分かっていた。
1994年に起きた北海道東方沖地震による津波の記憶がある。
道内での被害は少なかったが、北方領土では死者行方不明者を出し、一万人近い住民がロシア各地へ移住を余儀なくされた。
 道内に残るウサギと津波に纏わる伝承では、予兆現象があった即日から十年程の間に津波が起こったとされているようだ。
 宿まで戻った俺達は早々に根室を後にした。
今日は釧路湿原の脇を抜け、阿寒国立公園を目指す。
観光化されたとはいえ、アイヌの伝承や文化が残っている場所だ。
それに内陸部だから津波に襲われる心配はまず、無いだろう。
結局、俺達が北海道にいる間、津波は起こらなかった。











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日々の恐怖 7月10日 兎(3)

2016-07-10 19:44:03 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月10日 兎(3)




 波を蹴立てて船は進み、おっさんが俺達に見せたかったのは、空が白み始め、360度全てに島影すら見えない大海原、しばらくすると水平線から顔を出す黄金色に輝く朝日だった。
北海道へやって来て、二十歳をとうに過ぎた男三人が、景色に目を奪われ、息を呑み、胸を詰まらせた事が幾度となくあったが、この朝日の神々しさは格別だった。
 地理的になかなか見られない御来光を拝んだ後、おっさんの用意してくれた朝飯を食った。
海苔と塩だけの握り飯にカニ味噌と身の入った味噌汁だ。
 それらを頬張りながら、俺は艫で甲板に腰を下ろして海を見ていた。
そのとき10メートル程先、波間に顔を出している白いものがいることに気が付いた。
ゴマフアザラシかと思ったが、天に向けてにょっきり伸びる一対の長い耳があった。
 そいつは前脚を出し、水面へ置いたかと思うと、そこを支点によっこらしょと胴体を海中から引き抜く。
波の上に乗って後脚二本で立ち上がり、周囲を警戒する一匹の動物らしきもの。

“ なんだろ・・・、あれ・・・・?”

 それは半透明で白い輪郭を持ち、感覚としては一対の長い耳から、白いウサギのように見えた。

“ 幻覚か・・・・?”

俺の右手から握り飯がこぼれて海へ落ちた。
 それがくるりと俺に背中を向け、波の上を走り去っていった。

“ 何だ、今のは・・・・?”

俺達は呆気に取られた。
その中で最初に我へ返ったのは、おっさんだった。
おっさんは一言、

「 ヤバイッ!!」

と言うと、慌てて船を回頭し根室の港へ向けて走らせる。
 そのおっさんのとばし方が尋常ではなかった。
まるで何かから必死で逃れようとしているかのように、操舵輪を握る顔は青ざめ引き攣っていた。

「 ウサギが立った。
大津波が来るぞ。」

アイヌの伝承にあるそうだ。
 海で、

“ ウサギ(イセポ)が立つ(テレケ)。”

は、大海嘯の前触れである。











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日々の恐怖 7月9日 兎(2)

2016-07-09 18:38:58 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月9日 兎(2)




 美味い飯を食い、美味い酒を飲み、風呂に入って、久しぶりに屋根の下で布団へ入って眠った。
テントとは違って寝心地が段違いだ。
それに熊等の襲撃を恐れる心配がないのは最高だ。
これで22:00就寝、02:00起床でなければ至福だった。
なんでも、おっさんが操舵する船ですごいところへ連れていってくれるのだそうだ。
 午後11時まで食堂で俺達と飲んでいたのだが、午前2時きっかりにおっさんは起こしにやってきた。

「 船で摂る朝飯の支度も済んでいる。
いつまで、寝てんだ?」

 厚着して眠い目を擦りながら外へ出ると、エンジンをかけた軽トラが待っていて、有無を言わさず荷台へ乗せられ港へ向かい、おっさんが操舵する船で真っ暗な海原へ出る。
出港してしばらく無言だったおっさんが、ちょっとショートカットしていくからと俺達に断りを入れた。
 深夜で島影どころか目の前の波すら見えない海の上だ。
何をショートカットするのかと思えば、現在は別の国家が占有している日本固有の領土がある海域だった。
 北海道に来て熊と相対する覚悟はしていたが、流石に拿捕までは想定外で気構えとかなんか出来ていない。
極寒の牢獄に囚われ、餓死と貧困に怯えながら、空缶に用を足すことになるのは絶対に御免だ。
 俺達は船長兼民宿の親父のおっさんに向かって、本気でやめてくれとお願いした。
地図にしか見えない赤い一点鎖線の内側へ、お願いだから帰しておくれと懇願した。
 それに対しておっさんは、

