2013/01/26
ぽかぽか春庭@アート散歩>2012-2013冬のアート散歩(2)文化学園博物館&東郷青児美術館
冬のアート散歩。年末、新宿に出かけました。新宿南口のイルミネーションを見たいなあと思ったのですが、電飾だけを目的に出かけるのじゃ、なんだか交通費ももったいない気がする貧乏性。高島屋で買い物もせず紀伊國屋で本も買わないのに、電飾だけ見て帰るのでは、電車賃かけるのが申し訳ない気がしてしまう。恋人同士でキラキライルミネーション見るならともかく、ひとりでって、と思う。
見たいならとやかく言わずにちゃっちゃと見たらいいじゃない、と言うのは、お一人様貧乏症の心理がわからないお金持ち。お一人様でもお金持ちとか、貧乏症でも二人連れとかだったらちゃっちゃっとおでかけも出来るのでしょうけど。
で、美術展に行ったついでに見た、ということにしたいと、新宿の美術館なら東郷青児美術館かな、と、出かけました。
東郷青児美術館は、2012年はシダネル展を見て、今まで知らなかった画家を知ってとてもよかった。今回は、美術館の所蔵作品展で、「絵画をめぐる7つの迷宮」というテーマで、「芸術は迷宮のようなもの」というコンセプトで絵が並んでいました。絵画の迷宮ほか、人物、描写、妖精、画家、色と形、風景などに分けられた70点の絵。
そもそも東郷青児の絵があまり好きではないので、常設展をみたいとおもわないのですが、ゴッホのひまわりやセザンヌ、ゴーギャンの3点の目玉展示はいい。そして、目玉以外で「この一枚に巡り会えてよかった」と思えるほどの絵には、今回は出会いませんでした。常設展示のグランマモーゼスやひまわりを見るだけでもいいと思うのですけれど、ぐるりと見て回った中に、「おお、今回のアート散歩、この一枚に出会ってよかった」と思える絵に出会うことがないと寂しい。
文化学園服飾博物館で、「織りの服、染めの服」という展示を見ました。布の仕事を見るのが好きなので、染め物織物の手仕事の展示、何度同じような展示を見ても飽きることがありません。
世界各地の民族衣装の織り方、染め方。様々な技法があり、色があり、人々が大切に糸を繰り、色を染め、織り上げる過程を知るのが楽しい。
2011年の夏に見たときの館内


館の説明では。
「衣服を形作るとき、使用する布地の質感、文様、色はその印象を大きく左右します。それらは織り糸の種類や織り方、また布地を染める方法によっても変化します。本展では、日本の着物や世界各地の民族衣装の中に、さまざまな織りや染めの技法を見ていきます。織りでは、平織、綾織といった基礎的な織物から、糸の織り込み方によって文様を表わす紋織物までを、また、染めでは、絞り染や木版染など古代から続く比較的単純なものから、化学的ともいえる複雑な工程を経る多色染めまでを紹介します」という展示です。
中国の蟒袍(部分) 綴織 19世紀末

