20150415
ミンガラ春庭ミャンマー便り>ヤンゴン出張(9)サイカーに乗ってカマユッ駅へ
3月27日金曜日、せっかくK先生が案内してくださったのに、くたびれきってしまった春庭。おなかの調子が悪く体調不良ということもありましたが、日頃の散歩やら建築探訪では、ひとりで勝手気ままに歩き回ることが多く、人様のあとをついて歩くということをしたことがないので、いっしょに歩く気疲れも体調不良を倍増している気がしました。
同じ建築趣味ということがわかっていて気心知れた友とならいっしょに歩いて疲れないけれど、出会って数日、何が好きかもわかっていない人に気を遣いながら歩いたので、人慣れしていない私は疲れ切ってしまったのでしょう。
3月28日は、朝電話をして「体調が戻らないので、午前中は寝ています。午後は近所をひとりで歩いて見ます」と、連絡し、ひとりですごすことにしました。
親切なK先生は、心配してお昼に貴重な梅干しや生姜糖を届けてくれました。ありがたいこと。K先生が体調を悪くしたときは、梅干しでのりきったとのこと。
お昼過ぎ、さっそく梅干しをいただき、パワーが出てきた気がしたので、ひとり町探索にでかけました。
ヤンゴンには、東京の山手線のような環状線が走っています。これに乗るのはどうかとK先生に打診したとき、「電車の椅子は堅くて座り心地悪いし、周囲の景色はよくないし、地元の人は乗っていなくて観光客ばかりだったし、おすすめできません」というお話でした。なるほど、日本で乗り鉄趣味でない人にとっては、ヤンゴンに来て電車に乗る気も起きなくて当然です。
でも、私は小学生のころからの乗り鉄。ただ電車に座って車窓を流れる景色を見ていれば一日かたい電車の座席に座っていても飽きない。ヤンゴン環状線は一周で3時間ほどだというので、午後半日あれば、ひとまわりできるはず。環状線なら必ず元の駅に戻ってくるし、一人で乗っていても迷子にはならない。
まずは、ホテルから一番近くの駅をめざしました。
ひとり歩きの気ままな点は、気に入ったものがあれば、ずっと眺めていられるところ。案内者のあとをついて歩くのでは、気ままにできませんから。
道ばたの露店も、タバコ売りも珍しい。シガレットは高いので、一本単位での売り買いです。よく売れるのは、さまざまな香辛料を生の葉っぱにくるんだクーンと呼ばれる噛み煙草です。
屋台タバコ売りのお姉さん。ささっと噛みタバコをつくりあげます。
ます、葉っぱを一枚手にとる。キンマ(コショウ科コショウ属の植物)の葉です。葉に白い液体を塗る。石灰の水溶液にヤシ科の植物であるビンロウ(檳榔)の果実の種子をカットして混ぜた液体。これに店により地域によって好みが分かれるさまざまな香辛料をかけて、葉を折りたたむ。1個~3個で200チャット(20円)ほど。この葉っぱを噛んで液を味わうと、興奮または刺激・酩酊作用があり、肉体労働者にはやめられない嗜好品になっているのだそうです。
噛み煙草調合中のおねえさん

ニコチン同様、依存性があり、ニコチンが肺がんを引き起こすのと同じように、発がん性もあるとのことで、若い人はしだいにクーンがよろこばれなくなっているそうですが、一度依存症になれば、なかなかやめられないので、東南アジアのこの噛み煙草、まだまだ売買が続くでしょう。
写真を撮りたかったので、屋台のお姉さんの店をながめて、チョコレートキャンディと思われる飴をふたつ買いました。値段はよくわからなかったけれど、キャンディ2個で100チャット(10円)払ったので、写真数枚撮影させてもらいました。
キンマの葉っぱと女の人がよく髪にさしている黄色い花