「 お前等、俺がどこでカニを捕ってくるか知っているか?
道内では船影がちらりと見えただけでカニは岩陰に隠れてしまうが、こちらでは真上を船が通ろうと、のうのうと行列を作って歩いているくらい擦れていないから捕り放題だ。
まあ、言ってみれば俺の庭みたいなものだよ。
 もし、露助の警備艇に臨検されそうになっても、漁船には分不相応な高出力エンジンを積み、操舵室うしろの壁には分厚い鉄板が仕込まれているから、小銃の弾くらいなら耐えられるぞ!」

と鼻で笑った。
 そして、

「 強力な鼻薬も常時、搭載済みなんだよ。」

これはもうおっさんに全てを任せるしかないと、腹を括った。










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日々の恐怖 7月8日 兎(1)

2016-07-08 18:30:43 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月8日 兎(1)




 十年以上も昔の話になる。
会社の先輩と中学以来の友人と俺の三人で、盆休みに有給を足して十一日間の北海道旅行へ出掛けた。
車一台にバイク一台の、むさ苦しい野郎だけの貧乏旅行だったが、それは素晴らしいものになるだろうと胸を弾ませていた。
 しかし、出発当日から台風に見舞われ、フェリーは大時化の中を航行、無事に苫小牧港へ到着はしたが、何の因果か、北の大地に足をつけてから連日、怪異と遭遇する羽目になった。
 艱難辛苦を乗り越え、旅は知床で折り返して六日目、道東の海岸沿いを一気に南下して根室へやってきた。
花咲港で名物のハナサキガニを食し、日本最東端の納沙布岬で北方領土の歯舞群島を間近に臨み、双眼鏡で水晶島の監視塔で小銃を肩にかけて警戒にあたる兵士の姿を捉えた。
また、西の彼方へ沈み行く夕日を、男三人が肩を並べて見守ったりした。
 チャシ跡群や、旧日本軍が建造したトーチカや掩体壕の遺跡群は時間も時間なので、明日見に行くことにして、本日の宿を探しに根室市内へ向かう。
根室駅前にある観光案内所へ着いたのは時間は午後6時を過ぎていた。
 パンフを見比べながら、あーでもないこーでもないとやっている俺達。
そこへ軽トラに乗ったおっちゃんが現れ、宿を探しているのかと話しかけられた。
ホテルではなく安価な民宿で、魚介類とハナサキガニが手頃な価格で食えるような所へと条件を提示すれば、それなら俺の所に決定だと、おっさんは親指を立てる。
 どことなく、映画プラトーンに登場したバーンズ軍曹に似たおっさんだ。
おっさんは民宿を営みながら、漁師もやっているのだそうだ。
宿泊代に二千円を足せば、晩飯にハナサキガニ+αを付けると言った。
宜しくお願いしますと、俺達はおっさんに向けてホッチキスも斯くやの身体を折り曲げ頭を下げた。











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日々の恐怖 7月7日 漁

2016-07-07 20:53:52 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月7日 漁




 俺のじいちゃんは漁師だった。
10歳の時から船に乗り、家族の反対を押し切って80歳まで現役を続けた生粋の海の男だ。
これはそんなじいちゃんから聞いた話だ。
 夜に沖へ船を出していると、奇妙な事象に出くわすのはそう珍しくもない事なのだそうだ。
霊と思しきものや人魂のようなものばかりではなく、もっと謎めいたものも多く見たという。
それらは恐らく神や妖怪に分類されるものと思われるが、そういったものについてじいちゃんは多くを語らなかった。
 一度その理由を尋ねたら、

