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ぽかぽか春庭「2003年の夏3」

2013-07-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/07/16
ぽかぽか春庭・知恵の輪日記>10年前の夏(3)2003年7月の日常茶飯辞典

 暑いです。毎日暑いです。パソコン壊れたままなので、コピーペーストでUPします。
 10年前の夏も、かわり映えなくひたすら「暑いあつい」と言ってすごしていました。
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2003/07/12 土 晴れ 
日常茶飯事典>ホタル狩り

 午後娘と息子は、タイムをうさぎクリニックに連れて行く。
 普段に比べて食べなくなり、糞が小さくなったため。元気はいいので腸の病気とかでなく、うさぎの持病の「毛球症」だろう。体の毛をなめるため、腸に毛玉が貯まるのだ。ときどき毛玉をとかす薬をあたえなければならない。
 その間、私はエアコン工事に立ち会う。

 夜、公園に蛍を見に行く。今年はこれまでの中で一番蛍の数が少なくて、あまりきれいじゃなかった。いつもは橋の上から飛び回る蛍が見られるのに、今年は橋に人がたまっていないので、あれっと思ったら、じっとながめていたいほど蛍がいなかったのだ。
 でも、まあ、蛍見物は、花火見物とならんで我が家恒例「無料夏のイベント」
 蛍をみると「ああ、夏だな」と季節感満喫。

本日のつらみ:蛍の光、足らず

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2003/07/13 日 曇りのち雨 
ジャパニーズアンドロメダシアター>『猟奇的な彼女』

 3人で映画館へ。館内は超満員で、私と息子は座れたが娘は座る椅子がない。「私は明日すいているときに見るから」と、娘ははパソコンを届けに夫の事務所へ。

 韓国映画『猟奇的な彼女』。韓国映画を見るのは『西便制』以来。現代韓国を舞台にした映画を見るのは初めてだ。タイトルはすんごいが、英語タイトルは「My sassy girl」直訳すれば「生意気な女の子」にすぎない。
 韓国語で漢字の「猟奇的な」の意味は、「奇妙な、変わっている」だそう。それにこの映画の影響で「クールでかっこいい」という意味も付け加えられて若い人が使うようになったんだとか。映画が語意を変えた。

 「猟奇的」とタイトルがつけば、日本語の語感ではその後ろに殺人事件でもこなければおさまらないところだが、「猟奇的な彼女」とそのままの文字にしたのは配給会社の陰謀か。たしかに「生意気な女の子」というタイトルなら、こんな座る席もないほどの人気映画にはならなかったかもしれない。

本日のやっかみ:30年前のsassy girlは、男どもに毛嫌いされたぞ。もてなかった「生意気女」のやっかみ。

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2003/07/15 火 曇り
ニッポニア教師日誌>授業

 漢字、SFJ3コマ

 生まれてしおにゆあみして、波を子守の歌ときく~。留学生、漢字の授業を子守の歌ときく。ごめんね、面白い説明ができなくて。

本日の波:眠いウェイブは隣の席に波及する

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2003/07/16 水 曇りときどき小雨 
日常茶飯事典>センターポジションは、私

 午前中、Aダンスィング。
 今週から先生はバリ島へ出かけているので、サークルメンバーだけの自主練習。
 フィナーレのラインポジションで、サークル内に争いが。みんなセンターポジションで踊りたいらしい。
 私はセンターポジションで踊りたくない。前列センターポジションで踊る人は、ほかの人の踊りを見ながら踊るわけにはいかないからだ。自分でふりつけを全部覚えなければならない。
 私は常にセンターの人を見ながら、半テンポ遅れで回転したり足あげたりして踊る。ワンテンポずれると目立つし振り付けを覚えていないのがばれてしまう。ずれを半テンポ以内に納めるのがこつ。
振り付けを覚えようとすると、ストレスになって、ストレス解消のダンスじゃなくなる。

 午後、先週レポートを持ってこなかったふたりの分をうけとって、水曜日今期の仕事は全部終わり。あとは成績付け。

本日のつらみ:踊ってだけいられない主婦のダンス

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2003/07/17 木 曇りときどき小雨 
ニッポニア教師日誌>学校を建てよう

 期末試験2コマ。日本事情と作文の試験。同じ問題なのに、去年に比べるとずっとできがわるい。日本史問題の採点を終えてから帰宅。作文はあとで。
 ともあれ、前期日本事情のクラスはこれでおわり。留学生たちは疲れをとり、家族に留学中の生活を語るために帰国する。夢を抱いて留学して、現実はどうなのか。夢のとおりの留学生活か、現実の前に夢が破れてしまったか。

