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ぽかぽか春庭「ああ無情」

2013-01-20 12:08:57 | エッセイ、コラム
2013/01/20
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十三里日記 1月(3)東京の「ああ無情」

 一昨日18日は「センター試験準備日」で、授業は休講。良いヨメならば、こういうときはすぐにも姑のところへ駆けつけて「日頃お世話ができず申し訳ございません。今日は家事全般お手伝いとお話相手を果たすべく参上つかまつりました」と言うのだろうけれど。

 月に一回になった姑病院検査のお供を娘にまかせてしまって、ルンルンと映画見物に出かけました。日頃夫の会社福利厚生用「映画パスポート」をつかえる映画館でしか映画を見ないので、久しぶりにお金を出して見る映画です。シネコン(シネマコンプレックス複合映画館)とやらに入るのも久しぶり。

 8つのスクリーンがある映画館で、私は100席ほどのNo.4のスクリーンへ。平日午前中だから、客は20人くらいでした。アカデミー賞8部門にノミネートされている映画でも、平日の観客はこのくらいなんだなあとあたりを見回しました。
 『レ・ミゼラブル』とてもよかった。アン・ハサウェイが歌う『夢を夢みて』も身にしみたし、ラストシーンの群衆の大合唱、泣けました。

アン・ハサウェイの歌う「 I Dreamed a Dream - Les Miserables 」
http://www.youtube.com/watch?v=F2AE2aL0-6Y

 で、スーザン・ボイルがオーディション番組で歌い2009年の紅白でも歌った「夢を夢見て」なんぞ口すさみながら帰宅。
♪I dreamed a dream in time gone by~
 あれ、息子がいません。出かけるなんて言っていなかったのに。

 私が出かけるときには「成績優秀者への育英奨学金減免制度」に応募するのだと書類を書いていたのに。へぇ、そんな制度ができたんだ。未だに奨学金の返済を続けている私。私の二度目の大学と大学院での育英奨学金、学費ではありませんでした。学費は大学に免除してもらえたのですが、娘が2歳のときから、私の育英奨学金はすべて家計費。奨学金で食べている母子でした。
 娘が借りた育英奨学金は、夫が会社運転資金に流用しちゃいました。娘は、「私の名前で借りた借金だけれど、父が返済すべきでしょう」と言います。もっともなことです。息子の奨学金だけが、まともな「学費」です。それも返済金減免して貰える制度ができたとは。

 息子は、娘に呼び出されて姑宅へ行き、泊まることになった、という連絡。姑は病院で各種検査を受けている内に気分が悪くなり、病院はノロウィルスなどを疑って緊急に追加の検査などをしたのですが、ウィルス性のものではない、ということで胃薬だけ処方されて帰宅したそうです。

 19日朝、娘からの電話で「ニョンは、大学に書類出しにいかなくちゃならないんで、午前中に帰るから、母、こっちに来て」というので、朝ご飯も食べずに駆けつけて、息子と看病交替しました。
 姑は一晩寝たらだいぶ回復して、朝9時から午後3時まで昔話やら親戚だれそれの消息だのずっとしゃべりっぱなしでした。よくもあれだけ連続してしゃべり続けることができるなあと、日頃人としゃべるのが苦手で、おしゃべりするかわりに文に書くわたしは、感心します。

 娘は、おばあちゃんの話を聞くのがじょうずで、ぐるぐる同じ話が繰り返されて「無限ループ」になったり、「その話、今日きくのは3回目」ということになっても、相づちをうちながら聞いています。よく出来た孫だ、と私は思うのですが、姑に言わせると「期待はずれの孫4人のうちのひとり」なのだそうです。娘はそう言われているのを知っても「おばあちゃんらしい言いぐさ」と達観しています。

 娘は一晩お相手をして少々くたびれたので、19日は、居眠りをしながら聞いていて、私が、お相手。「ノブさんがね」とか「まどかちゃんがどうこう」という話を聞いて、そのノブさんもまどかちゃんも私はまったく知らない山形の親戚なのですが、話がつながらないまま、「うん、うん、そうですか」と聞いている。

