2012/04/27
ぽかぽか春庭十二単日記>シニアデビュー(3)吉野せい&柴田トヨ、久木綾子
高齢になってから花開く人、あこがれです。
以下、紹介する女性三人の文学への道、それぞれにすばらしい。吉野せい、柴田トヨ、久木綾子。
私が若い頃は、吉野せいが「あこがれのシニア・デビュー」の作家でした。
吉野せい(1899- 1977)は、若い頃は小学校の教師をしながら作家をめざしていました。しかし詩人の吉野義也(三野混沌)と結婚後は、福島の原野で開墾にはげみ、夫が亡くなるまで子育てと開墾仕事に専念。1970年夫の死後、執筆を再開し、1974年『洟をたらした神』を出版。すばらしい本です。
私は、1973年に亡くなった母を思い浮かべつつ、泣き泣き『洟をたらした神』を読みました。そして、母の残した俳句や短歌を一冊の作品集にまとめ、ようやく母の早い死の衝撃から立ち直ることができました。
新藤兼人脚本、樫山文枝、岡田英次主演でテレビドラマ化された『洟をたらした神』は、12チャンネルから放送予定でしたが、原作になかった原発問題を脚本に取り入れたため、スポンサーからクレームがつき、オクラ入り。ついに、放映されませんでした。劇場公開版も、私は見ていません。今こそ、どこかの局で放映してほしいものです。
2010年は、柴田トヨさんの詩集『くじけないで』が100万部を超しました。90歳を過ぎてから詩作をはじめたトヨさん、2011年には第二詩集『百歳』を出版。今年6月には101歳を迎えます。
2012年、今年はなんといっても、久木綾子さんの小説『見残しの塔』が、シニア・デビューの話題作。
単行本発行時には気づかず、2012年1月に文庫になってから買いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/38/7b047b1ec3d5ab65e8cdac2d72a37ab5.jpg)
久木さんは、若い頃、作家志望でした。東京の同人誌に参加して勉強していましたが、山口県の男性と結婚後、専業主婦として家庭を守ることひとすじ。1989年にご主人がなくなり、70歳すぎて文筆活動を再開しました。
最初のテーマは、周防国五重塔縁起。山口市の瑠璃光寺の五重塔を作った人々について14年がかりで取材し構想を固め、4年かけて「文芸山口」に連載。歴史小説の大作です。2008年に単行本が出版されたとき、久木さんは89歳になっていました。
以下は、単行本に掲載された著者紹介です。
「久木綾子。1919年、東京生まれ。東京育ち。旧制高等女学校、専門学校卒。戦時下、陸軍情報局監理下に置かれた松竹大船撮影所報道部に記者として勤務したことがある。同じ頃、三笠書房社主竹内道之助氏主宰の同人誌『霜月会』の同人となり、小説を書き始める。終戦の年、山口県人の池田正と結婚。義母は、池田くら。福井県小浜市の新田長太郎の姉。長太郎は、昭和天皇に、「新田義貞の戦略」で御前講演をしたことがある。結婚後は主婦専業。平成元年、夫に先立たれ、再び文学に戻る。
文庫本に付け足された経歴情報。
1940年比叡山の里坊・理性院で後の天台座主即真周湛のもとで修行生活を一年送った後、松竹大船撮影所報道部勤務。夫死去後の1990年文学に戻る決意をし、『見残しの塔』執筆のための勉強。2008年『見残しの塔周防国五重塔縁起』2010年『禊の塔羽黒山五重塔仄聞』出版
久木さん、70歳から文学の道に戻り、89歳で出版。なんてすばらしいシニアデビューでしょう。若い頃の文学への情熱を夫の死後とりもどした、という点では、吉野せいと同じですが、歴史小説のための取材を14年、というのはマネできそうにありません。
『見残しの塔』、文庫になってすぐに買い、春休みに読もうと思ったのに、遊び歩く方が優先で、ツンドクのままになっています。(おでかけ先の電車読書用はどうしてもページ薄めのエッセイが多くなり、『見残しの塔』のような持ち重りのする分厚い本は後回しになるので)。夏休みにはぜひ。
山口県観光協会の写真「瑠璃光寺五重塔」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/8f/b844ee416a8ca75551887de6a714b7cd.jpg)
すばらしいシニア・デビューの先達の仕事を見れば、私なぞ還暦過ぎたとはいえ、ひよっこも同然。これからです!