さらに、ぶらぶら歩いて行くとサイカー(自転車タクシー)のたまり場に行き当たりました。英語わかる人いないだろうなあと思いながら、カマユッ・ステーションと言って見る。インド系らしいおっちゃんが出てきて通訳を始める。う~ん、こういう人が出てくると値段交渉ややこしくなるんだよな、と思ったのだけれど、「駅」というミャンマー語すら出てこないので、しかたがない。向こうの言い値3000チャットを2000と言ってみたら、そこは遠いから、2500以下にはできない、という。歩いても行ける距離のはずだが、サイカーに乗ってみたかったので、2300チャットで手打ち。印度系のおっちゃんは、サイカーの運転手に「イングリッシュなんたら」と説明しているのがちょっと気になったけれど、まあ、なんとかなるだろうと、乗り込む。
サイカーたまり場

細い路地を通り抜けていくので、タクシーで大通りを行くよりずっと、裏町のようすが眺められて楽しかった。



しかし、鉄道の線路を通り過ぎてどんどん高級住宅街に入っていくので、サイカーの運転手に叫ぶ。「私は駅へ行きたいのに、どうして線路を通り過ぎちゃうんだ。駅は線路のそばにあるだろうに」
叫んでも理解はしてもらえません。
線路を横切ってどんどん進んでいく

運転手は通りの人に聞きながら、イングリッシュスクールの前で停車。やっぱりインドのおっちゃんは、「この外国人は、英語習いたいらしいから、英語学校へ連れて行け」と指示したらしい。まあ、私の下手な英語を聞いていたら「英語を習うべき人」と思われても当然だが。
英語学校の門の前で困り果てていると、車が近づいてきて、わあわあわめく私を見ている。
自家用車を運転している人なら英語わかるかと「駅に行きたいのに、このサイカーの運転手は駅を知らないようだから、道を教えて」と、頼みました。ところが、自家用車運転手のミャンマーなまり英語が私にわかりにくく、私のつたないジャパングリッシュが運転手に通じにくい。そのうち、自動車から坊ちゃまが降りてきました。小太りで上品そうな顔をした坊ちゃん、立派なクイーンズイングリッシュを話し、ようやく話が通じました。
thank you とお礼をいう私に、坊ちゃまは「You are welcome」と、鷹揚に返事し、運転手付き自家用車でおでかけしていきました。
サイカーの運転手にも、ようやく私が駅へ行きたいのだということがわかりました。やれやれ。
道案内をしようという自転車小僧がついてきました。大人の自転車を「三角乗り」しています。三丁目の夕日あたりに、この三角乗りの自転車小僧が出てきた気がする。
「こっちこっち」とサイカーおっちゃんに声を掛けています。駅についたので、さきほどのコーヒーキャンディをあげたのだけれど、まだ去らないので100チャットあげました。こういうのは子どもにとってよくないのではないかと思いましたけれど。
サイカーは、2300チャットの約束だけれど、道がわからなくて行きつ戻りつした漕ぎ賃と思って2500チャット渡しました。北京故同の観光用自転車タクシーのときは、値段も高かったし、かなりぼられているのがわかっていたので、漕ぎ手に悪いとは思わなかったのですが、今回は、ふうふうと自転車を漕ぐ運転手がなんだか気の毒になりました。この人はこの労働によって賃金を得ているのだ、と思っても、他者に肉体労働をさせていて、こちらは乗っているだけ、という状態が、あまり居心地よくないのです。ガソリン代分高くても、タクシーに乗るほうが気が楽。
カマユッ駅につき、窓口で切符を買う。
切符は200チャット(20円)。最初2000チャット(200円)かと思いました。よくわからないので5000チャット札を出したら、おつりが4800チャットきました。ぐるりと3時間乗っても、1駅だけでも20円らしい。料金体系とかよくわからないまま、せかされました。ヤンゴン中央駅に向かう電車が来るところだから、急いで、線路の向こう側へ行け、と係員がせかします。ホームから線路におり、反対側ホームに上がる。
駅舎やホームの写真を撮るまもなく、電車がやってきました。ヤンゴン鉄道乗り鉄出発です。
カマユッ駅から電車に乗ってきた尼僧さん。ミャンマー上座仏教では、女性は正式の僧侶にはなれないので、この尼僧さんも「女性の修行者」という扱いなのだそうです。