 話の合間に、18日19日の分の姑の服を洗濯する。私は仕事をしている間の1週間分くらいは平気で洗濯物をためてしまい、週末にまとめてするのですが、姑はその日の分を毎日洗ってしまわないと気になってしまう、昔気質なのです。
 姑の服、2日分なのに、びっくりするくらいたくさん着込んでいました。私の伯母もそうでしたが、冬になると、めちゃくちゃたくさん下着を着込むのです。下履きだけでも、パンツ。長パンツ(ズロースっていうのかな)、ももひき、毛糸のパンツ、ズボン。上はもっと。

 娘は、自分でおばあちゃんの服を洗濯しようと思ったのですが、「わたし2槽式の洗濯機でどうやればいいのかわからないから、母がやって」と言って、私を呼び出したのです。姑は昔ながらの2槽式で排水も給水も手動でやるタイプを使っています。わが家は、娘が幼いときに全自動に買い換えたので、娘は全自動しか知らないのです。働きながら大学院へ行きつつ子育てをした私にとって、全自動洗濯機ほどありがたい味方はなかった。

 姑にも何度も「全自動、便利ですよ」と言ったのですが、「これが壊れたらね」と言って、古いタイプを使い続けています。もう何十年も壊れないでいる「当たり家電」のひとつです。

 洗濯機も何十年も生き続けたけれど、姑は「もっともっと長生きする」のが夢です。姑はノーベル賞の山中教授が大好き。iP細胞の研究が臨床で成功してガンも治るようになることを夢見ています。

 姑の夢、「もっともっと長生きすること」。夢がかなうといいね。
 私の「夢」は、あれもこれも実現しなかったけれど。
 夢が破れつづけた人生だったけれど、まあ、これも人生。ああ、無情。

 フランス語のレ・ミゼラブルを「ああ無情」と訳したのは、黒岩涙香です。レミゼラブルの翻案小説『噫無情(ああむじょう)』
 私、10歳ごろに読んで以来、読み直したことない。たぶん、子ども向けの世界文学全集の中の一冊だったでしょう。「アーム・ジョー」という人の話だと思って読み始めたら、じゃん・ばる・じゃんという人の話でした。

 「あら、せっかくの休みの日に体を休められないで、働かせちゃって悪かったわね」という姑の声に送られて、午後3時半に姑宅を出ました。夫は仕事が終わり次第来るということでしたが、娘もいることだし、洗濯ほしたらもういいかなと。

♪And still I dream he'll come to me.
 That we will live the years together
「私は夢見る あの人が 共に人生を歩んでくれると」なんていう夢はやぶれ、一人で勝手に生きている夫だけれど、「ああ無情」の世でも人は生き続ける。

 I Dreamed a Dream (夢を夢見て 邦題「夢やぶれて)」
I dreamed a dream in time gone by 過ぎ去りし日の夢
When hope was high And life worth living 希み高く、生きがいに満ちていた
I dreamed that love would never die とわの愛を夢みることを
I dreamed that God would be forgiving 神もお許しになろうと

Then I was young and unafraid 若くて怖さ知らずだった私
And dreams were made and used and wasted 夢見て、そして夢破れた
There was no ransom to be paid 生き抜くための身代金を払うこともできず
No song unsung. no wine untasted 歌は歌い尽くし 酒も飲み干した 

But the tigers come at night でも、虎は夜やって来る
With their voices soft as thunder 雷のように低くうなりながら 
As they tear your hope apart 希望を八つ裂きにし
And they trun your dream to shame 夢も恥と変わる

And still I dream he'll come to me 私はいまだに夢を見る あの人が
That we will live the years together 共に人生を歩んでくれると
But there are dreams that cannot be でも、それはかなわない夢
And there are storms we cannot weather 避けきれぬ嵐のなかで

I had a dream my life would be かって夢見たのとは
So different from this hell I'm living まるで違う、こんな地獄で暮らすとは
So different now from what it seemed 思ってもいなかった今の姿

Now life has killed the dream I dreamed 夢やぶれし 我が人生

 帰宅してから、全自動で洗濯。1週間分。昨日は、休みだったけど、映画見に行って洗濯サボったからね。今日はせっせと洗濯。あらま、洗剤がきれてる。じゃ、またあした。夢破れし我が人生は、あしたの洗濯で洗い流そう。

<つづく>
コメント (6)
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