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ぽかぽか春庭「藤牧義夫の版画」

2012-04-07 00:00:01 | アート

2012/04/07
ぽかぽか春庭十二単日記>はるHAL春(7)藤牧義夫の版画

 3月22日、春まだ浅い景色の鎌倉を訪れたのは、藤牧義夫の版画を見るためでした。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2011/fujimaki/index.html

 藤牧義夫(1911-1935)は、群馬県館林市出身の版画家。は、群馬県館林市出身の版画家です。少年の頃から抜群の才能を示しましたが、画業半ばにして24歳のとき忽然と失踪し、生死不明となった芸術家です。
藤牧義夫23歳ポートレート1934

 1935年6月25日~27日にわずか3日間ですが、最初の個展を開き、版画家としてこれからという9月2日に失踪。その後は忘れられた存在になっていました。
 私は竹橋の近代美術館で何作か藤牧の作品を見ていたのですが、特別な興味はありませんでした。

 「藤牧をまとめて見てみよう」と思ったのは、ウェブ友まっき~さんの父上が藤牧研究を続けていて『赤陽物語ー私説藤巻義夫論』という著作を出版されていることを知ってからです。
 藤牧義夫について、牧野さんの本のあと、駒村吉重『君は隅田川に消えたのか-藤牧義夫と版画の虚実』2009なども出され、藤牧の版画コレクターでもある大谷芳久の『藤牧義夫 眞僞』(学藝書院2010)が従来の藤牧研究を一新するとして美術業界で話題になりました。ただし、この本は、収集された藤牧の版画集でもあり、21000円という値段なので、私には買えません。

 鎌倉近代美術館の展示では、各地の美術館収蔵品のほか、大谷さんの画廊「かんらん舎」からの借用品が何点かありました。同じ作品でも、版画ですから、数点が並んでいるうち、美術館収蔵品とかんらん舎コレクションでは色調が微妙に異なっていたりして、版画作品は、何点も並べて見る必要があるなあと思いました。

 1978年1月~2月にかんらん舎で開催された「藤牧義夫遺作版画展」が、藤牧再評価のきっかけを作り、忘れられていた藤牧版画が再び評価されるようになりました。かんらん舎の画廊主大谷芳久さんは、版画家小野忠重から藤牧作品を譲り受けたそうです)。

 版画という媒体には、元版から複数枚を摺ります。同じ作品が何枚かあるのをいいことに、贋作もあったそうです。大谷さんは、自分が手がけた作品の中に、気づかないで売ってしまった贋作があったのではないかという疑念を抱きました。画廊主のプライドをかけて2000年から10年をかけて藤牧作品の真贋を追い続けてきました。『藤牧義夫 眞僞』は、その集大成です。
 贋作販売に手を染めて羞じない画廊主もいる中、「もしかしたら自分が販売した中に贋作も混じっていたのではないか」という後悔から、真贋研究を始めたというところに、美術に関わる人の心意気を感じました。

大谷は、著書『藤牧義夫 眞偽』の中で、藤牧の代表作「赤陽」が東京上野の松坂屋上層階から見た風景であることを明らかにしています。また、藤牧の失踪は、従来伝えられてきたような「病苦や貧困の果ての自殺」ではない、というのが大谷説です。
赤陽(東京国立近代美術館蔵)

 贋作で思い出した。以前ビッグコミックスピリッツで愛読していた、細野不二彦『ギャラリーフェイク』。アニメ版は見ていないので、どこかで再放送してくれたら、録画してみたいです。もひとつついでに、映画「ミケランジェロの暗号」も、ナチスのユダヤ人迫害と贋作をめぐる丁々発止でおもしろかった。
 
 私には買えないけれど、藤牧の版画を質の良い図版で見たいかたは、電話・FAX・e-mailで版元より直接購入。アマゾンでも「現在お取り扱いできません」になっていて、版元に直接注文する以外にないみたい。私もいつかお金に余裕ができたら買いたいから、メモをコピーしておきます。ただし、限定360部発行のところ、残部稀少。すでに売り切れたかもしれません。再版あるのかどうかもお問い合わせの上。
発行所・学藝書院 〒248-0013 鎌倉市材木座1-11-3
電話・FAX 0467(22)3062 e-mail / tojaku@m4.dion.ne.jp
21000円と郵送料の郵便振替口座は、00200-6-116021

つき『新版画』第12号所収1934年(神奈川県立近代美術館蔵)

 神奈川県立近代美術館と群馬県立館林美術館の共同編集による藤牧義夫年譜
http://www.gmat.gsn.ed.jp/ex/data/11fujimaki/fujimaki_nenpu.pdf

 藤牧義夫紹介サイト
http://yfujimaki.exblog.jp/
 上記サイトのトップ「玉乗りする猫の秘かな愉しみ」
http://furukawa.exblog.jp/

<つづく>
コメント (2)
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