<つづく>
ミンガラ春庭ミャンマー便り>ヤンゴン出張(9)サイカーに乗ってカマユッ駅へ
3月27日金曜日、せっかくK先生が案内してくださったのに、くたびれきってしまった春庭。おなかの調子が悪く体調不良ということもありましたが、日頃の散歩やら建築探訪では、ひとりで勝手気ままに歩き回ることが多く、人様のあとをついて歩くということをしたことがないので、いっしょに歩く気疲れも体調不良を倍増している気がしました。
同じ建築趣味ということがわかっていて気心知れた友とならいっしょに歩いて疲れないけれど、出会って数日、何が好きかもわかっていない人に気を遣いながら歩いたので、人慣れしていない私は疲れ切ってしまったのでしょう。
3月28日は、朝電話をして「体調が戻らないので、午前中は寝ています。午後は近所をひとりで歩いて見ます」と、連絡し、ひとりですごすことにしました。
親切なK先生は、心配してお昼に貴重な梅干しや生姜糖を届けてくれました。ありがたいこと。K先生が体調を悪くしたときは、梅干しでのりきったとのこと。
お昼過ぎ、さっそく梅干しをいただき、パワーが出てきた気がしたので、ひとり町探索にでかけました。
ヤンゴンには、東京の山手線のような環状線が走っています。これに乗るのはどうかとK先生に打診したとき、「電車の椅子は堅くて座り心地悪いし、周囲の景色はよくないし、地元の人は乗っていなくて観光客ばかりだったし、おすすめできません」というお話でした。なるほど、日本で乗り鉄趣味でない人にとっては、ヤンゴンに来て電車に乗る気も起きなくて当然です。
でも、私は小学生のころからの乗り鉄。ただ電車に座って車窓を流れる景色を見ていれば一日かたい電車の座席に座っていても飽きない。ヤンゴン環状線は一周で3時間ほどだというので、午後半日あれば、ひとまわりできるはず。環状線なら必ず元の駅に戻ってくるし、一人で乗っていても迷子にはならない。
まずは、ホテルから一番近くの駅をめざしました。
ひとり歩きの気ままな点は、気に入ったものがあれば、ずっと眺めていられるところ。案内者のあとをついて歩くのでは、気ままにできませんから。
道ばたの露店も、タバコ売りも珍しい。シガレットは高いので、一本単位での売り買いです。よく売れるのは、さまざまな香辛料を生の葉っぱにくるんだクーンと呼ばれる噛み煙草です。
屋台タバコ売りのお姉さん。ささっと噛みタバコをつくりあげます。
ます、葉っぱを一枚手にとる。キンマ(コショウ科コショウ属の植物)の葉です。葉に白い液体を塗る。石灰の水溶液にヤシ科の植物であるビンロウ(檳榔)の果実の種子をカットして混ぜた液体。これに店により地域によって好みが分かれるさまざまな香辛料をかけて、葉を折りたたむ。1個~3個で200チャット(20円)ほど。この葉っぱを噛んで液を味わうと、興奮または刺激・酩酊作用があり、肉体労働者にはやめられない嗜好品になっているのだそうです。
噛み煙草調合中のおねえさん

ニコチン同様、依存性があり、ニコチンが肺がんを引き起こすのと同じように、発がん性もあるとのことで、若い人はしだいにクーンがよろこばれなくなっているそうですが、一度依存症になれば、なかなかやめられないので、東南アジアのこの噛み煙草、まだまだ売買が続くでしょう。
写真を撮りたかったので、屋台のお姉さんの店をながめて、チョコレートキャンディと思われる飴をふたつ買いました。値段はよくわからなかったけれど、キャンディ2個で100チャット(10円)払ったので、写真数枚撮影させてもらいました。
キンマの葉っぱと女の人がよく髪にさしている黄色い花

