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ぽかぽか春庭「明治の春」

2013-03-02 00:00:01 | エッセイ、コラム
東御苑の十月桜

2013/03/02
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春のうた(1)明治の春

 必ずしも明治年間に作られた短歌ばかりではありませんが、イメージとしての「明治の春」です。

<明治の春>
・立ち渡る霞をみれば足引きの山にも野にも春は来にけむ 樋口一葉
・わたつ海の波のいづこに立ち初て果なくつゝむ春の霞ぞ 同
・見し花のかげ消えてゆく春山のゆふがすみこそ心ぼそけれ 同
・故郷にかへる心やいそぐらん友も待ちあへぬ春のかりがね 同
・のどかなるとこ世の春にかへるらん雲路に消ゆる天つかりがね 同
・つれづれと雨ふりくらす春の日の夕べはわきてのどけかりけり 同
・何事のおもひありやと問ふほどの友得まほしき春のよの月 同
・春浅き園の若草若ければおふしもたてよつみはゆるして 同

花蘇芳

・その子二十櫛に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな 与謝野晶子
・清水へ祇園をよぎる花月夜こよひ逢ふ人みな美しき 同
・春三月柱(ぢ)おかぬ琴に音立てぬ触れしそぞろの我が乱れ髪 同
・人かへさず暮れむの春の宵ごこち小琴にもたす乱れ乱れ髮 同
・くれの春隣すむ画師うつくしき今朝山吹に声わかかりし 同
・春をおなじ急瀬さばしる若鮎の釣緒の細うくれなゐならぬ 同
・下京や紅屋が門をくぐりたる男かわゆし春の夜の月 同
・春の宵をちひさく撞きて鐘を下りぬ二十七段堂のきざはし 同
・春の小川うれしの夢に人遠き朝を絵の具の紅き流さむ 同
・ゆく水に柳に春ぞなつかしき思はれ人に外ならぬ我れ 同
・きけな神恋はすみれの紫にゆふべの春の讚嘆のこゑ 同
・そと祕めし春のゆふべのちさき夢はぐれさせつる十三絃よ 同
・経はにがし春のゆふべを奧の院の二十五菩薩歌うけたまへ 同

道ばたのたんぽぽ

・戸な引きそ戸の面は今しゆく春のかなしさ満てり来よ何か泣く 若山牧水
・春や白昼日はうららかに額にさす涙ながして海あふぐ子の 同
・誰ぞ誰ぞ誰ぞわがこころ鼓つ春の日の更けゆく海の琴にあはせて 同
・海の声そらにまよへり春の日のその声のなかに白鳥の浮く 同
・海あをし青一しづく日の瞳に点じて春のそら匂はせむ 同
・春の海ほのかにふるふ額伏せて泣く夜のさまの誰が髪に似る  同
・いづくにか少女泣くらむその眸のうれひ湛えて春の海凪ぐ 同
・煙たつ野ずえの空へ野樹いまだ芽ふかぬ春のうるめるそらへ 同
・春の夜や誰ぞまた寝ぬ厨なる甕に水さす音のしめやかに 同
・天地の春たけなはに遠地こちと蛙鳴く野や昼静かなる 同

府中の森の紅梅

・春雨のふた日ふりしき背戸畑のねぎの青鉾なみ立ちてけり 伊藤左千夫
・なぐさみに植ゑたる庭の葉広菜に白玉置きて春雨のふる
・春雨の夜を一人居り心ぐく歌思へどもまとまりかねつ

・春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕 北原白秋
・かくまでも黒くかなしき色やあるわが思ふひとの春のまなざし 同
・ゆく水に赤き日のさし水ぐるま春の川瀬にやまずめぐるも 同
・白き犬水に飛び入るうつくしさ鳥鳴く鳥鳴く春の川瀬に 同
・我が内障眼すべないたはり日も暗し春早き外に土旋風巻く 同
・春田中ねもごろ人のいふ聴けばげんげは遅し菫いま咲く 同
・春浅み背戸の水田のみどり葉の根芹は馬に食べられにけり 同
・春といへどまだ寒むからし茨の葉に面寄する馬の太く嚏る 同


芭蕉庵へ行く途中の小名木川ぞいの散歩道に咲くアロエの花


<三月の句>
・いきいきと三月生まる雲の奥 飯田龍太
・三月やモナリザを売る石畳 秋元不死男
・三月の花の明かりや在原寺 角川源義
・三月の鳩栗羽を先ず飛ばす 石田波郷
・三月の声のかかりし明るさよ 富安風生
・三月やともかく越えて来たる日々 稲畑汀子
・三月や崩れて崖の匂いつつ 坪内稔典



佐保姫の春
佐保姫の糸染め掛くる青柳を吹きな乱りそ春の山風 平兼盛『詞花集』
佐保姫の霞の衣ぬきをうすみ花の錦をたちやかさねむ  後鳥羽院『後鳥羽院御集』

・三月の春今生れなんとし佐保姫あなたも産みを苦しむか 春庭
・佐保姫の糸染め縫うて山肌の薄緑にぞけむりし明け方 春庭

<つづく>
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