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ぽかぽか春庭「歴史の語り部」

2014-11-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20141119
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>おい老い笈の小文(4)歴史の語り部

歴史の語り部
at 2003 10/06 04:49 編集
 赤ワイン効果に続けて、脳の老化を防ぐよい方法をもうひとつ。
 思い出を語ることが、高齢者の生活活性化にたいへん良い影響があることが、最近の研究の結果、明らかになっている。

 『100歳回想法』(黒川由紀子著)には、100歳前後のお年寄りの回想が記録されている。遠い過去のできごとを、生き生きと思い出し、語り続けるお年寄りたち。

 心理療法として開発された「回想法」であるが、専門家だけの療法ではなく、家庭でもできる。「家庭でもできる回想法入門」。自分の周囲に高齢の方がいたら、回想法を取り入れよう!

 高齢の方や、そのご家族にインターネットホームページを活用してほしいことのひとつに、「歴史の語り部」がある。

 21世紀の今、高齢となっている方々は、先の戦争や戦後復興を体験した、それぞれが貴重な経験の持ち主。来し方の思い出を、ご自身の文章、家族の聞き書き、語りおろしの録音などで、残してほしい。小さな思い出も、些末に思える記憶も、貴重な歴史の証言。

 私は、舅が残した「山東省出征記録画集」という、中国戦線をスケッチした画集を、いつかまとめて公開したいと思っている。「

 私など、実家の父には「おじいちゃん、その話、もう何回も聞いた!」などと、冷たく言ってしまったこともあり、亡くなった後になって、「もっと熱心に話を聞いておくんだった」と後悔している。

☆☆☆☆☆☆
春庭千日千冊 今日の一冊No.11
(さ)澤地久枝『妻たちの二・二六事件』

 石牟礼道子、須賀敦子と共に、女性作家の中で、愛読してきたひとり。
 『妻たちの二・二六事件』は、澤地久枝が、長年の『戦争と人間』の資料助手の時代を経て、ノンフィクション作家として世に出た最初の作品。

 この後の作品、文庫本になったものは、ほとんど読んでいる。中国へ行く前は『もうひとつの満州』に感銘を受けた。
 戦争ドキュメンタリーや『石川節子』の評伝など、歴史に翻弄されながらも自分の生き方をつらぬいた女性を描いた作も好きだが、一番好きなのは、彼女自身の自伝エッセイ。

 澤地さんは、67歳のときにスタンフォード大学で1年間聴講生として学び、続けてさらに琉球大学の大学院で2年間、国際関係論を学んだ。72歳になった2003年3月には卒業した早稲田大学から、芸術功労者表彰を受けた。

 授賞式(2003/3月の早稲田大学卒業式)での、記念スピーチから

 『私は、卒業論文が万葉集十四巻の東歌の研究でございました。ご存じのように、これは東国の無名の人たちの歌を短歌の形式に採取したものでございます。考えてみますと、私はいつも名前の知られないような底辺の人たち、しかし、その人たちを抜きにしては歴史は一日も成り立たなかったという人たちのことに心を惹かれ、そういう人たちのことを文章にする仕事をしてきたという感じがいたします。

 しかし、これは地味な仕事でございます。私自身としては、だれも認めてくれなくても自分の気持ちが済むようなきちんとした仕事をしたいという思い一筋に生きてまいりましたけれども、今日こういう席にお招きいただいて、母校とは何とありがたいものかというのが私の実感でございます
。(中略)私たちの身近なところで、歴史はさまざまな人間の物語を刻んでいるんでいるということを思わずにはいられません。

 どうぞ、あなたの近くにいる歴史の語り部から、さまざまな人間の物語を、受け取ってください。そして、受け止めた物語をインターネットで世界に発信してください。
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歴史紀行
at 2003 10/07 08:28 編集

 「子育て卒業後または定年退職後にしたいことは何ですか」という質問への回答として、多数派のひとつが「旅」。

 旅のテーマにはいろいろある。「温泉でのんびり」「よい景色をながめる」「鉄道の旅」「百名山を登る」など、ファンが多いテーマもあるし、「おいしい地酒を探す旅」「マリア像に出会う旅」「世界の動物園を巡る」など、自分の趣味を極めるテーマもある。
 私がテーマにしたいのは、「巨樹に会う旅」「橋めぐり」と「歴史・文学紀行(世界遺産の旅を含む)」

 歴史をたどる旅に、携帯したい本がある。いっしょに旅をしたい作家がいる。その中のひとりは司馬遼太郎。

 「たくさんの人に、自分の歴史を語り、残してほしい」と、願うと同時に、何人かの作家が書き残した歴史小説や歴史エッセイを順々に全集で読みたいと思っている、その作家のひとりが司馬遼太郎なのだ。

 『この国のかたち』は全冊読んだが、『街道をいく』シリーズは、まだ半分も読んでいないし、歴史小説で未読のものもたくさん。
 一番最近読んだ司馬の小説は2001年文庫発行の『ペルシャの幻術師』だが、初出は1956年「講談倶楽部」。雑誌に掲載されたまま、本にはなっていなかった。

 専門的な歴史家の著作でも網野善彦のように、素人にも面白くわかりやすく書いてくれる人もあるが、専門的なことは、歴史好きな方にまかせて、私は、楽しく読める歴史小説から。
 今や「国民的歴史作家」と桂冠がつく司馬遼太郎なので、亡くなったあとも、どんどん著作が増えていく。通勤の電車内しか読書時間がとれない読者としては、新しい本を横目に、「悠々晴耕雨読」の日が来るのを待つしかない。

☆☆☆☆☆☆
春庭千日千冊 今日の一冊No.12
(し)司馬遼太郎『歴史を紀行する』

 たくさん出版されている司馬の歴史エッセイの中で、比較的早い時期に読んだ一冊。風土と、風土が育てる人物について、人物が織りなす歴史について。初出は1968年に文藝春秋に連載された。私が読んだのは1976年発行の文庫本。

 あと何年かして旅行三昧の日がきたら、旅を楽しみつつ、旅先で歴史の本、エッセイ、小説を読み散らしたい。旅から帰ったら、写真を見せながら、孫たちに知ったかぶりで蘊蓄を披露してうるさがられる、そんな旅がしたいです。
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20141115
 この文を書いた11年前には、あと10年くらい働けば、好きに旅行して歩けると思っていたのですね。とんでもなかった。働いても働いてもワーキングプアの貧乏暮らしは続き、旅行どころではない。娘も息子も結婚できない結婚難民。
 21世紀になれば、子ども達は月へ修学旅行へでかけ、自動車は空を飛んでいると信じた10歳の頃の夢が、かなわなかったのとおんなじです。未来はかなたにある。
<つづく>
コメント (4)
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