つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

邂逅の背

2010-04-03 05:51:48 | 俳句
会社の帰りに家の近くのスーパーに寄った。

レジを済ませて帰ろうとすると、前方に見たような女性が…。わたしが最初に
所属していた地元の「A俳句会」のメンバーの一人である。
彼女が声を掛ければ、すぐにでもメンバーの5~6人は集められるリーダー格の
人で、目鼻立ちのキリリとした美人でもあった。

わたしは仕事の都合から会をやめてすでに10年は経っていたが、やめてからも
彼女らは4~5人のメンバーで、わたしの絵の展示会のたびに来てくれるのだった。
しかし、どういうわけかいつもわたしの留守のときに来てくれるのだ。

感想帳に銘々が何がしかのことを書いてくれているので、来てくれているのは
わかるのだが、同窓会のような気がしてなつかしさと嬉しさで、いつも会いたいなあと
思っていたのに、会えずにいたのである。

特に彼女は「また飲もう!」などと書いてくれるのだが、なかなか実現しないのが
実情だった。彼女と最後に会ったのは3年ほど前で、母の入院していた病院の
入り口だった。ちょうど出入りでバッタリ会って、「あら!isseiさん」と言われ
気づいたのだった。その時、旦那様が事故で大怪我をして入院していることを
知ったのである。

レジの前で、「やあ!Y子さん」わたしが声を掛けると「あら!isseiさん」と
我が俳号で呼び返した。句会では名前で呼び合うのである。明るさは以前と変わらず、
キリリとした鋭い目つきは、さすがにやや落ち着いた眼差しに変わっていて、いい歳の
重ね方の容色をしていた。

あれからの状況、近況、とお互い話に花を咲かせた。よく見かけるスーパーのレジの
前での立ち長話をやってしまったのだ。旦那様は仕事が出来るまでに回復したこと、先日
娘を嫁にやって、子供たちが皆かたづいて、2人きりの生活になったこと、などを
話した後に、「わたしもこれからマンションに住むつもり」と言った。
わたしがマンション暮らしに代わったのを知っていたのである。

彼女の旦那様は建築家で、一度メンバーの人達と家へ招待されたことがあるのだが、
それはそれは高台にそびえるりっぱな家だったのだ。
それぞれが今の状況に合わせて生活をしていくんだなあとしみじみ思った。

「そうねこれから老後のことを考えなくちゃあね」と言うと、「もう老後よ」と
言ってにっこり笑った。「飲むときは連絡してよ」と彼女の背に声を掛けると、
またにっこり笑ってOKの手を振った。

彼女とは同年輩なのである。のほほんとしているわたしも老後なのだった。

    振り向かぬ 邂逅の背に 飛燕飛燕

                     issei








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