 金曜日のビデオの時間、『新基礎復習ビデオ』第一話「宝くじ」を見た。主婦なつえが初めて宝くじを買い、2等300万円が当たったと誤解して一家でぬか喜びする話。家族でそれぞれの夢を語り合い、夢やぶれてがっかりというストーリーだ。
 視聴後の会話トピックとして、「300万円あたったら、何がしたいですか」という質問をする。「~たいと思う。~ようと思う」の文型を使うように指示。「私は、世界中を旅行したいと思います。たくさん本を読もうと思います」と例文を出す。

 ケニアのショーの夢は、「農場を買いたいと思います。学校を建てようと思います」というものだった。「農場に動物がいます」というので、「買う」とアクセントが異なるが、ひらがなで書くと同じかきかたになることばとして「飼う」を教える。
 「飼いたい動物はライオンとキリンですか?」と冗談を言うと、大慌てで単語を思い出そうとするが、彼は辞書を引かない主義なので「家畜」という言葉が出てこない。ショーは「ドメスティック・アニマル」と答える。「牛と馬?山羊と犬ですか?」と聞くと、「馬はいらない、牛と山羊と犬」。ほんと、ドメスティック。しかし、ショーの答えを聞いて、私も例文「世界旅行」の夢を訂正。「私も本当は学校を建てたい」と、言う。

 カンボジアに「大学の寄付で建てられた小学校」があり、仏教学科や国際科の学生がボランティア活動を行っていることを学生のレポートで知った。日本の企業や大学は世界各地に会社や学校名を冠にした学校を建てるとよいと思う。
 夫がやっている「フォスターペアレント」は、お金を寄付すると援助国児童の学習支援費になる。児童からたまに手紙が届く。それだって無いよりましだが、実際に学校を建ててるほうが、もっといい。そこに日本から高校生大学生を派遣すれば、日本の若者の教育にとっても、有意義なことだ。

 援助を必要とする国を支援でき、自国の若者の教育にも役立つなら税金で行って欲しい事業だが、われわれの税金はイラクに自衛隊を送るのに使ってしまうらしいから、自分たちでなんとかしなければならない。

本日のうらみ:自分で払う税金の使い道を自分で指定したい。

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2003/07/18 金 曇り夜から雨
ジャパニーズアンドロメダシアター>『ラストプレゼント』

 ビデオ、会話3コマ。を終えてから、ギンレイへ。
 娘が『猟奇的な彼女』の併映作品『ラストプレゼント』を見て「泣けるから見ておいた方がいい」と言うので6時から見た。

 裕福な家の息子ヨンギは売れないお笑い芸人。みよりのない娘ジョンヨンとの結婚を両親に反対され勘当されている。妻は病身を隠し、小さなベビー用品屋を切り盛りして夫を支えている。反対を押し切って結婚したのに、赤ん坊が死んでから、二人の間はぎくしゃくしている。妻は必死に夫が芸人として成功することを願い、夫は妻の体を気遣っているのに、表面上は互いにぎすぎすしたままだ。
 実は、ジョンヨンにとって、ヨンギは小学校のとき転校してきてまたすぐ転校して去っていった片思いの相手だった。ヨンギにそれがわかり、芸人として成功のきっかけがつかめそうなとき、ジョンヨンは死んでしまう。

 もう典型的な病気ものの泣かせ映画。主演の李英愛イ・ヨンヘがとてもきれいなので、見ていられたが、キムタク美容師と不治の病の常盤貴子の恋愛話のように、すれた大人にはちょっと気恥ずかしい愛情物語なのだ。しかし、まあこういう話で涙を流すことが必要なんだろうと思う。

 ジョンヨンはなぜ子供の頃同級生であったことを夫ヨンギに話したことがなかったのだろう。恋人同士になれば、お互いに相手のことを知りたいから、学校時代のこと、家族のことふるさとのことを話し合うものなんじゃないだろうか。小学校のことを話せば、当然同じ小学校に在校していたことがわかるじゃないの。夫が妻と同級生だったことを完全に忘れていたから、妻はあえて秘密にしてきたのだろうか。転校というのは、小学生にとって、強烈な生活の変化だから、ヨンギが転校した学校のことを忘れていたとは思えないのだけど、そこをつっこんではいけないのだろ。せっかく間抜けな詐欺師コンビがいっしょうけんめい「妻の初恋の相手は夫だった」と、探してくれたのだから。

 キムタク美容師と下半身不随不治の病を持つ図書館員との純愛が30%の視聴率を得たのも、もはや日本にこのような「純粋恋愛」が存在しなくなったからゆえだろうと思っていたが、この映画が韓国で大ヒットしたということは、もはや韓国にもこのジョンヨンのような「自分のことはあとまわしにして、夫にひとすじ尽くしまくり」タイプの妻がスクリーンの中にしか存在しなくなったということなんじゃないだろうか。

