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ぽかぽか春庭「マロニエの花とドーパミン」

2014-07-13 00:00:01 | エッセイ、コラム
20140720
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>ユリーカ!!(1)マロニエの花とドーパミン

 近年発達解明著しい分野のひとつが、脳科学です。これまでわからなかった「心」について、脳科学がさまざまな解明をしてきました。なぜ、人は悲しくなるのか、うれしくなるのか。感情と呼ばれていたことの多くが、脳内伝達物質の作用であることがわかってきました。
 不安とか恐怖を感じるのも、この脳内伝達物物質の作用、達成感、幸福感なども同様です。

 脳内伝達物質、さまざまな種類があります。人の快感を左右する物質として、たとえば、ドーパミンやエンドルフィン。ギャンブル依存症パチンコ依存症になる確率が高い人とは、ギャンブルで勝った時の快感物質に対する反応が強い人、という研究結果があるそうです。

 脳内物質のひとつアナンダミド (anandamide) は、他者から褒められたときに脳内に出てくる伝達物質です。人は他者に認められ、褒められるとこのアナンダミドの快感によって幸福感を得て、さらにがんばろうと思うのです。「人は褒められて育つ」というのも、科学的にほんとうのことだったのですね。

 おいしいものを食べて満足したときの脳内物質とか、いろいろな快感物質がわかってきています。
 マラソンランナーが、苦しい時期を超えて走り続けると気分が高揚し、幸福な達成感を得られるというのも、性行為の絶頂快感も、エンドルフィンと呼ばれる快感物質が脳内に放出されるのだそうです。私は、長時間走ったことないからわからないのですけれど。

 自分で自分を傷つける自傷行為、リストカットなどを繰り返す人。痛いだろうに、なんで自分を痛めつけるのかと不思議でした。リストカット者の脳内には、自分を切り刻んだ瞬間、臨終時に動物の脳内に出てくるオピオイドと同様の物質が出ており、現実を忘れさせる感覚になれるのだと知りました。リストカット者が、やめようと思っても手首足首にカミソリを当ててしまうのは、こういうことだったのかと納得。

 人は、さまざまな脳内快感物質によって生かされているのです。おいしい食べ物によって得る快感こそ生き物にとって最高のもの、と思う人もいるでしょうし、ギャンブルに勝った時が最高の幸福と感じる人もいるでしょう。

 で、私にとっては、何が最高の快感か。
 なにかわからなったこと、知らなかったことについて、「そうなのか、そうだったのか」と、わかった瞬間の脳内物質が、一番の快感であったのだろう、とわかってきました。好奇心の強い人というのは、つねに何か知らないことをわかろうとしていて、不思議なこと、おもしろそうなことを見つけ出します。わかった瞬間に幸福感を感じるのです。

 水曜日に出講している大学のキャンパス。スクールバスを降りて、「大学創設者胸像」というのを横目で見ながら通り抜けて、4号館104教室へ向かいます。何年か前にスクールバス乗り場と4号館の間に木が植えられました。細かった木もだいぶ太くなってきたなあと思ったら、見事な赤い花房をつけるようになりました。
 5月に咲く花を目にするたびに、何の木だろうと思うようになり、花のあとにトゲトゲのある小さな実がなるのに気づいて、ますます何の木だろうと思っていました。



 「5月 木の花、赤い」などのキーワードで検索をかけても、なかなかこれはと思う花の画像に行き当たりません。樹木検索のサイトなどを覗いて、探したのですが、似たような花房の木でも、白い花だったりして、私が見たのとは異なります。なかなか5月に赤い花をつける木の画像に行き当たりませんでした。

 ようやく私が見たとおりの花の画像を見つけました。
 西洋栃の木=マロニエ。

 シャンソンの歌詞かなんかで耳にしておなじみになったマロニエ。マロニエ通りとか、マロニエ広場とか、商店街などでよく目にするマロニエだったのに。
 栃木県は、県の木が「栃の木」であり、マロニエ何とか、というネーミングの場所もたくさんあるということなので、栃木出身の人なら、木を一目見て「西洋栃の木」とわかったのでしょう。私は樹木の種類や花の名にうといので、ひらめきませんでした。

 これまで、キャンパスに咲く花と、私もその名を知っていた栃の木を結び付けて考えたことがなかったのは、私の思い込みによります。私のイメージでは、西洋栃の木は、パリの並木道で白い花をが咲かせていたのです。赤い花とマロニエという木の名前と結びつけることができませんでした。
 ネットの検索でマロニエには、白い花だけではなく、ピンクも赤もあることを知りました。
 

(花、実とも借り物画像です)

 木の名がわかって、すっきり気分。こういう「わかった!」と、感じたとき、脳内伝達物質が私の脳に分泌され、幸福になる。ランナーズ・ハイでも、リスカ・ハイでも、ユリーカ(わかったぞ!)ハイでも、人にとっては大切な時間。

 今まで知らなかったこと、新しいことがわかったときの喜び。
 浮力について初めて気づき、「エウレカ、エウレカ、(ユリーカ)わかったぞ」と叫んで風呂桶から飛び出していったアルキメデスの幸福感が、私にとっては一番の快感物質であるということです。まあ、走るのは嫌いなので、ランナーズハイは得られないし。

 5月のひととき花を楽しんだ、その樹木がマロニエだとわかった、その瞬間がうれしいのです。「ユリーカ、ユリーカ、マロニエ、マロニエ」と叫んで、素っ裸で風呂場から飛び出したい気持ち。いや、風呂場で分かったのではないので、素っ裸にならんでもよいのけれど。

<つづく>
コメント (4)
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