さらに、ぶらぶら歩いて行くとサイカー(自転車タクシー)のたまり場に行き当たりました。英語わかる人いないだろうなあと思いながら、カマユッ・ステーションと言って見る。インド系らしいおっちゃんが出てきて通訳を始める。う~ん、こういう人が出てくると値段交渉ややこしくなるんだよな、と思ったのだけれど、「駅」というミャンマー語すら出てこないので、しかたがない。向こうの言い値3000チャットを2000と言ってみたら、そこは遠いから、2500以下にはできない、という。歩いても行ける距離のはずだが、サイカーに乗ってみたかったので、2300チャットで手打ち。印度系のおっちゃんは、サイカーの運転手に「イングリッシュなんたら」と説明しているのがちょっと気になったけれど、まあ、なんとかなるだろうと、乗り込む。
サイカーたまり場

細い路地を通り抜けていくので、タクシーで大通りを行くよりずっと、裏町のようすが眺められて楽しかった。



しかし、鉄道の線路を通り過ぎてどんどん高級住宅街に入っていくので、サイカーの運転手に叫ぶ。「私は駅へ行きたいのに、どうして線路を通り過ぎちゃうんだ。駅は線路のそばにあるだろうに」
叫んでも理解はしてもらえません。
線路を横切ってどんどん進んでいく

運転手は通りの人に聞きながら、イングリッシュスクールの前で停車。やっぱりインドのおっちゃんは、「この外国人は、英語習いたいらしいから、英語学校へ連れて行け」と指示したらしい。まあ、私の下手な英語を聞いていたら「英語を習うべき人」と思われても当然だが。
英語学校の門の前で困り果てていると、車が近づいてきて、わあわあわめく私を見ている。
自家用車を運転している人なら英語わかるかと「駅に行きたいのに、このサイカーの運転手は駅を知らないようだから、道を教えて」と、頼みました。ところが、自家用車運転手のミャンマーなまり英語が私にわかりにくく、私のつたないジャパングリッシュが運転手に通じにくい。そのうち、自動車から坊ちゃまが降りてきました。小太りで上品そうな顔をした坊ちゃん、立派なクイーンズイングリッシュを話し、ようやく話が通じました。
thank you とお礼をいう私に、坊ちゃまは「You are welcome」と、鷹揚に返事し、運転手付き自家用車でおでかけしていきました。
サイカーの運転手にも、ようやく私が駅へ行きたいのだということがわかりました。やれやれ。
道案内をしようという自転車小僧がついてきました。大人の自転車を「三角乗り」しています。三丁目の夕日あたりに、この三角乗りの自転車小僧が出てきた気がする。
「こっちこっち」とサイカーおっちゃんに声を掛けています。駅についたので、さきほどのコーヒーキャンディをあげたのだけれど、まだ去らないので100チャットあげました。こういうのは子どもにとってよくないのではないかと思いましたけれど。
サイカーは、2300チャットの約束だけれど、道がわからなくて行きつ戻りつした漕ぎ賃と思って2500チャット渡しました。北京故同の観光用自転車タクシーのときは、値段も高かったし、かなりぼられているのがわかっていたので、漕ぎ手に悪いとは思わなかったのですが、今回は、ふうふうと自転車を漕ぐ運転手がなんだか気の毒になりました。この人はこの労働によって賃金を得ているのだ、と思っても、他者に肉体労働をさせていて、こちらは乗っているだけ、という状態が、あまり居心地よくないのです。ガソリン代分高くても、タクシーに乗るほうが気が楽。
カマユッ駅につき、窓口で切符を買う。
切符は200チャット(20円)。最初2000チャット(200円)かと思いました。よくわからないので5000チャット札を出したら、おつりが4800チャットきました。ぐるりと3時間乗っても、1駅だけでも20円らしい。料金体系とかよくわからないまま、せかされました。ヤンゴン中央駅に向かう電車が来るところだから、急いで、線路の向こう側へ行け、と係員がせかします。ホームから線路におり、反対側ホームに上がる。
駅舎やホームの写真を撮るまもなく、電車がやってきました。ヤンゴン鉄道乗り鉄出発です。
カマユッ駅から電車に乗ってきた尼僧さん。ミャンマー上座仏教では、女性は正式の僧侶にはなれないので、この尼僧さんも「女性の修行者」という扱いなのだそうです。

<つづく>