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ぽかぽか春庭「片岡球子展in東京近代美術館&ブリジストン美術館」

2015-05-13 00:00:01 | エッセイ、コラム


20150513
ぽかぽか春庭アート散歩>新緑アート(2)片岡球子展in東京近代美術館&ブリジストン美術館

 4月30日、片岡球子生誕110年記念の展覧会を見ました。
 1905年の生まれ。2008年に103歳で亡くなるまで、球子は日本画ひとすじに描き続けました。これまで、山種美術館の「富士と桜展」とか、あちこちで球子の作品を目にする機会があり、またリトグラフ作品の富士の絵などは、デパートの美術品売り場などで見る機会も多く、また、面構えシリーズも、神奈川近代美術館などで、数点は見ていたので、なじみの画家のような気もしていましたが、今回は個人蔵の作品など日頃はあまり見る機会が多くない作品も展示されていて、よい展覧会でした。

 たとえば、横浜市大岡小学校所蔵の「飼育」という作品。1954年の作品です。1926年に女子美日本画高等科を卒業した後、球子は出身地札幌で取得した小学校教師資格を生かし、横浜で小学校の先生になりました。以来、1955年に50歳で退職するまで、30年間、球子は小学校教諭として児童生徒の教育を実践しつつ絵を描き続けました。

 子ども達をモデルにした作品もたくさん描いたことでしょうが、横浜市立大岡小学校に「飼育」という作品が残されたことは、まったく知りませんでした。校長室に飾られていたのか、玄関に飾られていたのか知りませんが、今回見ることができてよかったです。



 若い頃は「ゲテモノ」と評されたという球子の絵ですが、晩年に至るまで、自分の個性をみじんもゆるがず押し通した色使いとフォルム。ほんとうにすごい。
 球子は、浅間山、妙義山など、火山が好きで富士はもちろん、全国の火山を描き続けました。球子自身が活火山のような魂を抱き続けたのだろうなあと感じました。

 球子が最初に院展に入選した「枇杷」という屏風。じっくり見ていて気づいたことがありました。絵のほぼ中央の枇杷の葉っぱは、虫食いの葉なのです。一般には、女流が描く日本画というと、なだらかな美しい画面が想像されます。院展初入選の「枇杷」も、中期後期の球子の色使いや奔放な形から見たら、日本画の技法の範囲に収まっているかのように見えるのです。しかし、中央の葉っぱの虫食いは、球子の挑戦のように思えました。院展審査員に堂々「絵はね、魂なのよ。ゲテモノと呼びたきゃ呼ぶがいい」と挑戦し、くすりと笑っているように感じました。


 
 はたして、枇杷の入選以後、長く球子の絵は中央画壇には認めてもらえず、自らを「落選の女王」と自嘲するほど長い年月、描いても描いても落選、という時代が続きました。

 展覧会の構成は、編年体。
第1章:個性との闘い-初期作品
第2章:対象の観察と個性の発露-身近な人物、風景
第3章:羽ばたく想像の翼-物語、歴史上の人物
第4章:絵画制作の根本への挑戦-裸婦
特集:スケッチブック 特集:渡欧関係資料

 1989年、84歳で文化勲章を受章後も、なお法隆寺金堂壁画模写、面構えシリーズ、ポーズシリーズ(裸婦像)などの制作を続けました。100歳過ぎに脳梗塞を患いましたが、不自由な身体になっても制作を続けたそうです。2008年103歳での大往生、見事な女性の一生でした。

 出身地札幌の、北海道近代美術館、教諭として勤務を続けた横浜の神奈川近代美術館などに作品が収集されていますが、今回、東京近代美術館の通常展のほうに、東京近代美術館所蔵のポーズシリーズが展示されていました。特別展のほうは撮影禁止ですが、こちらは写真OK。1985年、80歳のときに描かれた「ポーズ3」。画家からの遺贈作品です。



 東京近代美術館の好きなところ。4階の「ながめのいい部屋」。皇居東御苑を眺めて、のんびりできました。

 4月30日夕方、ブリジストン美術館へ。5月18日からビル新築工事のために数年間閉館となるので、代表的な収蔵作品の「見納め」展。1970年に東京に出てきて以来、西洋美術館と近代美術館、ブリジストン美術館の3館には、足繁く通ったので、代表的収蔵作品というのも全部見ているし、招待券も手に入らずチケット買わなくちゃならないので、わざわざ行かなくてもいいかなと思っていたのですが、やっぱりお名残に見ることにしました。

 青木繁の「海の幸」、マネ「自画像」、セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」「帽子をかぶった自画像」、ピカソの「サルタンバンク」「女の顔」など、ブリジストンの「ベストオブザベスト」が並んでいました。
 カイユボット「ピアノを弾く若い男」などをブリジストンで見てはじめて、今まで知らなかった印象派の画家に触れたのだし、「ぐるっとパス」で企画展も無料にしてくれる太っ腹なところが好きでした。

 新しいビルの展示室はどうなるのか、楽しみに再開を待っています。

<つづく>



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