「 人が触れちゃなんねぇ領域ってもんがあるんだ。」

と言っていた。
 ちなみに、じいちゃん基準で人が触れてもいい領域の端っこにあたるのが幽霊だったらしく、海で見た霊のことはたまに話してくれた。
 じいちゃん曰く、霊というものは光を求めるものなのだそうだ。
霊といえば夜に出るという概念があるから闇の方が好きそうに思えるが、霊にとって光は生者の世界の象徴であり、そちらに戻りたいという思いが彼らを光に惹き付けるのだろう。
 特に、海で死んだ者は真っ暗な海に取り残されていることがつらくて仕方ない。
そんなわけで、じいちゃんのイカ釣り漁船にはそういった霊が時折寄ってきたらしい。
いつの間にか甲板に乗ってきていたり、引き揚げてくれとばかりに海の中から手を伸ばしてくる者もあったそうだ。
 といっても、じいちゃんはそこまで霊感が強い訳ではない。
顔かたちまではっきり見えるようなことはほとんどなく、霊の声も聞こえないから話もできない。
 半端に相手をすると厄介な事になるので、基本的にじいちゃんは霊に対して無関心を貫いていた。
海中から助けを求める霊は気の毒だが無視し、船に乗ってきた霊にも気付かないふりをした。
そうする事がお互いのためなのだそうだ。
 ある時、じいちゃんの仲間が海で事故に遭った。
同じ船に乗っていた者がすぐに引き揚げて病院へ運んだのだが、残念ながら助からなかった。
 頼れる兄貴分だったその漁師の死を悼み、多くの仲間達が彼の葬儀に集まった。
悲しみを抱えながらも、漁師達は翌朝からまた海へと出ていった。
 葬儀から半年ほど経った頃だ。
沖に停めた船の中でじいちゃんがあぐらをかいて作業をしていると、突然猛烈な眠気が訪れた。
寝ちゃいかんと思いながらも、瞼が重くて仕方ない。
 必死で睡魔と戦っていると、背後に誰かが立っている気配がした。
眠くて振り返れないじいちゃんの頭の上から、テツとじいちゃんのあだ名を呼ぶ聞き覚えのある声が降ってきた。

「 テツ、悪いがちょっと陸まで乗っけてくれな。
俺、足がなくて戻れんから。」

夢うつつのじいちゃんは、声の主である漁師が亡くなったことを忘れていた。

「 ああ、兄貴か、どうした?」

じいちゃんの問いに背後の人物は答えず、

「 悪いな、頼むよ。」

と返した。

「 ああ、分かった。」

と呟いた時、じいちゃんは唐突に覚醒した。
 辺りを見回すが、気配はすっかり掻き消えている。
それでもじいちゃんは兄貴の霊がこの船に乗っていると確信し、同じ船に乗っている仲間達に今見た夢を話した。
 その場所が偶然にも兄貴の落ちた海域だった事もあり、仲間達はじいちゃんの話に納得すると、すぐに漁を打ち切って港へと戻ったのだそうだ。
じいちゃんが無関心の鉄則を破ったのは、それが最初で最後だった。
 じいちゃんによれば、人は命を落とした場所に魂まで落っことしてきてしまうことがあるらしい。
そうなると、体は埋葬されても魂はそこから帰れず、誰かに連れ帰ってもらう必要があるのだろう。

「 幽霊に足がないってのは、上手いこと言ったもんだな。
足がなきゃ、生きてるもんでも遠くからは帰れんもんなぁ。
タクシーやらバスやらに出る幽霊ってのも、案外そんな理由なのかもしれんね。
俺の船は幽霊のタクシー代わりだったわけだ。」

 そう言って笑った後、じいちゃんは海の方を向いて深いため息をついた。
死ぬ瞬間まで俺は海の上にいたいと言って、なかなか漁師をやめずに家族を困らせたじいちゃんは、海に魂を落っことした彼らのことを少し羨んでいるようにも見えた。











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日々の恐怖 7月6日 餌

2016-07-06 20:54:40 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月6日 餌




 小学校の頃、クラスの落し物係として、掃除の時間や昼休みによく落し物を拾っては職員室に届けることが多かった。
今にして思えば、落し物を見付けることが多過ぎたように思える。
先生方に、

