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ぽかぽか春庭「東京の遠吠え」

2013-01-19 08:08:39 | エッセイ、コラム
2013/01/19
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十三里日記 1月(2)東京の遠吠え

 子どもの頃、夕方になるとあちこちの家の飼い犬がいっせいに吠えだすのが、「子どもはもう外にいちゃいけないよ、帰らないと狼が来て食べちゃうよ」という合図でした。
 この鳴き声を聞くと、犬の声だとわかっていても、やはり夜は恐ろしく、狼に食べられるかも知れないという気になるのでした。

 東京では、さっぱり犬がいっせいに遠吠え大会に参加するなんて、聞くことがなくなりました。一戸建ての多い地域ならどうかわかりませんが、マンションアパートが連なる地区だと、部屋飼いの犬は声帯を切除してムダ吠えしないように処置すると聞いたことがありますし、部屋ごとに締め切って飼われている犬は、他の犬の遠吠えなんぞ耳にする機会もなく、「みんなでいっせいに吠える」ということは東京ではできないのじゃないかしら。

 久しぶりに遠吠えを聞いたのです。それも、生まれて初めての「本物の狼の遠吠え」。
 多摩動物園の午後4時すぎのことでした。
 動物園が好きなので、ときどき上野動物園や多摩動物園に出かけます。ウォーン、ウォーンという声を聞いて、あれ?動物園で犬が鳴く?と思ったのですが、声に近づいてみたら、それは狼舎からの声でした。

 2001年に日本に交換寄贈されたヨーロッパ狼。雌のモロ(1998生)と雄のロボ(2000生)の夫婦から次々に子が生まれ、今は11頭の群れになっています。(12頭目は、別室隔離飼育中。たぶん、体が弱くて家族の誰かからイジメにあったため)

 2003年頃から、朝9:30の開園チャイムが鳴るとそれに合わせて遠吠えを始めるようになりました。しかし、朝9:30の開園チャイムと同時の遠吠えスタートだと、開園と同時に入園しても、観客はこのシーンを見ることはできませんでした。

 今では、夕方の「あと○分で閉園となります」というときの放送にも合わせての遠吠えもするようになり、閉園まぎわまで園内にいた客は、この遠吠えを聞けるようになったのです。youtubeにも、いろいろな人が撮影したビデオ映像で遠吠え合唱を聴くことができます。

東京Zooネットの動画
http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/1012_01/index.html

 私も、何度も多摩動物園に「ひとり動物園さんぽ」に来ていたのですが、これまで狼遠吠えを聞くチャンスがありませんでした。1月7日、仕事帰りにふらりと寄って、はじめて、夕方の大合唱を聞くことができました。4時すぎだったと思いますが、帰りかけたとき、ウォーンウォーンという遠吠えが響きました。声が聞こえるほうへ行くと、狼たちがいっせいに口を天に向けて大合唱していたのです。


 この狼遠吠えは、前回多摩に来たとき見た多摩動物園の新名物「オランウータンの綱渡り」と並んで「多摩名物」になっているらしく、カメラやビデオを構えた人が集まっていました。毎日動物園に通って、一匹一匹のダイアリーをブログに載せている動物園ファンもいるらしく、顔なじみらしい人たちは「今日は、今日は○○(狼の名前)が、あまり気をいれて吠えていませんね」なんて論評しています。11頭の名前と見た目の特徴を書いたパネルが狼舎の前に掲示してあるのですが、「狼ツウ」の人たちは、一頭ごとに識別できるようです。

 私は、どれがどれやら区別なんかできません。童話の世界では悪者にされる狼ですが、シートンの「狼王ロボ」が大好きでしたし、役所広司主演の日本ソ連共同製作の映画『オーロラの下で』を見たこともあって、狼も嫌いじゃありませんけれど、一頭一頭識別するには、毎日かよって狼一家を見続けないと。見分けることができるくらいになると、それぞれ個性があって、観察していくと面白いみたいです。


 「みなでいっせに遠吠えする」という動物本来の習性が、動物園飼育でもちゃんと残されていることがわかってよかった。はじめて聞いた生の遠吠え、またそのうち聞きに行きたいです。

<つづく> 
コメント (9)
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