<つづく>
ぽかぽか春庭十二単日記>シニアデビュー(3)吉野せい&柴田トヨ、久木綾子
高齢になってから花開く人、あこがれです。
以下、紹介する女性三人の文学への道、それぞれにすばらしい。吉野せい、柴田トヨ、久木綾子。
私が若い頃は、吉野せいが「あこがれのシニア・デビュー」の作家でした。
吉野せい(1899- 1977)は、若い頃は小学校の教師をしながら作家をめざしていました。しかし詩人の吉野義也(三野混沌)と結婚後は、福島の原野で開墾にはげみ、夫が亡くなるまで子育てと開墾仕事に専念。1970年夫の死後、執筆を再開し、1974年『洟をたらした神』を出版。すばらしい本です。
私は、1973年に亡くなった母を思い浮かべつつ、泣き泣き『洟をたらした神』を読みました。そして、母の残した俳句や短歌を一冊の作品集にまとめ、ようやく母の早い死の衝撃から立ち直ることができました。
新藤兼人脚本、樫山文枝、岡田英次主演でテレビドラマ化された『洟をたらした神』は、12チャンネルから放送予定でしたが、原作になかった原発問題を脚本に取り入れたため、スポンサーからクレームがつき、オクラ入り。ついに、放映されませんでした。劇場公開版も、私は見ていません。今こそ、どこかの局で放映してほしいものです。
2010年は、柴田トヨさんの詩集『くじけないで』が100万部を超しました。90歳を過ぎてから詩作をはじめたトヨさん、2011年には第二詩集『百歳』を出版。今年6月には101歳を迎えます。
2012年、今年はなんといっても、久木綾子さんの小説『見残しの塔』が、シニア・デビューの話題作。
単行本発行時には気づかず、2012年1月に文庫になってから買いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/38/7b047b1ec3d5ab65e8cdac2d72a37ab5.jpg)
久木さんは、若い頃、作家志望でした。東京の同人誌に参加して勉強していましたが、山口県の男性と結婚後、専業主婦として家庭を守ることひとすじ。1989年にご主人がなくなり、70歳すぎて文筆活動を再開しました。
最初のテーマは、周防国五重塔縁起。山口市の瑠璃光寺の五重塔を作った人々について14年がかりで取材し構想を固め、4年かけて「文芸山口」に連載。歴史小説の大作です。2008年に単行本が出版されたとき、久木さんは89歳になっていました。
以下は、単行本に掲載された著者紹介です。
「久木綾子。1919年、東京生まれ。東京育ち。旧制高等女学校、専門学校卒。戦時下、陸軍情報局監理下に置かれた松竹大船撮影所報道部に記者として勤務したことがある。同じ頃、三笠書房社主竹内道之助氏主宰の同人誌『霜月会』の同人となり、小説を書き始める。終戦の年、山口県人の池田正と結婚。義母は、池田くら。福井県小浜市の新田長太郎の姉。長太郎は、昭和天皇に、「新田義貞の戦略」で御前講演をしたことがある。結婚後は主婦専業。平成元年、夫に先立たれ、再び文学に戻る。
文庫本に付け足された経歴情報。
1940年比叡山の里坊・理性院で後の天台座主即真周湛のもとで修行生活を一年送った後、松竹大船撮影所報道部勤務。夫死去後の1990年文学に戻る決意をし、『見残しの塔』執筆のための勉強。2008年『見残しの塔周防国五重塔縁起』2010年『禊の塔羽黒山五重塔仄聞』出版
久木さん、70歳から文学の道に戻り、89歳で出版。なんてすばらしいシニアデビューでしょう。若い頃の文学への情熱を夫の死後とりもどした、という点では、吉野せいと同じですが、歴史小説のための取材を14年、というのはマネできそうにありません。
『見残しの塔』、文庫になってすぐに買い、春休みに読もうと思ったのに、遊び歩く方が優先で、ツンドクのままになっています。(おでかけ先の電車読書用はどうしてもページ薄めのエッセイが多くなり、『見残しの塔』のような持ち重りのする分厚い本は後回しになるので)。夏休みにはぜひ。
山口県観光協会の写真「瑠璃光寺五重塔」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/8f/b844ee416a8ca75551887de6a714b7cd.jpg)
すばらしいシニア・デビューの先達の仕事を見れば、私なぞ還暦過ぎたとはいえ、ひよっこも同然。これからです!
<つづく>