 少なくとも、わたしが見てきた韓国人女性は、もっと辛辣でたくましく自己主張が強く、そしてなにより「じぶんより金があり、自分に今以上の暮らしとステータスを保証してくれる男」を求めていた。
 日本に留学しよう、という意志をもったという時点で、すでに一般の韓国女性より、はっきりした強さを持っている人たちだったのかもしれないが、皆強くたくましく、貪欲に自分の人生を求めていた。ジョンヨンのような「耐えて耐えて夫に尽くします」タイプはまだ韓国のどこかにいるのだろうか。

本日のちぢみ:チヂミ食べて耐えよう、夫が収入得られるようになるまで


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2003/07/20 日 曇り
ジャパニーズアンドロメダシアター>『一票のラブレター』

 朝6時、息子は水泳部夏期合宿に出発。いざ出発というときになって、バッグのファスナーが壊れていることがわかった。あわてて、リュックサックの方に詰め替えたら、こちらも前ポケットファスナーが兎タイムに齧られていてぼろぼろ。しかし、とりあえず、前ポケットには物をいれなければいいので、リュックで出かけた。いつもぎりぎりに準備するからこういうことになる。

 午後、イラン映画『一票のラブレター』を見る。

 『一票のラブレター』は、ペルシャ湾の小さな島の一日の出来事。朝、8時半モーターボートから選挙管理委員会から派遣された管理委員の娘が島に上陸する。伝統的なブルカに身を包んでいるが、きちんと教育を受けたしっかり者だ。密輸監視が主な仕事の兵士が護衛になり、ジープで島内を回る。行く先々にさまざまな島の暮らしがある。
 神に投票するという太陽電池発電所管理の老人あり、選挙したら魚が捕れるようになるのか問う漁師あり、という具合。16歳以上の男女に選挙権があるとはいえ、女たちの大部分は文盲なのだ。伝統的な社会に生きる男たちに選挙が何かを理解させることもむずかしい。それでも一日のうちに、何票かは集まり、管理委員としての仕事を果たせた。

 兵士は最初は女の分際でと思っていたが、一途に民主主義の必要性を信じ、投票の大切さを人々に説く娘にしだいに心を惹かれるようになる。最後に自分の投票として、娘の名前を書き入れる。娘は「私は候補者じゃない、候補者の中から選ぶってことは、今日一日選挙の説明を聞いていたのだからわかっているでしょ」というが、兵士は「秘密投票だから、だれに入れてもいいのだ」と言う。娘の名を書き込むことだけが、兵士の恋の表明なのだ。

 娘は、都会で高等教育を受けた上流階級の娘である。教条的に「民主的選挙」を説いていたが、実際の世の中を知っているわけではない。兵士がこわれた赤信号を守って車を動かさないでいた態度から、「国が決めた法律がすべてではない」ことも知る。
 任務を終え、娘は迎えの飛行機に乗って帰っていく。空高く飛び立つ飛行機と、海岸に置かれた粗末な野営ベッドの対比のごとく、兵士の淡い恋心は、高嶺の花へのあこがれだけでおわるのだろう。

 冒頭最初のシーンは、投票箱が飛行機からパラシュートで投げ落とされる場面から始まった。空から民衆にいきなり落とされる選挙権。選挙権を与えるなら、識字教育も与えて当然だろう、と思ってしまうのは、江戸時代でさえ識字率50%を越えていた日本に生まれ育った者の感想だろうか。
 島では、ペルシャ語以外のことばもあって、通訳を介さないと選挙の意味もわかってもらえない。ケニアの選挙では、候補者ごとにシンボルマークを決め、ラジオマーク候補、とか、飛行機マーク候補、机マーク候補などに○をつけて選ぶ方式だった。イランでは、候補者にシンボルマークをつけることは許されていないのだろうか。字が読み書きできない国民が存在することがわかっているなら、絵やマークで選ぶほうがいいと思うのだが、偶像否定のイスラム教では許されないのかもしれない。

 娘は一日の経験で、一般民衆の暮らしや教育レベルについて身にしみてわかったことだろう。しかし、彼女がこれからどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのかは映画からはわからない。たぶん、この映画では、ペルシャ湾の光景や人々の暮らしを味わうべきなのだろう。でも、監督が「観光映画」や「映像詩」としてイランを描くのなら、もっと別の題材でよかったような気がする。空から降ってきただけで、地に根付いていないイランの民主主義とは何か、を描いたのでもなし、少女の一日の成長を描いたのでもなし。じゃ、何を?

 我が国の選挙。解散近しと見て、何をするかというと、辻本逮捕。マキコはおかまいなしなのに。与野党とも泥沼。選挙するわれわれももっと泥沼。空から投票箱が降ってきても、書き入れる文字を知らないペルシャ湾の女たちと、泥沼の中で顔に泥をなすりつけ合っているわが被選挙民たちと。私の一票のラブレターは、次回も届かないだろう。

本日のかみ:投票用紙に書くのは君の名

コメント (2)
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