「 また拾ったの?」

なんて言われていた。
 冬休み前のある日、学校に忘れ物をして、慌てて取りに戻った。
グラウンドにサッカーをして何人か残っていたが、もう殆ど下校しているようだ。
それを横目に下駄箱から上履きに履き替える。靴は脱いでそのまま置いた。
日が暮れかけた学校は非常に暗かった。
 省エネがブームで、廊下の明かりは放課後、掃除が終わり次第消していくため、廊下にも教室にも明かりは点いていなかった。
二段飛ばしで駆け上がり、3階の教室に飛び込む勢いで急いで忘れ物を手にすると、安心と息切れでため息混じりに無人の教室を後にする。
 先程は気付かなかったが、教室を出てすぐの廊下にキン肉マン消しゴムが落ちていた。
誰の落し物だろう?と、拾い上げる。
真っ黒に汚れていたが、当時はキン肉マン消しゴムに根強い人気があり、俺は特に興味なかったが、無くして落ち込んでいるであろう持ち主のことを考えると、届けるべきだと思った。
 暗いし怖いから早く帰りたかったけど、結局1階の職員室前の落し物BOXに寄ることにした。
階段を足早に下りながら、後ろからカシャン、カラカラと何かが落ちて転がる音を聞いた。
 1階に向かう途中、振り返った2階の図書室前廊下で更なる落し物を発見する。
最近買って、すぐ無くした赤い水性ボールペンだった。
ちょっと遠目にだったが、開封シールをキャップに貼り直していたので、その下手くそな貼り方で自分のものだと確信した。

“ あ、俺の!見つかって良かった!!”

と、思いながら赤ペンに向かって歩く。
 いつも落し物を届けて、日頃の行いがいいからかな、なんて思っていた。
風も吹いてないのにカラ、カランと、更に半分円を描くように遠ざかって暗がりの手前で止まる。

“ え・・・?”

 何か変だな、と思って手を伸ばしたまま動きを止める。
自分の影が伸びた先に、赤ペン。
その先には真っ暗な廊下があった。
 不意に鳥肌が立つ。
グラウンドでサッカーをしていた子達の声が聞こえない。
代わりに耳鳴りがしている。

“ エサ・・・?”

左手には忘れ物の体操着と体育館履き、誰かのキン肉マン消しゴム。
右手は赤ペンを手に取ろうと伸ばしたままだ。

“ さっき、落ちた音がしなかったっけ?”

図書室のドアはとっくに施錠されているようで、締まったまま誰もいない。
 ドアが開く音はしなかったし、閉じる音もなかった。
赤ペンを無くしたのに気付いたのは、3日ほど前にテストが帰ってきた時のことだった。

“ じゃあ、なんでいまさっき落ちた音がしたんだろう?”

忘れ物はいいとして、廊下にキン肉マン消しゴムが落ちてたら誰かが気付いて拾うくらいには人気だった。
教室に入る前は気付かなかったのに、教室を出たら気が付いた。
これは、上手く説明できないけどなんか嫌な予感がする。

“ 何か、おかしい!”

 俺は赤ペンと持ったままのキン肉マン消しゴムが急に怖くなり、一目散に階段を駆け下りた。
1階に着いた。

“ カシャン。”

目の前の廊下に赤ペンが落ちていた。
いや、落ちた。
今まさに。その音を聞いた。
 さっきと同じ赤ペンだった。
職員室の方に向かう廊下に落ちていた。
 その先は玄関があるが怖くなって、まだ日差しのあるグラウンドに繋がっている渡り廊下を反対方向に駆け出す。
ヒタヒタと、上履きのパカパカした足音とは違う音が階段から追ってくる。
 俺はキン肉マン消しゴムを真後ろに放り投げながら、グラウンドに飛び出した。

“ ボンッ。”

キン肉マン消しゴムが廊下の掲示板に当たって跳ね返る音がした。
 上履きのまま、グラウンドの土埃にまみれて校舎から大きく距離を取った。
そこにサッカーボールが転がって来て、

「 おーい、ボール蹴ってー。」

と、のんきな声が聞こえた。
 振り返りながら、上履きでボールを蹴り返す。
サッカーを切り上げて帰るところのようだった。
 一気に緊張が解けて、なんでか涙が出た。
耳鳴りは止んでいた。
 グラウンドから下駄箱に回り、靴に履き替えたが、結局汚れた上履きごと持って帰った。
帰り際に土足のまま廊下を恐る恐る覗いたが、赤ペンは見当たらなかったし、キン肉マン消しゴムも見当たらなかった。
そういえば壁に当たった音はしたのに、落ちた音はしなかった。
それ以来、たとえ敷地内で見かけても、落し物は拾わなくなった。











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日々の恐怖 7月5日 七年後

2016-07-05 18:38:47 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 7月5日 七年後



