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ぽかぽか春庭「とりどりのおしゃべり-文鳥十姉妹カラス」

2013-07-28 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/07/28
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2013サマーディナー(2)とりどりのおしゃべり-文鳥十姉妹カラス

 旧友K子さんと、ひさしぶりのおしゃべりタイム。7月25日、芸劇ロビーでの待ち合わせて、K子さんのマンションへ。
 前回のおしゃべりで、K子さんが文鳥をペットとして飼い始めた、世話がたいへんだけれど、とてもかわいい、という「鳥の子育て談義」を聞かせてもらったので、今回はその文鳥の「サンブ」に会うのを楽しみにしていました。サンブは、K子さん出演の『鼬』のなかで、老女役K子さんの息子「三郎」を東北なまりで呼ぶときの呼び名です。

 ところが、K子さんは「おととい、ちょっとした油断で文鳥が窓から逃げてしまった。きのうは一日捜し歩いたけれど、見つからない」と、大ショック状態。

 「前にもインコを飼ったことがあったけれど、そのときは大人になってからの鳥だったし、病気持ちでなつかない鳥だったのでかわいいとも思わぬまま、すぐに病気で死んでしまった。今回はじめて、子供の状態から育てて、日一日となついて、もうかわいくてたまらないと思って部屋で放し飼いにして、いっしょに暮らしていた。
 わが子と思って育ててきたのに、半年して大人の状態に近づいてきたら、外のようすに興味をもち、ベランダにくるスズメに関心を持って、部屋から出たがるようになった。それで、風邪薬を飲んで眠い状態のときに、窓のあけたてに気を張るのを油断したら、ちょっとしたすきに逃げてとんでいってしまった。」

 大人に近づいたとはいっても、人から餌をもらうほかに食べる手段を知らないので、外に行ったら餌もなく、カラスに食べられるかもしれないし、もう心配でしんぱいで、と嘆くK子さん。
 思春期を迎えた息子が、外の世界を知りたくて家出してしまったときの人の母と変わりなく、ひたすらかわいい我が子の心配をしています。

 大丈夫、ひょっこり戻ってくるかもしれないし、万が一帰り道がわからなくなっても、きっと親切な新しい飼い主の家に飛び込んでいるから、と、我が家の最初のペットの話をしました。

 娘が保育園児、ペットがほしくてたまらないでいたころ。9階ベランダから窓の中に、文鳥が飛び込んできました。おふろばに入れて、何を食べるのか調べたり、団地のエレベーター前などに「まいごのことりあずかっています」という張り紙を出してしばらく連絡をまっていましたが、だれからも連絡がなかったので、我が家で飼うことにしました。ピーちゃんと名づけ、鳥かごを買ってくるやらおおさわぎ。
 実をいうと、このころ、我が家には鳥かごを買うお金さえなかったのですが、ホームセンターに行ったら、半額の「わけありセール」をやっていて、籠の一部の針金が曲がってしまったために半額になっている鳥かごを、「わあ、ちょうどよかった」と買った、なんてことを思い出しました。

 我が家のルールでは鳥かごから出して放し飼いにしてよいのは、お風呂場限定。お風呂場なら、フンをしても紙でふき取ったあと水をながせばよいので、始末が簡単だからです。掃除を徹底的に手抜きする家なので、部屋では放し飼いにはできませんでした。

 3年ほど飼って、私が単身で中国に赴任するとき、私の妹夫婦に娘息子といっしょに文鳥も預けました。妹が娘息子をつれて中国に来るときに、妹の亭主が世話を引き受けてくれたのですが、妹が帰国する前に、「逃げられた」という連絡が入りました。娘と息子には知らせずにいました。
 日本に帰ってから「ピーちゃんを引き取りにいく」となって初めて、「実は、、、、」と打ちあけました。娘は、「中国にいっしょに連れてこられないって言われて置いてきたのに、私がいっしょに残ればよかった」と、泣きました。
 K子さんの今のなげきも、いかばかりかと思います。人は、「たかがペット」と思うでしょうけれど、いっしょに暮らしたものにとっては、いとしい家族です。

