2012/04/17
ぽかぽか春庭@アート散歩>建物めぐり(1)酒類総合研究所の赤レンガ
JR王子駅の脇を音無川が流れています。音無川は、石神井川から水をひいた江戸時代からの用水路で、王子神社と南の飛鳥山の間でせき止め東へ流した農業用水でした。王子周辺に農地など皆無になり、下水が流れる川となっていましたが、現在は水の浄化装置ができ、王子駅前の親水公園となっています。水車などが置かれ、水遊びのできる公園として整備されています。
音無橋の南側の飛鳥山公園は、江戸時代から桜の名所。土日に満開になると押すな押すなの人混みで、ビニールシートを広げる隙間もないくらいですから、飛鳥山はぐるっと歩いてまわり、一休みして宴を繰り広げるに音無川の親水公園のほうががよい、という花見客も多い。
音無川で花見する人々 音無親水公園のトイレ
音無橋の脇の桜並木の細道を通って南西に歩くとすぐ、旧醸造試験所があります。明治37年(1904年)、大蔵省の施設として建設され、酒類醸造の試験と講習を行ってきました。1995年以後は国税庁醸造研究所に、2001年には独立法人酒類総合研究所となりました。組織はくるくる変わったけれど、ずっと変わらずに北区の名所となってきたのが、醸造研究所のレンガの建物です。
建物見学は私の趣味のひとつですが、近代建築のなかでもレンガの建物がことに好き。醸造研究所は、1年に1度、4月上旬の金曜土曜に内部の一般公開を行っているのですが、私はなかなか日にちが合わなくて、内部を見たことがありませんでした。今年はじめて春休み中の内部公開に間に合いました。この酒類総合研究所東京事務所では、日頃はお酒の商品テストをしているそうです。4月6日、六義園、飛鳥山の桜を見たあと、一般公開に行きました。
醸造研究所レンガ造りの建物を設計した妻木頼黄(つまきよりなか1859(安政6) - 1916年(大正5))は、ジョサイア・コンドルの弟子。明治時代の官庁建築を設計施工し、官庁営繕組織を確立した人です。醸造試験所は、1904年、ドイツのビール工場を参考にして建てられたそうです。建物の西側は醸造試験所跡地公園として整備されて開放されており、外観は一年中見ることができます。
内部見学では、醸造に関するパネルや醸造実験道具が展示され、さらに、研究所でできた日本酒の試飲がありました。うれし。小さなコップにつがれたお酒、アルコール度数は19度くらいあるという説明だったけれど、ビールよりさらりとした飲み口で、くいくい飲めてしまいました。「あら、おいしい、もう一杯もらってもいい?」というと、「どうぞどうぞ」と、普段は謹厳実直に酒造りの研究に励んでいるであろう研究員が勧めてくれました。で、もう一杯。おいしい飲み口のお酒、まだ名前がない、というので、私が「百年赤煉瓦」と命名提案しました。採用されないと思うけど。
酒類研究所内部
二杯も飲んだのだから、何かお酒に関する質問でもして、研究の一端を披瀝してもらおうと思ったのですが、私がしたのは「あの~、醸造研究をしているひとの中に、下戸はいますか」というくだらない質問。お答えは「アルコールがダメな人もいます」というものでした。あ~あ、せっかく醸造研究所で研究しているのに、飲めない人ってかわいそう。
腕にお酒を含んだパッチを貼って、アルコール分解が体内でできるかどうか検査するコーナーで、パッチを貼る係の人の顔に見覚えがあります。腕にパッチを貼って貰いながら、「あの、失礼ですがこの研究所の職員の方ですか、それとも北区の職員さん?」と尋ねると、「先生、お声がけしていいものやら迷っていたのですが、いつもは○○大学講師室におります。今日は臨時のお手伝いです」とのこと。あらま、毎週顔を見ていた人なのに、ぜんぜん違う場所で会ったので、どっかで見た人だ、ということしか思い浮かばず失礼いたしました。2杯も飲むからだよ!「新学期からもよろしくおねがいします」と挨拶して研究所をあとにしました。
<つづく>