 十代のころの話です。
ある日突然、市松人形が欲しくなった。
もう欲しくて欲しくてたまらない。
白い着物に赤い帯、紅はほんのり紅い、市松人形がなんとしてでも欲しい。
 それでお店のお客に手当たり次第情報を求めた。
何処で売ってて、オーダーで作れるか、幾ら位するかなどなど、どうにかして手に入れようとした。
 何日か過ぎた頃、お店の女性客にこう言われた。

「 それ本当に貴方がほしいの?」
「 え???!」

 目から鱗が落ちた。
そうだ私何で人形なんか欲しいんだろ。
しかも市松人形。
 すると、それまでなんとしてでも欲しかった人形が、欲しくも何とも無くなった。
ただその話をしている間中、お客の後ろで市松人形が私を睨んでいた。
それが現実なのか目の錯覚なのか自分に自信をもてず、その事を忘れた。
 私は結婚、出産、離婚と色々あり、七年ほど過ぎた。
離婚し実家に戻った私に、姉と姉の友人が訪ねてきた。
 昔話をして楽しんでいる最中、姉の友人が不思議な話を始めた。

「 そういえばあの時、貴方が住んでいた家の近くに橋があったよね?」

そう、私がその時住んでいた家の近くに小さな橋があった。
別にこれといってなんてことない小さな橋だ。
ただ私はあまり好きじゃなかった。
 姉の友人は続けてこう言った。

「 私ね、あそこの橋で女の子を見たよ。
それがおかっぱ頭の着物着た子だった。」

私は鮮明に記憶が甦った。
忘れてた市松人形だ。
 恐かったけれど、私は聞いた。

「 その子、白い着物に紅い帯してなかった?」
「 そうそう何で知ってるの?
けっこう恐かったよ。
顔が突然ブワァッて大きくって、こっちに寄って来て・・・。」

 私は間違いないと確信した。
あの時私が突然欲しくなり、店の女性客に貴方の意志じゃないと指摘され、恨めしげに私を睨み消えたあの市松人形だ。
 あの橋を渡る時、私に憑いてきたのか。
そして自分が入る体が欲しくなり、私に用意させようとした。
けれど不覚にも女性客のたった一言で、私や周囲にきずかれた。
だからあんなに恨めしげだったんだ。
 なぜ市松人形が突然欲しくなり、たった一言で欲しく無くなり、なぜ恨めしげに私を睨んだのか。
七年後に分かったことだった。











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日々の恐怖 7月4日 山

2016-07-04 18:37:47 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 7月4日 山




 山で二度怖い思いしたことがある。

 小学1年の頃、山にキャンプに来ていた時、ちょっとした冒険心でコッソリ周囲を探索してたら、獣道(道の右側は上り斜面、左側は急な下り斜面で下は川)を見つけた。
 その獣道を道なりに歩いてたら、道そのものが足元から崩れて、斜面を10メートル程転がった。
途中の木にぶつかる形で何とか止まったけど、落ちたら死んでたろうなぁ。

 次は小学5年生の頃。
これは、一番恐ろしかった。
これ以上の体験は、後にも先にも無い。
 内容が内容だけに信じてくれない人もいるが、俺は確かに見た、と思っている。
そして見たのは俺一人じゃない。
 親の後に付いて山中の獣道を歩いてた。
季節は夏。
 周囲は夕闇が迫って来ていた。
陸自空挺レンジャー出身の親父が先導していたので、疲れはしていたけど恐怖は無かった。
 頼れる親父であった。
聞こえる音といえば、二人の歩く音と木々のざわめき、種類は分からないが鳥の鳴き声と、谷を流れる川の音、だけだと思っていた。
 何か、人の声が聞こえた気がした。
でも、特に川の音などは人の声に聞こえる場合もある。
最初はそれだと思っていた。
けれども、気にすれば気にするほど、人の声としか思えなくなってきた。

「 とうさん、誰かの声、聞こえない?」
「 ・・・・。」
「 誰だろ、何言ってるんだろ?」
「 いいから、歩け。」

言われるままに、黙々と歩いた。
 だが、やっぱり声が気になる。

“ どこからしているんだろう?”