 K子さんには、サンブも帰り道がわからなくなっても、きっと新しい家でかわいがられているから、となぐさめました。
 K子さんは、半年待って、帰ってこなかったらまた来年の冬に新しい文鳥を飼いたいといいます。小鳥と暮らす生活は、とても充実した「リア充」だったのだろうと思います。
 K子さん手作りのピーマン肉詰めトマト煮をいただき、小鳥帰還を願って辞しました。

 ジュンク堂書店によったら、トークイベントのお知らせが入り口にありました。「カラス先生とジュウシマツ先生の、鳥扱い説明書」というタイトルが面白そうなので、申し込みをしました。ジュンク堂のトークイベントは、毎回、ワンドリンク付き千円です。

 ジュウシマツ先生こと岡ノ谷一夫先生は、『「つながり」の進化生物学』(朝日出版社)、カラス先生こと松原始先生は、『カラスの教科書』(雷鳥社)を出版なさり、長年、鳥の行動生態学を研究しておいでです。

 松原先生は、院生時代に岡ノ谷先生の授業を受けたことがあるそうで、おふたりとも、それぞれの研究対象にぞっこんほれ込んでいるというのがよくわかりました。カラスも20年観察を続けてくれば、かわいくてたまらないそうです。
 岡ノ谷先生は、ジュウシマツのほか、動物行動学者としてハダカデバネズミの社会行動の研究もなさっています。

 ジュウシマツのさえずりについての研究は、脳組織の実験や「里子実験」などの成果が『さえずり言語起源論 ― 新版小鳥の歌からヒトの言葉へ』岩波書店2010にまとめられているということで、その成果の一端を聞くことができました。

 ジュウシマツは、日本に輸入されてからちょうど250年たちます。
中国で、野生のコシジロキンパラ (Lonchura striata) を家禽化した鳥で、野生には存在しません。さまざまなさえずりをしてメスを呼ぶ求愛活動を行うことが知られており、岡ノ谷先生は、このさえずりの研究から、人間の言語活動の起源にいたるまで、幅広い研究を続けています。

 カラスは、人間の住むところどこにでも見られる「都会化」した鳥で、つがいになるとほぼ一生添い遂げるそうです。しかし、お互いの絆が強い分、排他的で、自分たちさえシアワセなら、ほかのヤツラは邪魔者、というなわばり主義者とか。

 ジュウシマツの脳の構造からカラスの保食行動(マヨネーズを入れ物ごと東大構内のエアコン室外機の下に隠したのを観察したことがあるとか)まで、ゆかいなエピソードをたくさんうかがいました。

 ジュウシマツはさえずりの歌のうまいへたによってメスをひきつけるそうで、ジュウシマツ先生のお弟子さんのひとりは、さまざまな種類のさえずりをテープでメスに聞かせて、何本のワラを巣に運び込むのかという実験の観察を命じられました。うまい歌に反応して、子育てをしようという気持ちになり、巣作りを始め、ワラを自分の巣に運び込むので、どの歌が好まれたか観察できるのだそうです。お弟子さんは、10万本のワラを一本一本数えて立派な論文にしたそうです。

 お客さんの中には、この本を読んで興味を持ったファンや、大学で先生の教えを受けている学生、高校生への出前授業で岡ノ谷先生の講義を聞いた高校生まで、幅広い層が集まっていました。
 私のように、ほんの通りすがりで、「今日はトリに縁があるから聞いてみようか」という程度の気まぐれで聞くことにしたミーハー視聴者まで、わかりやすくおもいしろいお話を聞けて、カラスのつがいが「リア充」で生きているみたいに、リア充の一日をすごすことができました。

<つづく> 
コメント (4)
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