近代美術館工芸館の雛

鹿児島寿蔵(1898~1982) 「紙塑人形 延寿雛」 紙塑 1957年
2013/03/03
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春のうた(2)ひなの歌

<雛の句>
・昼の灯の二階に上がる雛の店 高浜虚子
・菱餅や己れ憫れむ棚飾り 石塚友二
・夢色の雛のあられと膨れつつ 石塚友二
・水軍の古墳見てきて雛の酒 角川源義
・立ち雛の面輪匂ひて眉目あり 水原秋桜子
・碧空に山するどくて雛祭り 飯田蛇笏
・明るくてまだ冷たくて流し雛 森澄雄
・流し雛見えなくなりて子の手とる 能村登四郎
・折り上げてひとつは寂し紙雛 三橋鷹女
・雛飾る手の数珠しばしはずしおき 瀬戸内寂聴
・雪道を雛箱かつぎ母の来る 室尾再生
・葛城の雨脚はやし雛の夜 有馬朗人
・雛の間の更けて寂しき畳かな 高浜年尾
近代美術館工芸館の人形は、どれも美しく魅力的です。
鹿児島寿蔵 紙塑人形 さぬのちがみのおとめ 1960

<雛の歌>
・古雛をかざりひ ゝなの繪を掛けしその床の間に向ひてすわりぬ 長塚節
・はうらつにたのしく酔へば帰りきて長く坐れり夜の雛の前 宮柊二
・い寝よとぞ母は言へども孤りして雛にむかひてわが少女遊ぶ 宮柊二
・雛飾る部屋の暗さよ人形の白き顔にはほくろのなくて 栗木京子
春庭が子どもの頃母といっしょに飾っていたのも、こんな形の藤娘の舞踊人形でした。もちろん、こんな人間国宝級の高級なのじゃなかったけれど。

<ネットでみつけた回文短歌の「雛」>
・なびく髪 目緩みし我が子 ねだるカルタ 猫かわし見る 夢磨く雛
(なびくかみ めゆるみしわがこ ねだるかるた ねこかわしみる ゆめみがくひな)
母子の人形もすてき
春庭が作った回文短歌「雛」(仮名遣いは、いいかげんです)
・ミルク飲み人形 飾りて 雛も無ひ 照り咲かうよ 金に身の包(くる)み
(みるくのみ にんきよう かさりて ひなもなひ てりさかうよ きんにみのくるみ)
戦後のもののない時代に、それでも両親がなんとか飾り上げたわが家の雛段でした。毎年、母と三姉妹でひな壇を飾るのが楽しみだったけれど、一番上の御殿の内裏びな人形は、妹の初節句祝いの雛。私の雛は、「胡蝶」「藤娘」などの舞踊人形のみ。私は大事な遊び相手のミルク飲み人形も飾りました。御殿に立てた金屏風は日に照り、私の人形も金色に身をくるんでいました。昭和三十年代の田舎家の雛祭りです。
空模様を見上げる粋な女性の姿
大林蘇乃「西銀座昼の月」1962年
こちらは、デパートで売り物の展示
ちょっとそっぽを向き合っているように並んでいたので、ぱちり
女雛は何をすねてちょこっと横を向いているのかしらね。

・雛千体並べし観光地の川に紙雛そっと流れて三月 春庭
・柔らかき三月の光浴びそめてひいなの顔は亡き姉の顔 春庭
<おわり>


鹿児島寿蔵(1898~1982) 「紙塑人形 延寿雛」 紙塑 1957年
2013/03/03
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春のうた(2)ひなの歌

<雛の句>
・昼の灯の二階に上がる雛の店 高浜虚子
・菱餅や己れ憫れむ棚飾り 石塚友二
・夢色の雛のあられと膨れつつ 石塚友二
・水軍の古墳見てきて雛の酒 角川源義
・立ち雛の面輪匂ひて眉目あり 水原秋桜子
・碧空に山するどくて雛祭り 飯田蛇笏
・明るくてまだ冷たくて流し雛 森澄雄
・流し雛見えなくなりて子の手とる 能村登四郎
・折り上げてひとつは寂し紙雛 三橋鷹女
・雛飾る手の数珠しばしはずしおき 瀬戸内寂聴
・雪道を雛箱かつぎ母の来る 室尾再生
・葛城の雨脚はやし雛の夜 有馬朗人
・雛の間の更けて寂しき畳かな 高浜年尾
近代美術館工芸館の人形は、どれも美しく魅力的です。
鹿児島寿蔵 紙塑人形 さぬのちがみのおとめ 1960

<雛の歌>
・古雛をかざりひ ゝなの繪を掛けしその床の間に向ひてすわりぬ 長塚節
・はうらつにたのしく酔へば帰りきて長く坐れり夜の雛の前 宮柊二
・い寝よとぞ母は言へども孤りして雛にむかひてわが少女遊ぶ 宮柊二
・雛飾る部屋の暗さよ人形の白き顔にはほくろのなくて 栗木京子
春庭が子どもの頃母といっしょに飾っていたのも、こんな形の藤娘の舞踊人形でした。もちろん、こんな人間国宝級の高級なのじゃなかったけれど。

<ネットでみつけた回文短歌の「雛」>
・なびく髪 目緩みし我が子 ねだるカルタ 猫かわし見る 夢磨く雛
(なびくかみ めゆるみしわがこ ねだるかるた ねこかわしみる ゆめみがくひな)
母子の人形もすてき

春庭が作った回文短歌「雛」(仮名遣いは、いいかげんです)
・ミルク飲み人形 飾りて 雛も無ひ 照り咲かうよ 金に身の包(くる)み
(みるくのみ にんきよう かさりて ひなもなひ てりさかうよ きんにみのくるみ)
戦後のもののない時代に、それでも両親がなんとか飾り上げたわが家の雛段でした。毎年、母と三姉妹でひな壇を飾るのが楽しみだったけれど、一番上の御殿の内裏びな人形は、妹の初節句祝いの雛。私の雛は、「胡蝶」「藤娘」などの舞踊人形のみ。私は大事な遊び相手のミルク飲み人形も飾りました。御殿に立てた金屏風は日に照り、私の人形も金色に身をくるんでいました。昭和三十年代の田舎家の雛祭りです。
空模様を見上げる粋な女性の姿
大林蘇乃「西銀座昼の月」1962年

こちらは、デパートで売り物の展示
ちょっとそっぽを向き合っているように並んでいたので、ぱちり
女雛は何をすねてちょこっと横を向いているのかしらね。

・雛千体並べし観光地の川に紙雛そっと流れて三月 春庭
・柔らかき三月の光浴びそめてひいなの顔は亡き姉の顔 春庭
<おわり>