蟒袍mǎngpáoとは、明清代に大臣が着た礼服です。金色の蟒(想像上の大蛇、龍)の刺繡のある礼服。決まり事で階級を細かく表した清朝では、一品~三品は、九蟒五爪(5本の爪を持つ9匹の龍、大蛇)、四品~六品は、八蟒五爪、七品~九品は、五蟒四爪。
同じような柄に見えますが、臣下のは大蛇で、皇帝皇后の「龍袍」は、特別な龍だということですが、私の目には大蛇と龍の区別はつきません。皇帝用の5つの爪の龍のデザインを臣下が着ることは許されず、4爪だったとのこと。皇帝が5本爪の服を臣下に下賜するとき、臣下としては天にも上るような名誉と思ったことでしょう。
布の仕事、染め色の仕上がりにも、織りや刺繍にも、仕立てにも、ひとつひとつの工程が想像され、そこに携わったたくさんの手が思い浮かびます。
私は、ファッションとして自分が着る衣裳にはまったく興味がわかず、夏は裸でなければよい、冬は寒くなければよいという以上の好みはないのですが、こうして眺めているのには、自分では住むことのない住宅を、「たてもの園」などで眺めるのと同じことで、自分では着ることがなくてもいいのです。布のしごと、衣の仕事は、ほんとうに眺めていて楽しい。
権力者の豪奢な衣服に目を見張ることもあるし、日常着として毎日の暮らしの中に着つづけられた素朴な民族衣装も好き。一生一度の花嫁衣装に、嫁入り前の娘が一針ひと針、心を込めて縫い上げた晴れ着にも心うたれます。
キラ 縫取織 ブータン 1970-80年代
<つづく>
ぽかぽか春庭@アート散歩>2012-2013冬のアート散歩(2)文化学園博物館&東郷青児美術館
冬のアート散歩。年末、新宿に出かけました。新宿南口のイルミネーションを見たいなあと思ったのですが、電飾だけを目的に出かけるのじゃ、なんだか交通費ももったいない気がする貧乏性。高島屋で買い物もせず紀伊國屋で本も買わないのに、電飾だけ見て帰るのでは、電車賃かけるのが申し訳ない気がしてしまう。恋人同士でキラキライルミネーション見るならともかく、ひとりでって、と思う。
見たいならとやかく言わずにちゃっちゃと見たらいいじゃない、と言うのは、お一人様貧乏症の心理がわからないお金持ち。お一人様でもお金持ちとか、貧乏症でも二人連れとかだったらちゃっちゃっとおでかけも出来るのでしょうけど。
で、美術展に行ったついでに見た、ということにしたいと、新宿の美術館なら東郷青児美術館かな、と、出かけました。
東郷青児美術館は、2012年はシダネル展を見て、今まで知らなかった画家を知ってとてもよかった。今回は、美術館の所蔵作品展で、「絵画をめぐる7つの迷宮」というテーマで、「芸術は迷宮のようなもの」というコンセプトで絵が並んでいました。絵画の迷宮ほか、人物、描写、妖精、画家、色と形、風景などに分けられた70点の絵。
そもそも東郷青児の絵があまり好きではないので、常設展をみたいとおもわないのですが、ゴッホのひまわりやセザンヌ、ゴーギャンの3点の目玉展示はいい。そして、目玉以外で「この一枚に巡り会えてよかった」と思えるほどの絵には、今回は出会いませんでした。常設展示のグランマモーゼスやひまわりを見るだけでもいいと思うのですけれど、ぐるりと見て回った中に、「おお、今回のアート散歩、この一枚に出会ってよかった」と思える絵に出会うことがないと寂しい。
文化学園服飾博物館で、「織りの服、染めの服」という展示を見ました。布の仕事を見るのが好きなので、染め物織物の手仕事の展示、何度同じような展示を見ても飽きることがありません。
世界各地の民族衣装の織り方、染め方。様々な技法があり、色があり、人々が大切に糸を繰り、色を染め、織り上げる過程を知るのが楽しい。
2011年の夏に見たときの館内


館の説明では。
「衣服を形作るとき、使用する布地の質感、文様、色はその印象を大きく左右します。それらは織り糸の種類や織り方、また布地を染める方法によっても変化します。本展では、日本の着物や世界各地の民族衣装の中に、さまざまな織りや染めの技法を見ていきます。織りでは、平織、綾織といった基礎的な織物から、糸の織り込み方によって文様を表わす紋織物までを、また、染めでは、絞り染や木版染など古代から続く比較的単純なものから、化学的ともいえる複雑な工程を経る多色染めまでを紹介します」という展示です。
中国の蟒袍(部分) 綴織 19世紀末

蟒袍mǎngpáoとは、明清代に大臣が着た礼服です。金色の蟒(想像上の大蛇、龍)の刺繡のある礼服。決まり事で階級を細かく表した清朝では、一品~三品は、九蟒五爪(5本の爪を持つ9匹の龍、大蛇)、四品~六品は、八蟒五爪、七品~九品は、五蟒四爪。
同じような柄に見えますが、臣下のは大蛇で、皇帝皇后の「龍袍」は、特別な龍だということですが、私の目には大蛇と龍の区別はつきません。皇帝用の5つの爪の龍のデザインを臣下が着ることは許されず、4爪だったとのこと。皇帝が5本爪の服を臣下に下賜するとき、臣下としては天にも上るような名誉と思ったことでしょう。
布の仕事、染め色の仕上がりにも、織りや刺繍にも、仕立てにも、ひとつひとつの工程が想像され、そこに携わったたくさんの手が思い浮かびます。
私は、ファッションとして自分が着る衣裳にはまったく興味がわかず、夏は裸でなければよい、冬は寒くなければよいという以上の好みはないのですが、こうして眺めているのには、自分では住むことのない住宅を、「たてもの園」などで眺めるのと同じことで、自分では着ることがなくてもいいのです。布のしごと、衣の仕事は、ほんとうに眺めていて楽しい。
権力者の豪奢な衣服に目を見張ることもあるし、日常着として毎日の暮らしの中に着つづけられた素朴な民族衣装も好き。一生一度の花嫁衣装に、嫁入り前の娘が一針ひと針、心を込めて縫い上げた晴れ着にも心うたれます。
キラ 縫取織 ブータン 1970-80年代

<つづく>