周囲をキョロキョロしながら歩ていると、谷底の川で何かが動いているのが見えた。
 獣道から谷底までは結構な距離がある上に、木や草も多い。
そして夕闇が迫っているので、何かがいたとしてもハッキリ見える筈は無い。
ところが、ソイツはハッキリと見えた。
 獣道と谷底の川は距離があるものの、並行したような形になっている。
そして、ソイツは谷底を歩きながら、ずっと我々に付いてきていた。

「 お~い、こっちに来いよぉ~!」

谷底を歩く坊主頭の男は、我々に叫んでいた。
 ゲラゲラ笑いながら、同じ台詞を何度も繰り返している。
それだけでも十分異様だったが、その男の風体も奇妙だった。
 着ているものが妙に古い。
時代劇で農民が着ているような服だ。
顔は満面の笑顔。
だが、目の位置がおかしい。
頭も妙にボコボコしている。
そして、結構な速度で移動している。
ゴツゴツした石や岩が多い暗い谷底を、ものともせず歩いている。

“ こんな暗くて距離もあるのに、何故あそこまでハッキリ見えるんだろう?
と言うか、白く光ってないか、あの人?”

小学生の俺でも、その異様さに気付き、思わず足を止めてしまった。

「 見るな、歩け!」

親父に一喝された。
 その声で我に返った俺は、途端に恐ろしくなった。
しかし恐がっても始まらない。
後はもう、ひたすら歩くことだけに集中した。
 その間も谷底からは、相変わらずゲラゲラ笑いながら呼ぶ声がしていた。
気付けば、俺と親父は獣道を出て、車両が通れる程の広い道に出ていた。
もう、声は聞こえなくなっていた。
 帰りの車中、親父は例の男について話してくれた。
話してくれたと言っても、一方的に喋ってた感じだった。

「 7、8年位前まで、アレは何度か出ていた。
でも、それからはずっと見なかったから、もう大丈夫だと思っていた。
お前も見ると思わなかった。」
「 呼ぶだけで特に悪さはしないし、無視してれば何も起きない。
ただ、言う事を聞いて谷底に降りたら、どうなるか分らない。」
「 成仏を願ってくれる身内も、帰る家や墓も無くて寂しいから、ああして来る人を呼んでるんだろう。」

大体、こんな感じの内容だったと思う。
 その後も、その付近には何度か行ったけれど、その男には会ってない。
今度こそ成仏したんだろうか?











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しづめばこ 7月3日 P439

2016-07-03 21:48:28 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月3日 P439  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




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日々の恐怖 7月2日 仮住まい(4)

2016-07-02 21:41:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月2日 仮住まい(4)




 それを聞いて俺もほっとしてテレビとかを見ていたんだが、少し経つと急に隣の部屋が騒がしくなっていった。
そして父さんが慌てて戻ってきて母さんに何かを伝えると、また家から出て行った。
その直後、急遽俺は母親の運転する車で母親の実家に移動し、そこで数日を過ごした。

 さて、ここからは全部伝聞だが、どうやらその時隣の部屋では大変なことが起きてたみたいだった。
というのも、管理人さんと父さんが部屋の合鍵を使って中に入ると、そのAが首を括って死んでいたのだ。
 それだけならまぁ普通の自殺事件で終わっていたのだが、Aが首を吊っていた部屋がこれまたかなり異常だったらしい。
 まず、部屋の天井から何十本も首吊り用の縄が釣り下がっていた。
ご丁寧に天井にフックを打ち込んでの本格的なやつで、Aはそのうちの1本を使って自殺していた。
 そして第二に、大量の男の子の写真が部屋から見つかった。
隠し撮りしたのか、ほとんどがブレてたり影に隠れてたりではあるけど、それが大量に見つかった。
 当然その中には俺の写真も含まれていて、Aは俺の写真を握り締めながら死んで行ったらしい。
それは俺の写真だけがAの足元に落ちていたからだ。
 最後にコレが一番衝撃的だったのだが、その部屋にはおばさんからのAへの置手紙が見つかった。
内容は、

“ 辛くなったらこれ(縄)を使いなさい。
お友達と一緒にいきたい時は予備のを使いなさい。”

的なことだとか。
まぁ流石に細かい部分までは知らないが、成人したときに父が聞かせてくれたものは以上である。
 あの時Aは俺に何をしようとして腕を引っ張ったのかはわからない。
もしかしたら友人と楽しそうに話してる俺を見て、寂しくなって話がしたくて腕を引いたのかもしれないし、そしたら或いはAも自殺することはなかったのかもしれない。
でも仮に一緒に逝きたくて、俺をぶら下げるために引き摺りこもうとしていたのかと考えると怖くてたまらない。












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